オンラインファクタリングのOLTAがあいおいニッセイ同和損保と業務提携、コロナ禍での企業の資金繰りを支援

オンライン完結型ファクタリングサービス「クラウドファクタリング」を提供するOLTAは9月15日、MS&ADインシュアランスグループのあいおいニッセイ同和損害保険との業務提携契約を締結したことを明らかにした。

今回の提携により、あいおいニッセイ同和損保の取引信用保険に加入している全国の中小事業者が、クラウドファクタリングを利用することでより手軽に素早く運転資金を調達できるようになる。

OLTAでは、約20万社の法人データに基づくAIスコアリングモデルを開発。このモデルを基にオンライン完結型のファクタリングサービス提供しており、最短24時間での現金化を実現している。提供開始から約2年で申込総額は200億円を突破しているとのこと。今後は、全国の金融機関やSaaS企業などと幅広く連携していく予定だ。

ファクタリングとは、売掛債権を買い取ってその債権の回収を行う金融サービスのこと。OLTAでは利用者・利用企業から請求書を買い取って、まずは請求金額を利用者・利用企業に全額振り込む。その後、利用者・利用企業は取引先から支払われた実際の売掛金の全額と2〜9%の手数料をOLTAに支払う(弁済)するという流れだ。なお、ノンリコース(償還請求権なし)のため、売掛先が万が一倒産した場合は自社の負債にはならない。

利用者・利用企業は通常は2カ月以上かかる売掛金の入金を待たずに手元に現金を確保できるほか、取引先にファクタリングを利用していることを知られることはない。なお手数料の利率については、請求先の信用情報に加え、利用者の利用実績やOLTAに提出した財務情報などに基づき都度判定しているとのこと。同社では長期利用者に向けた優遇コースを準備中で、詳細は不明だがクラスが上がることで手数料などが優遇されるようだ。

あいおいニッセイ同和損害保険としては、新型コロナウイルスの流行により、売掛債権の回収不能を補償する取引信用保険のニーズが高まっていることが背景にある。また流行の長期化によって事業活動の資金繰りが厳しくなってきているという中小企業を支援する目的で、クラウドファクタリングを取引信用保険契約者向け付帯サービスとして利用することなった。取引信用保険とは、商品の買主が売主(保険契約者)に対して支払うべき代金(売掛債権)が、買主の倒産などによって支払われない場合に、保険契約者が被る損害を補償する保険のことだ。

OLTAが地銀とタッグで「クラウドファクタリング」拡大へ、山陰合同銀行と実証実験

オンライン完結のクラウドファクタリングサービスを展開するOLTAは3月25日、山陰合同銀行と共同事業に向けた実証実験を実施することに合意したと明らかにした。

山陰合同銀行は島根県松江市に本店を構える地方銀行で、今回の実証実験では山陰両県(島根県、鳥取県)に所在する同行の顧客に向けてOLTAのサービスを紹介し、顧客ニーズの調査・検証を行うことから始める。

まずはOLTAが西武信用金庫やりそな銀行と結んできたビジネスマッチング契約に近しい取り組みからのスタートとなるが、その先の展開も視野には入っているようだ。今後OLTAと山陰合同銀行は「中小企業や個人事業主の方々が、手軽に素早く運転資金を調達できるよう共同で事業化の検討を進め、より多くの中小事業者の資金繰り改善・経営サポートに注力してまいります」としている。

これまでOLTAではクラウドファクタリングの仕組みを浸透させるべく、2月に紹介した新生銀行との事例をはじめ、さまざまな金融機関や事業会社と積極的にタッグを組んできた。ただ地銀との取り組みについて公になったのは今回が初めてだ。

2019年6月の資金調達時にOLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏や同取締役CSOの武田修一氏に話を聞いた際、印象的だったのが「クラウドファクタリングは既存の金融機関をディスラプトするものではなく、補完する存在だ」と2人が語っていたこと。

