米大統領選、最大のテーマはヘルスケア制度―主要候補の提案を検討する

2016-03-02-uselection

Hixme共同ファウンダー

子供が生まれることになり、私はこの数週間、病院で長い時間を過ごした。妻が重労働にあえぐ間、長時間待合室で座っている私は病院のスタッフを観察する時間があった。

そこで気づいたのはスタッフ駐車場にポルシェをはじめとするスマートなスポーツカーがいかに数多く駐められているかだった。この人々はおそらく6桁(10万ドル以上)のサラリーを受け取っているに違いない。専門家の調査によると、内科医の平均年収は30万ドルだという。

患者、来客の駐車場に目を移すと、ホンダ・シビックやら、フォード・フュージョンやら、その他ありとあらゆる安い車が目につき、医師を始めとするヘルスケア・スタッフと一般アメリカ人との間の所得ギャップがさらに拡大していることに気づかざるを得なかった。

オバマ大統領によりオバマケアと呼ばれる国民皆保険が導入された際に、民間保険会社はそろって「この世の終わりだ」と騒ぎたてたが、実際には保険会社の株価も売上も順調にアップを続けた。これがわが国の大手保険会社の収益増大の実態だ。

保険会社の好調を支える原資はいったいどこから来ているのか? 保険加入者の支払う保険料だ。それは最大25%もアップした。消費者の負担は急増している。有力HMO(病院と健康保険を総合的に提供する健康維持組織)の)カイザー・パーマネンテの調査部門によれば、 2010年以來、保険料の急増とペースを合わせて平均的労働者の控除可能医療費は約3倍になっている。これはインフレ率、給与所得のアップ率の7倍にもなる。

【中略】

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以下は現在大統領選予備選に参加している有力候補のヘルスケアに関する提案を私なりに要約、評価したものだ。

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  • ドナルド・トランプ:驚くべき事実かもしれないが、選挙戦を戦っている候補者の中で、民主党と共和党が妥協可能なもっとも現時的なヘルスケア・プランを提案しているのはトランプだ。トランプはACA〔オバマケア〕を廃止しようとはしておらず、不合理な罰則や税制を取り除こうとしている。トランプの主張は煎じ詰めれば、「誰もが費用を負担できるような万人向けのヘルスケアが必要だ」ということになる。ただしトランプのプランには「全員のためのメディケア」が含まれていない。

  • テッド・クルス:ヘルスケアの観点からするとクルスの主張は驚くべきものだ。クルスはオバマケアを廃止することは可能であり、そうしなければならないと信じている。しかしわれわれはその結果がアメリカの経済と市民生活に及ぼす影響を考えてみなければならない。何万という人々が突如ガンの治療に保険が適用されないと通告され、とても支払えないような巨額の医療費を請求されることになる。たとえ共和党が議会の多数派であってもこのような提案が実施される可能性はゼロに近いだろう。

  • マルコ・ルビオ:長年にわたってオバマケア反対の急先鋒だったことを考えればルビオがオバマケアの廃止を主張しているのは驚くにあたらないだろう。その立場は、ヘルスケアから一切の政府補助を取り除き、その代わりに所得税の還付金を交付すべきだというものだ。また現在連邦政府の権限が強いことを改め州の自主性を強化せよと主張している。保険加入者が現在の適用を維持しながら、オバマケアを廃止するという点で、これが共和党でもっとも抜本的な提案とみられる。

  • バーニー・サンダース:「話がうますぎる」と評される野心的な改革プランが提案されている。カイザーの調査によればオバマケアの国民の支持率は高い 。これに対してサンダースはACA(オバマケア)を政府が直営するメディケアで置き換えることを提案して集票を狙っている。この国民皆保険制度はサンダースの自他ともに認める民主社会主義者としての諸政策の一環だ。もしこの提案が実現すれば最大の被害者となる保険会社、製薬会社からの潤沢な資金提供を受ける反対派の絶好の攻撃目標となりそうだ。また政府が国民のヘルスケアに関与することを快く思わない共和党主流派やリバタリアンも反対するだろう。

  • ヒラリー・クリントン:一言でいえば「現状維持」に尽きる。一時はヘルスケア改革の旗手だったクリントンだが、ゼロからその再演をすることには興味を失っているようだ。ただしACA制定の原動力の一人だったクリントンがその廃止を主張する可能性はない。クリントンが当選した場合、ACAは現状のままと考えられる。

ヘルスケア改革の次世代はインフォームド・コンシューマーか?

