ワンモアとCCCグループが資本業務提携、映画制作やマーケティングでクラウドファンディングを活用

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

左からT-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏、ワンモア代表取締役の沼田健彦氏

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループのインターネット事業を統括するT-MEDIAホールディングス。同社が2015年1月に開催したスタートアップ向けの協業・支援プログラム「T-VENTURE PROGRAM(TVP)」。その成果が着々と出ているようだ。T-MEDIAホールディングスは7月21日、TVPで優秀賞を受賞したワンモアとの資本業務提携を実施したことを明らかにした。

ワンモアはクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」を手がけるほか、クラウドファンディングのシステムをASP形式で提供するスタートアップ。2011年の創業。IMJインベストメントパートナーズ(当時はIMJ FENOX)などが出資する。

当初は企業と共同でクラウドファンディングサイトを立ち上げてきたが、2013年4月以降は企業と展開してきたクラウドファンディングサイトをモール化している。これまで約230のプロジェクトを達成。これまでの流通金額は2億5000万円程度だという。

ワンモアはT-MEDIA ホールディングスの持分法適用会社に

資本提携の内容は非公開だが、ワンモアは今回の提携で合計1億5000万円程度の資金を調達したと見られる。T-MEDIAホールディングスがワンモア株式の約3割を取得。持分法適用会社とする。ワンモア代表取締役の沼田健彦氏以外の株主はこのタイミングで株式を売却している。

業務提携についてはまず、GREEN FUNDINGのサービス名称を「GREEN FUNDING by T-SITE」にリニューアル。T-MEDIAホールディングスが運営するポータルサイトの「T-SITE」をはじめとした各種サービスとの連携のほか、代官山T-SITE、湘南T-SITEやTSUTAYA直営店舗での商品販売イベントの実施など、「リアル店舗を活用することなど、付加価値的なところを含めたマーケソリューションを提供する」(沼田氏)としている。またCCCグループおよび取引先の出版社やレコード会社などに対してクラウドファンディングの提案を進める。

また、最大5000万円の制作費を支援するするクリエイター支援プログラム「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM」においても、クラウドファンディングを実施することが決まっている。11月12日に開催する最終審査で選出される優秀3作品について、T会員をはじめとした映画ファンから制作資金支援を募るという。

今回の資本業務提携にあわせて、T-MEDIAホールディングス取締役COOの根本浩史氏がワンモアの社外取締役に就任する。「デジタルによってコンテンツは作り方、内容ともにどんどん変わっていると実感している。YouTuberが500万PVを集め、一方でプロのコンテンツは米国を中心に『ネット配信ファースト』になってきた。インフラとテクノロジーによってコンテンツの内容も作り方も変化しているならば、 資金調達のやり方も改めて考えてもいい。 そういう仕組みを一緒に作っていきたい」(根本氏)

今後はTポイント連携も視野に

また今後はシステム面での連携を強化。Tポイントを使ったクラウドファンディングの仕組みを導入することも視野に入れる。また今回の発表では「マーケティングツールとしてのクラウドファンディングの利用」に関する話が中心ではあったが、将来的にはCCCグループとして、例えばプライベートブランドだったり、オリジナルの商品を小ロットで生産するためのプラットフォームとして活用する…なんてこともあるかも知れない。

なお今回の資本業務提携のきっかけになったTVPは今後も年1回ペースで開催の予定。直近にも第2回のプログラムについて発表するとしている。

出版特化型クラウドファンディング「ミライブックスファンド」がローンチ

ワンモアと大日本印刷(DNP)が5日、出版に特化したクラウドファンディングサイト「ミライブックスファンド」を公開した。クラウドファンディングサービスを手がけるワンモアと、出版物を制作するDNP、出版取次会社が協力し、出版に必要な企画立案から資金調達、流通、制作までに至るプロセスをワンストップで提供する。

出版者(出版社ではなく個人やチーム)は、出版物のテーマやストーリー、必要な資金と募集期間、支援者へのリターンの内容などプロジェクトの詳細をサイト上で告知し、購入希望者による支援を呼びかける。募集期間内に必要な資金が集まれば、支援者へ所定のリターンを提供する。出版者は集まった資金の20%を手数料として支払う。

リターンはプロジェクトによって異なるが、コアなファン向けに限定本を提供したり、新人作家の出版などのプロジェクトに対しては、支援者の名前入りの書籍をプリントオンデマンドで制作したり、限定フィギュアを3Dプリンターで制作したりすることを想定しているのだという。

第1弾プロジェクトとしては、クラウドソーシングサービスを運営するランサーズが、特定の企業に所属せずに働くフリーランスの活動を紹介する書籍を出版する。取材や書籍カバーデザインなどの制作者についてはクラウドソーシングをフル活用し、ランサーズ上で募集する。

プロジェクトの募集期間は12月5日から1月23日まで。目標金額は300万円で、支援金は500円から100万円まで受け付けている。リターンは、完成した書籍への広告掲載や出版パーティー参加権などを用意している。

出版に関するクラウドファンディングといえば、絶版漫画の配信サービス「Jコミ」が作品のPDFセットなどを販売する際に利用しているが、「出版の企画から流通、制作までを一気通貫で手がける出版特化型のクラウドファンディングは日本初」(ワンモア)。ミライブックスファンドでは2015年度までに100件のプロジェクト実現を目指す。

出版者としては、出版物の企画段階からサイト上でプロモーションができるため、出版に伴うリスクを低減できることがメリット。また、取次の協力があるため、書店や電子書籍ストアでも販売されるのも自費出版と異なるところだろう。その一方、販売力のある大手出版社の書籍と異なり、書店でどれだけ売れるかは未知数だ。