その上で地銀を含めた金融機関との協業を今後のポイントの1つにあげ、地銀とタッグを組むことで「既存の融資の対象にはならなかった地方の事業者に新たな資金調達手段を提供でき、地銀にとっては新しい顧客との接点を作ることができる」という話もしていた。

そういった意味でも今回の山陰合同銀行との実証実験は同社にとって大きな一歩と言えるだろうし、地銀が地元企業の資金繰りをサポートする手段としてクラウドファクタリングに興味を示していることも興味深い。

武田氏によると1月時点でOLTAの申込総額は200億円を突破したそうで、世の中にもクラウドファクタリングがじわじわと浸透し始めている。OLTAの強みはオンライン、非対面、最短24時間以内で請求書を現金化できることだが、一方で「影響力という点ではまだまだこれから。特に地方の人たちに東京のOLTAというフィンテックベンチャーを広く知ってもらうには相応の時間やコストもかかる」(武田氏)という。

今回は山陰地域の事業者とネットワークのある山陰合同銀行の力を借りながら、同地域でクラウドファクタリングの認知度を広げていくことも狙いの1つ。本件に限らず、今年はOLTAと地銀のコラボレーション事例が増えていくかもしれない。

無料で使える請求管理サービス「INVOY」が正式公開、運営はクラウドファクタリングのOLTA

つい先日、新生銀行と10億円規模の出資会社を共同で設立して新たな座組みでクラウドファクタリングサービスの提供を始めたOLTA。昨年以降25億円の調達や金融機関・スタートアップ企業との連携などを次々と発表し、急ピッチで事業を拡大してきた同社から今度は別の切り口のニュースだ。

OLTAは2月18日、これまで2年間に渡ってベータ版として提供してきたクラウド請求管理サービス「INVOY(インボイ)」を正式ローンチした。

INVOYはOLTAの子会社であるFINUXが2018年2月にスタートしたプロダクトだ。もともとOLTAでは中小事業者の資金繰りの課題を改善するべく、2017年10月にクラウドファクタリングサービスを開始。その中で多くのユーザーが請求書作業に対して「非効率」「分かりにくい」「有料」などの課題感を抱えていることを知り、解決策として子会社を立ち上げINVOYの提供を始めた。

同サービスは2年間で約4万ユーザーを獲得し、請求書の累計発行枚数は約16.2万枚、累計発行金額は約480億円に及ぶ。

請求書に加えて見積書/納品書/領収書を作成する機能のほか、INVOY上から取引先にメールで請求書を送信する機能やワンクリック郵送機能、取引先管理機能などを搭載。特に請求書の作成に関しては、画面に沿って上から順に項目を埋めていくだけで簡単に請求書が完成する仕組みなど、慣れていないユーザーでも使いやすい設計になっている。

とはいえ、機能面自体はかなりシンプルなものだ。この領域では「Misoca」や「board」、「MakeLeaps」を始めすでに複数のプロダクトが存在するほか、マネーフォワードやfreeeが展開するクラウド会計ソフトにも請求書の発行・管理サービスが備わっている。

細かい違いはあれど、少し触ってみた限りでは他のプロダクトにはないクリティカルな機能がINVOYに搭載されているわけではないように思えた。

むしろユーザーにとっては価格面の違いが大きい。クラウド請求管理サービスの多くはそもそも有料でないと使えないか、無料だと機能や作成できる請求書の数が限定される。たとえば僕は数年前からMisocaユーザーだけれど、無料プランだと1ヶ月間に作成できる請求書は5通まで。6通以上作成したい場合やチームで使いたい場合は月額数百円からの有料プラン(15通作成できるプランが月契約で800円 / 年契約で8000円)に加入する必要がある。

一方でINVOYの場合はほとんどのユーザーが基本機能を全て無料で使える。厳密には1ヶ月間の発行額が10億円を超えたり、発行枚数が5000枚を超える場合はエンタープライズプランとなるので例外だが、フリーランスや少人数のチームでこれに該当するケースは稀だろう。