Affordable Care Act〔オバマケア〕に対する個人的な感情がどうあれ、この制度がアメリカ史上で初めて医療を万人のものとしたことは認めざるを得ないだろう。出生前の状況や過去の雇用歴がどうあれ、誰もが自分と家族を健康保険に加入させることができるようになった。アメリカ人を全体として見た場合、この新しい医療へのアクエスを否定することはないだろう

【中略】

大統領選の結果がどうであっても、ヘルスケアはアメリカの最重要課題の一つだ。ここで重要なのは費用を負担する一般消費者が医療システムに関する正しい知識を持つこと、あるいは医療システムに関して賢い消費者となるよう正しい教育をすることが維持可能なヘルスケア制度を確立するうえで以前にも増して重要になっていると思われる。

画像: Nemanja Cosovic/Shutterstock (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Healthcare.gov:オープン前日には1100ユーザーしか扱えなかった

最近公表された文書によると、国の保険Eコマースサイトの失敗作、Healthcare.govは、公開前夜わずか1100ユーザーしか扱えなかった[PDF]。

「現在応答時間が長くなりすぎることなく扱えるユーザー数は1100人である」と、ウェブサイトチームの技術報告書は指摘している。最終的には1万人をサポートできるようにしたい、と同文書は記載している。

オープン初日、Healthcare.govには280万人が訪れた。USA Todayによると、管理者側の予想は同時ユーザー数5~6万人だったが、実際には25万人を受入れた。

改めて数字を見てみよう。

  • 収容能力:1100
  • 予想:5.5万
  • 実際:25万

この結果、開始当日に登録までこぎつけたのはわずか6名で、アメリカの消費者たちを高い保険料で脅かすことになった。管理チームは完全に準備不足だった。

「彼らは世界最大のスタートアップを経営していたが、誰ひとりとしてスタートアップはおろか企業を経営したこともなかった」とハーバード大学のDavid Cutler教授がWashington Postに語った。「法案を通すことに長けた人々が、この種の実装に長けているという状況は極めて考えにくい。両者は異なる種類のスキルだ」。

いったい、どうすすろ技術チームが需要の1/10も扱えないと考えている時にウェブサイトを公開できるのだろか? こうした無能さこそ、Eコマースサイトの構築はスタートアップに任せるべきだった理由だ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


Healthcare.gov、生年月日を聞き漏らして保険料を安く見積る

Healthcare.govの最新機能が、ひどく誤解を招く健康保険料金を消費者に提示している。CBSの報道によって、窮地にたたされている国営保険サイトが、保険料を実際より50%以上安く見積っていたことが暴露された。理由は ― 私の作り話ではない ― ユーザーの生年月日を聞き忘れたため。

CBSが発見(そしてTechCrunchが確認)したところによると、Healthcare.govは、48歳で政府補助対象外のノースカロライナ州在住者に、「シルバー」プラン料金を月額231ドルと見積った。しかし、実際の保険業者であるBlue Cross Blue Shieldのウェブサイトで見ると、料金は360ドルだった(下の画像で、最上段がhealthcare.govの最安値、最下段がBlue Crossの最安値)。

Healthcare.govの新しい “Shope and Browse” 機能を見ると、ユーザーは49歳未満かどうかを尋ねられるだけだ。問題は、高い割引率を受けられる人のいる20代消費者の料金が計算に組み入れられているらしいことだ。

このショッキングな見過ごしにはさらに続きがある。Healthcare.govは、料金が見積りにすぎないことを必要以上に注意深く警告しているが、そこには実際のプランはもっと安くなる可能性が高いとしか書かれていない。

Healthcare.govと国営ウェブサイトの数々は、今も続くクラッシュやログイン問題で連日見出しを飾っている。オバマ大統領はマスコミの性急さを指摘して、Appleでさえ初期不良はあると言った。確かに企業の立ち上げ時にトラブルは起きるが、Appleが実際には400ドルのiPhoneを、200ドルで買えるかのようにユーザーに思わせたことはないと私は断言できる。

以前本誌は、政府の計算システムには深刻な問題があり、個々のニーズを考慮した高度な計算機を提供するテク系スタートアップに任せた方がよかったと指摘した。しかし、医療保険改革制度は、各州がテク系スタートアップとの提携を選ぶことを認めている。カリフォルニア州とニューヨーク州は、2年近く提携を遅らせている。

毎日どこかで政府がやらかしている。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)