実際のところ無料で利用できる点に魅力を感じてINVOYを使い始めたユーザーも多いそう。これが実現できるのはOLTAがクラウドファクタリングという別のマネタイズポイントを持っているからだ。

「請求管理サービスにおいての1番の対抗馬はExcelだ。特に日本の場合、ExcelがプリインストールされているPCも多いため(Excelを)お金を払って使っているという感覚が少ない。だからこそExcelで請求書を作るのも無料であり、請求管理サービスに対してお金を払うことに抵抗がある人もいる」

「INVOYはOLTAにおいて“入り口”のような位置付けでもあり、GoogleにおけるGmailなどにも近いかもしれない。(請求書の管理を通じて)経営の実態を把握できるツールとして使ってもらう中で、運転資金を調達するニーズが出てくればファクタリングの仕組みを提供することもできる。INVOYの基本的な機能単体でマネタイズすることは考えていない」(OLTA取締役CSOの武田修一氏)

これまでOLTAでは事業の軸となる「クラウドファクタリングの社会実装」を重要テーマに掲げてきた。そのために積極的に他社と連携してきたわけだけれど、他社に依存しすぎるのではなく自分たちでも関連するプロダクト群を作りたいという考えは当初からあったという。

INVOYはその第一弾と捉えることもできるだろう。当面は「請求書発行ツールとしていかに便利に使ってもらうか」を重視し、収支管理ダッシュボードや品質管理マスタ、口座連携などの仕組みを取り入れていく計画。ゆくゆくはOLTAのクラウドファクタリングとの連携も視野に入っている。

OLTAとしてはINVOYに続くようなプロダクトを今後自社で開発していく可能性もありえるとしつつ、引き続き他社サービスとの連携も積極的に実施していくとのこと。それはINVOY以外の請求書管理ツールとの連携においても同様のスタンスだ。

ちなみにあえて子会社経由で運営している理由については、INVOYの立ち上げ時はOLTA自体もまだステルスでひっそりとサービス提供していたため、“得体の知れない金融事業者”と見られる可能性があったことが大きく影響しているそう。当初から子会社として切り分け、着々とプロダクトを磨いてきた。

なお同サービスはフリーランスユーザーの利用も見込んでいたこともあり、業務委託のフリーランスメンバーが中心となって開発。「フリーランスがフリーランスのために作ってきた」側面もあるとのことだった。

OLTAが新生銀行と共同でクラウドファクタリングの新会社設立、金融機関との連携加速へ

オンライン完結型のクラウドファクタリング事業を展開するOLTAは2月14日、新生銀行と共同で合同会社を立ち上げ、双方の強みを活かしたクラウドファクタリングサービスの提供を始めたことを明らかにした。

両社では1月に10億円規模の出資会社「anew」を設立していて、今月10日よりサービスを開始済みだという。

OLTAは入金待ちの請求書(売掛債権)を売却することで資金調達ができるファクタリングの仕組みを、テクノロジーの活用でアップデートするスタートアップだ。独自のAIスコアリングモデルを用いて一連の手続きを全てオンライン上で実施。従来のファクタリングと比べてスピーディーかつリーズナブルな点が特徴で(手数料2〜9%、申し込みから最短24時間以内で現金化)、昨年12月の時点で申し込み総額は150億円を超えている。

同社ではこれまで自社単体で事業を展開するのみならず、他社にスコアリングモデルを軸とした仕組みをOEM提供することで、より多くの顧客との接点を作ろうとしてきた。今回の取り組みは以前より協議を進めてきた金融機関OEMに近しいが、座組みとしてはanewに対してOLTAが審査などのオペレーションを業務受託する形で運営するという。

OLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏によると、anewでは数百万~1千万円程度と「OLTAよりも少し大きめの売掛金を積極的に買い取っていきたい」とのこと。資金力のある既存の金融機関と組むことで、OLTA単独でやるよりも多くの資金を提供できるチャンスがあるのは1つのポイントだ。金融機関側としても、従来の融資などでは対応できていなかった資金調達ニーズに応えられる。

今後は顧客基盤やデータを有する外部のプラットフォーマーとの提携を通じて、審査モデルの強化や事業基盤の拡大を進めていく計画。第一弾としてオービックビジネスコンサルタントが提供する「奉行クラウド」との連携が決まっているという。

昨年6月に25億円の資金調達を発表して以降、他社との連携を急速に進めてきたOLTA。これまで明らかになっていたものはfreeeやチャットワークなどIT企業が多かったが、遂に大手金融機関との本格的な連携がスタートした。

「今回の取り組みはOLTAとして金融機関様との初の取り組みというだけでなく、国内金融機関がSMB向けにクラウドファクタリングを提供するという点でも歴史的な取り組みだと考えています」(OLTA取締役CSOの武田修一氏)

最初の事例は株主でもある新生銀行との合弁会社になったが、OLTAとしては今回の取り組みを金融機関向けOEMを加速させる大きな布石としたい考え。他の金融機関とも引き続き協議を進めながらネットワークを広げていく計画だ。

クラウドファクタリングのOLTAがChatworkと共同で中小企業の資金繰り支援へ、2億円の調達も実施

オンライン完結型のクラウドファクタリング事業を展開するOLTAは12月5日、ビジネスチャットツールを手がけるChatworkと共同で中小企業の資金繰りをサポートするサービスを開始した。

今回リリースされた「Chatwork 早期入金 powered by OLTA」は「Chatwork」上にて展開されるサービスだ。請求書の入金待ちによって足元の資金繰りに苦しむ中小企業がChatwork上で早期入金の相談をすれば、その後OLTAのクラウドファクタリングと接続。OLTAを通じて入金待ちの請求書(売掛金)を売却することで、運転資金を調達できる。

前回も紹介した通りOLTAの特徴は請求書を売却するまでのフローが簡単かつスピーディーで、手数料もリーズナブルな点だ。本人確認書類や売却する請求書などの必要書類をオンライン上で提出すると、24時間以内に審査を実施。条件に同意して契約すれば即日ないし翌営業日には買取金額を受け取れる。

契約に至るまでの一連の手続きがすべてオンライン上で完結するため、対面での面談や紙の書類の記入なども不要。約20万社のデータに基づくAIスコアリングモデルを軸にした審査などによって従来よりも人的コストを削減することで、手数料も業界最安水準の2〜9%に抑えた。

国内では現在も商取引において掛売の形態を取られていることが多く、その商慣習が中小企業の経営者が資金繰りに頭を悩ませる原因の1つにもなっている。短期・少額の運転資金を調達したいというニーズはあるものの、それを満たせる選択肢が少ないのが現状だ。

ファクタリングサービス自体は以前からあるものの、そこにテクノロジーを絡めることでユーザーにとってさらに便利で使いやすい資金調達手段を確立していこうというのがOLTAの取り組み。同社としては中小企業の利用も活発なChatworkと連携することで、より多くの企業にクラウドファクタリングを広めていくことを目指す。

一方のChatworkとしてもOLTAと組むことでユーザーの経営課題を解決する仕組みを取り入れ、自社サービスの付加価値を高められる可能性があるだろう。

約2年で申し込み総額は150億円を突破、今後は他社との連携強化へ

OLTAではChatworkとの事業連携の発表に先駆け、11月27日に日本郵政キャピタルから2億円の資金調達を実施したことを公表している。この調達は5月に実施したシリーズAラウンドの追加調達という位置付けで、同ラウンドの調達額は約27億円(第三者割当増資が約20億円)、2017年4月の創業以降の累計調達額は約32億円となった。

5月には第三者割当増資と融資を合わせて25億円の資金調達を発表。今回新たに投資家として日本郵政キャピタルが加わり、シリーズA全体では27億円の調達となった。

2017年末からクローズドβ版の運用を始め約2年で申し込み総額は150億円を突破。5月の時点では100億円を突破したということだったから、だいたい半年で新たに50億円ほどの申し込みがあった計算になる。

取締役CSOの武田修一氏によると「マーケットのポテンシャル自体が膨大なので、何千億、何兆円という規模まで拡大していきたい」という思いが強いそう。山を登るスピードをさらに上げていくべく、5月の調達以降は人材採用の強化とともにマーケット拡大に向けて他社との連携を強化してきた。

特に現在進めているのが地銀を始めとした既存金融機関との連携と、SaaSを展開するスタートアップとのサービス連携だ。

今回のChatworkとの連携はまさに後者の取り組みの1つ。OLTAでは6月にもクラウド会計ソフトのfreeeと「freee」上で請求書を早期に資金化するプロダクトをローンチしているが、同社がメインターゲットとする中小企業のユーザーが多いSaaSと組んで事業の拡大を目指す動きは今後も続けていく方針だ。

一方でSaaSが徐々にさまざまな企業に導入され始めているとはいえ、日本全体で見るとまだまだ広く浸透しているとは言えないだろう。クラウドファクタリングの認知度を上げていくためには、オフライン・オンライン双方で既存金融機関と密に連携を取っていくことも重要になる。

この座組みについてはケースバイケースで企業ごとに柔軟に決めていくとのこと。たとえば西武信用金庫とはビジネスマッチング契約(西武信用金庫の顧客にOLTAを紹介してもらう形式)という形で協業を発表した。OLTAとしてはスコアリングモデルやプロダクト開発の仕組みなどをまるっとOEMとして提供し、金融機関のブランド・資金でファクタリングを普及させていきたいという構想もある。

OEM提供先の拡大はクラウドファクタリングのマーケットを拡大していく上ではもちろん、データを通じてスコアリングモデルの精度を高めていく上でも重要だ

以前取材した際も武田氏や代表取締役CEOの澤岻優紀氏は銀行の融資とクラウドファクタリングは用途が異なるため、競合するのではなく上手く棲み分けられるのではないかと話していた。前回はまだ仮説ベースだったというが、実際に金融機関と話を進める中で今はその手応えがつかめているそう。来年にはいくつかのタイアップ事例を発表できる予定だという。

「各金融機関の店舗で融資を受け付ける場合、1件あたりの金額があまりに少額だと採算が合わずに難しいことも多い。そういった際に小口であればクラウドファクタリングを1つの選択肢として紹介してもらい、まとまった金額が必要になったら融資で対応という形で上手く連携・棲み分けができる。既存の金融企業が応援してくれることは事業を広げていく上でも大きい」(武田氏)

まずは上述した他社との連携も進めながら、引き続き中小企業を中心にクラウドファクタリングの仕組みを展開していく計画。ゆくゆくは以前もちらっと触れたようにデータやスコアリングモデルを活用して、ファクタリング以外のプロダクトも手がけていく方針だ。

「戦い方としては一般的なSaaSビジネスとは逆になるかもしれない。スタートはSMB向けでも徐々にエンタープライズにシフトしていくSaaSも多いが、自分たちの領域の場合エンタープライズ向けには洗練された金融ソリューションがいくつもあって、そこにはあまりペインがないと考えている。中小規模の企業にこそ大きなペインやニーズがあって、マーケットも大きい。(ファクタリングに限らず)ロングテールのSMBのペインをいかに解決し、ビジネスとしても確立していくかが今後のチャレンジだ」(澤岻氏)

最短24時間で請求書を現金化、クラウドファクタリングのOLTAが25億円調達

右からOLTA取締役CFO 浅野雄太氏、取締役CSO 武田修一氏、代表取締役CEO 澤岻優紀氏、個人投資家として同社を支援する有安伸宏氏

既存の金融を“拡張”し、個人や企業に新たな資金調達の選択肢を提供する「オルタナティブファイナンス」は、近年FinTech界隈で注目を集めている領域の1つだ。

クラウドファンディングやP2Pのオンラインレンディングなどがその代表格だが、ABL(動産担保融資)やファクタリングを始め、テクノロジーの活用でこれまでにない資金調達手段を開発する、もしくは従来の仕組みを進化させようとするスタートアップが国内外で登場している。

今回取り上げるOLTA(オルタ)もまさにそうだ。同社が取り組むのは入金待ちの売掛債権(請求書)を売却することで資金調達ができる「ファクタリング」のアップデート。オンライン完結型のクラウドファクタリングサービス「OLTA」を開発する。

そのOLTAは6月24日、さらなる事業拡大に向けて総額で約25億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

内訳はSBIインベストメント、ジャフコ、BEENEXT、新生銀行を引受先とした第三者割当増資が約18億円。そこに三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など複数の金融機関からの融資が加わる。

OLTAではこれまで個人投資家の有安伸宏氏、ジャフコ、BEENEXTから5億円を調達済み。2017年4月の創業以来、累計で30億円を調達したことになる。

オンライン完結、特徴は「はやい・かんたん・リーズナブル」

最初にファクタリングとはどのようなシーンで使われる仕組みなのかを簡単にだけ紹介しておこう。

例えば中小の部品工場が取引先に製品を納品した場合、その瞬間すぐに現金で代金が支払われるわけではなく、請求書を発行して1〜2ヶ月後に入金されるのが法人間の一般的な契約パターンだ。

特に相手が大手企業だとある程度の取引金額になる一方で「早く支払って」と言える関係性にないため、「売上はあるけど手元に現金がない状態」が発生し、経営者が短期的な資金繰りに頭を悩ませるケースが多いという。

そんな時、いずれ入金される予定の請求書を売却することで運転資金を調達できるのがファクタリングだ。

この仕組み自体は決して新しいものではなく、以前から日本国内でも複数の事業者がサービスを展開していた。ただこれまではアナログの側面が多かったため、郵送または面談で申込書類を提出し、審査も対面で実施。請求書を買ってもらえるかわかるまでに数日かかっていた。

運営会社としても1件ごとにある程度の手間や人件費がかかるので、その分だけユーザーが支払うサービス手数料も増える。未回収リスクも含めると、結果的に手数料が20〜30%になるのが一般的なファクタリングだった。

この一連のフローをオンライン完結型にして、さらにテクノロジーを活用した審査モデルを組み込むことで圧倒的に使いやすくしようというのがOLTAのチャレンジだ。

OLTAのクラウドファクタリングではオンライン上で必要書類(代表者の本人確認書類、売却する請求書、直近7カ月の入出金明細、昨年度の決算書)を提出すると、独自システムによる審査が実施。通過した場合には指定の口座に買取金額が入金される。

ユーザーは売掛先から支払い期日に代金を受け取った後、買取金額と手数料をOLTAに返還する仕組みだ。

OLTAの特徴はスピード感と手続きの簡単さ、そして手数料の安さにある。会社にいながらファクタリングの申し込みができ、審査も最短で24時間以内。契約完了後は即日で買取金額が振り込まれる(時間によっては翌営業日になる場合もある)。

手数料も業界最安水準の2〜9%。100万円の請求書を売却する場合、90万円以上をスピーディーに調達できる計算だ。OLTAで取締役CSOを務める武田修一氏によると、もちろん手数料の安さはOLTAを選んでもらえる1つのフックになるものの「24時間以内に請求書を買ってくれるかわかるのが画期的で好評」だという。

「銀行に融資の相談をする場合、借りられるかどうかの結論が出るまでに数週間〜1ヶ月かかることがある。既存のファクタリングもオフラインの手続きと審査が必要なので、どうしてもある程度の時間が必要だ」

「ユーザーが困っているのは、入金日までの運転資金をどう集めるか。巨額の金額を調達したいというよりは困った時に困った分だけ資金提供してもらえる方法を探しているため、圧倒的に早いスピードで、なおかつ借金ではない形で資金を調達できる仕組みにはニーズがある」(武田氏)

申込総額は100億円を突破、独自のスコアリングモデルがカギ

2017年末からクローズドβ版の運用を始め、すでに申込総額は100億円を突破。OLTA代表取締役CEOの澤岻優紀氏の話では、主な利用者は社員数が10〜20人ほどで年商規模が1億円以下の中小企業とのこと。買取金額も数十万円〜数百万円がボリュームゾーンだ。

「そこまで大きな額ではないので、銀行から融資を受けたいと思っても審査の対象にならないことすらある。仕方がないので代表者が個人のカードで借金をしたり、親族借り入れで済ませたり。中小企業が短期で少額の資金を調達したいと思った際の選択肢が非常に限られていて、ペインが大きい」(澤岻氏)

アパレルのデザインに特化したある企業では、事業は好調だがキャッシュフローが回らず、大きな仕事の話が来た時に「入金待ちの状態で手元に現金がないこと」が原因で受けれないような状況に陥っていたそう。

特に中小企業ではそのような“機会損失”が生まれていることも多く、そんな場面で「あの入金待ちの請求書を売って次のチャレンジをしよう」とOLTAが活用されるわけだ。

また上述した特徴に加えて、OLTAの場合は「二者間ファクタリング」であることもポイントだという。

ファクタリングには売却対象となる請求書の取引先(売掛先)を当事者として巻き込む三者間ファクタリングと、巻き込まない二者間ファクタリングがある。長く運営されているタイプのサービスは、売掛先から資金を回収する三者間ファクタリングが多いが、そこに抵抗感のあるユーザーも一定数いるようだ。

「三者間でファクタリングを使いたいとなった場合、当然売掛先にも知られるので『あれ、この会社資金繰りが危ないのかな』と思われ、それ以降の取引に影響しかねない。だからこそ二者間ファクタリングには隠れた需要がある」(武田氏)

もちろん、サービス運営会社にとっては三者間タイプの方が売掛先から回収できるので未回収リスクを減らせるメリットがある。二者間の場合はいかに未回収リスクを減らせるか、「審査」の工程が重要。ここに手間をかけ過ぎたり、審査精度が低かったりすると結果的にユーザーの手数料に反映され使いづらいサービスになってしまう。

OLTAの場合はこの工程でテクノロジーを活用している。具体的には約20万社のデータに基づくAI(スコアリングモデル)を開発し、現在の手数料でも事業を拡大できる仕組みを整えた。

「中長期の融資のように3年後、5年後に貸したお金が返ってくるかを予測するのは簡単ではない。ただ自分たちの場合は、1〜2ヶ月後にちゃんと入金されるかどうかを見抜きたい。つまり非常に短期間の予測である点がポイントで、ここはAIでもかなり高精度で予測できると考えている」(武田氏)

これまでにデフォルトは一定程度発生しているそうだが、サービスを継続する上で大きな影響を与えるレベルではなく、ごく一部とのこと。「デフォルトじゃないデータだけでなく、デフォルトした場合のデータもしっかりと学習データとして活かすことで、より審査精度を高めていける」(澤岻氏)という。

中小企業に融資以外の資金調達手段を

海外では「BlueVine」や「Fundbox」など、数年前からオンラインファクタリングサービスに取り組むプレイヤーがいくつか存在している。

澤岻氏によると自社の事業ドメインをこの領域に決めたのは「海外ではすでに明確なニーズとマーケットがあることが証明されていて、スタートアップとしての戦い方で挑める領域だった」ことも1つの理由だ。

もともと澤岻氏は前職の野村證券で投資銀行部門に在籍し、大企業向けに資金調達のサポートを行ってきた。その仕事を通じて自身でも起業したいと奮い立ち、事業の方向性などを明確に決める前に独立したそうだ。

「大企業はビジネスアクションに合わせて融資や社債、株式など色々な資金調達手段を選ぶことができる。一方で中小企業の場合、ほとんどは融資だけ。自社の状態に応じて複数の選択肢の中から選べる状況を作ることは、単に融資をアップデートをするよりも価値があるのではないかと思った」(澤岻氏)

退職後、現在のクラウドファクタリングの事業モデルを立案。三菱UFJフィナンシャル・グループが主催するMUFGデジタルアクセラレータに選ばれたことをきっかけに、2017年4月にOLTAを創業した。

個人投資家として同社に出資する有安氏もマーケットのポテンシャルやファウンダーとの相性の良さを感じ、TwitterのDM経由で出会った後「プロダクトなし、会社も設立前」の状態から支援している。

「海外ではすでに急成長するスタートアップが出てきていて、社会的にもファクタリングという機能が必要とされているものの日本ではあまり浸透していない。伸びしろがある領域であり、なおかつファウンダーとマーケットのフィット感もすごく良かった」(有安氏)

澤岻氏だけでなく元ソニーの武田氏や、三菱商事・楽天を経てジョインした取締役CFOの浅野雄太氏をはじめ、金融業界を筆頭に大手企業出身のメンバーが多いことも特徴。スコアリングモデルを開発したメンバーも、過去に銀行の格付けモデルを開発していたデータサイエンティストだ。

国内でもマネーフォワードグループのMF KESSAIなどオンラインファクタリングサービスを手がける企業も徐々に登場し始めているが、まだまだ認知度も低く整備も進んでいない領域。ファクタリングと言いつつ貸付業務を行う悪質な事業者も一部では存在し、ファクタリングに対してマイナスのイメージを持っている企業もいるという。

そんな未成熟のマーケットだからこそまずは正しい認知を獲得していくのが重要だ。OLTAでもこれまではステルスでプロダクトを磨きつつ、弁護士同席の元で複数回金融庁に確認を取りながら事業を進めてきた。

他社との連携強化でゆくゆくは法人版クレジットスコアの開発も

そんな中で申込総額も100億円を超え、ある程度の手応えを掴みつつある段階で実施した今回の資金調達。集めた資金は組織体制の拡充に向けた人材採用と、ファクタリング事業のさらなる拡大に用いるという。

澤岻氏や武田氏がこれからの注力ポイントにあげるのが「金融機関や事業会社とのパートナーシップ」。すでにクラウド会計ソフトを展開するfreeeとは連携をしていて、今後はこのネットワークを広げていく計画だ。

クラウド会計ソフトや受発注管理システムなどと繋げることで「会計ソフト上で債権を売るといったように、よりシームレスで使いやすい体験を設計していく」(澤岻氏)のはもちろん、地銀など金融機関とも協業を図りユーザー体験の向上とデータの蓄積を進める。

「地域経済を支えているのは各地の金融機関。ただ彼らが抱えている法人の顧客は多いものの、実際の融資先となるのはその一部に限られる。(地銀とタッグを組むことで)これまで融資の対象にならなかった層にクラウドファクタリングを普及させていきたい。地方の事業者にとっては資金調達の選択肢が増えることになり、銀行にとっても新しい層と接点を作れることに繋がる」(武田氏)

その意味で、武田氏はクラウドファクタリングを既存の金融機関を“代替”するものではなく“補完”する存在だと捉えているそう。以前からゆくゆくはスコアリングモデルを地銀などに提供することも見据えて、自社で請求書の買取をしながら開発を進めてきた。

今後は様々なプレイヤーを「競合ではなく協業相手として巻き込んでいく」ことで、ファクタリングに限らず中小企業の資金調達環境を変えていくのが目標だ。

「『あらゆる情報を信用に変えあたらしい価値を創出する』ことをミッションとしているように、ファクタリングでナンバーワンになることだけを目指している訳ではない。方向性として考えているのは、アリババが手がけるクレジットスコアの法人版のような仕組みが作れるのではないかということ」

「中小企業の本当の状況をリアルタイムにきちんと評価できるようになれば、必ずしも請求書を買い取るだけでなく(他社と連携して)別のソリューションを紹介したり、自分たちで新たな仕組みを作って提供することもできる。スコアリングモデルを核に、中小企業や個人事業主が抱える課題の解決を目指したい」(澤岻氏)