4月17日(米国カリフォルニア時間)、世界中で6000社以上の顧客を抱える、ウェブサイトの最適化のためのA/Bテストツールの急成長企業であるOptimizely が強力な6つの製品をリリースした。新製品には、iOSへの対応や、コミュニティと人材育成のためのプラットフォームである「Optiverse 」に加えて、A/BテストツールをAPIとして解放したことで、例えば、Bluekai と連携したデータに基づいたオーディエンス・ターゲティングも可能になった。さらに、刷新されてシンプルになったテスト結果ページでは、ユーザーのプロファイルごとにA/Bテスト結果を詳細分析することが可能になった。
ウェブページのA/Bテストで経験があり資金力もあるOptimizelyのモバイル参入は、文字通り戦いの開始ということになるだろう。
サンフランシスコ市内にて開催中のOpticonに登壇した共同創業者でCEOのダン・シロカーによると、これまでの受動的なA/Bテスト環境に加えて、能動的に「データをアクションに変えていく」ためのアップデートであるとしており、モバイル戦争への参入のみならず、これまでの単純なテストツールに加えて、リアルタイムのもしくは取得済みの(ビッグ)データ活用という、”ホットな”と分野への参入も意味している。
具体的な6つのアップデートは、次の6つ:
・Optimizely for iOS – 高速でスケーラブルなiOSアプリ向けのA/Bテスト環境。先日Optimizelyのオフィスを訪問した際に「Mobile War Room」と書かれた部屋があったのを覚えているけれど、試行錯誤の上、満を持してのモバイルA/Bテストへの参入ということになる。LeanPlum やVessel 、Aptimize といった先行者がひしめくモバイル向けA/Bテスト市場において、ウェブページのA/Bテストで経験があり資金力もあるOptimizelyの参入は、文字通り宣戦布告ということだろう。
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・Optimizely Developer Platform - Optimizelyの一連の機能を利用可能なAPIを用いて、これまでのウェブサイト上のVisual Editor上でのテストに加えて、デベロッパーがコードを用いて製品に直接A/Bテストを埋め込むことができるようになった。例えば、今回発表されたインテグレーション・パートナーであるBlueKai がExperiment APIを用いて実装したツールでは、Bluekaiが収集したデータを用いて、対象とするユーザ・セグメントごとにパーソナライズされた表示をするA/Bテストも可能になった。例えば、直前にクルマに関連したウェブサイトを訪問した人には、クルマに関連したコンテンツを表示し、コンバージョンを最大化するなどが可能になった。
・Audiences – 刷新されてシンプルになったテスト結果ページでは、サイト訪問者であるオーディエンスの属性に応じてパーソナライズしたコンテンツを表示可能になり、ユーザーのプロファイル毎にテスト結果を詳細分析することが可能になった。例えば、自社のウェブサイト訪問者がどんな検索キーワードで流入したのかといった訪問者データやBluekaiのようなサードパーティの提供するデータ応じて、分析結果を分けたレポートを生成し、チーム内で共有するなどが簡単にできるようになった。
・Optiverse – A/Bテストに応じた最適化を実行できる人材へのニーズが高まっていることに対して、A/Bテストに関して情報交換や意見交換が可能な「コミュニティ」、Optimizelyの利用方法についての知識ベースを提供しサポートのチケットの投稿も可能な「Support」、さらに、人材育成のための学習コンテンツを集約した「Academy」から構成されている。Danによれば、「かつて”Optimizelyの運用経験が10年以上”という求人を観たことあるけれど、それを観た頃はまだ創業2年目だったけれど、これからは、10年の経験のあるような人を育てたり見つけたりすることがしやすくなる」とのことだ。
・Customer Certification - これも人材不足を解決するためのものであり、OptimizelyのOptimizelyのプラットフォームへの理解度、デベロッパーとしての開発能力、テストに基づいた戦略立案能力についてのサーティフィケートを証明することができる。人材育成のみならず、採用の歳にも、一つの強力な指標を提供してくれることになりそうだ。
サンフランシスコ市内にて開催中のOpticonに登壇した共同創業者でPresidentのピート・クーメン氏。
OptiConにて、午後に行われた“テスト文化をどう作るか”というセッションでは、Brooks BellでCMOを勤めるグレゴリー・ヌグ氏が「経営陣の理解とスポンサー(予算化)が、組織内にテストに基づいたカルチャーを作るためには最も重要だ」という話がでた一方で、GoogleでProduct Marketing Managerを勤めるクリスタ・セイデン氏が「ツールと人材も重要であり、特にチーム内にテストについて理解し、を実行できる人材の存在も不可欠だ」と語った。
これは、余談だが、テストに基づいたイテレーション(繰り返しの改善)を推奨する『リーンスタートアップ』(日経BP)は良書であり、世界的に企業が成長していくための強力な手法を提唱したものの、概念と事例の紹介に終始し、書籍からだけではリーンスタートアップを自社で再現し、具体的に実践するのが難しいと、僕は個人的に感じていた。けれど、「Lean UX」という視点でリーンスタートアップの普及に大きく貢献しているジャニス・フレイザー氏によれば、「エリックは、検証に基づく組織カルチャーと作るには、マネジメント層の理解とサポートが不可欠との意図から、あえて具体的なマニュアル形式にせずに、概念と強力な事例の紹介に終始する書籍にした」とのことだ。「その結果、リーンスタートアップは、世界的にスタートアップ、大企業、政府機関等を巻き込んだ大きなムーブメントになり、LUXr でUX指向でリーンスタートアップを実践する方法を教えたり、リーンアナリティクスのような具体的な指南書が後に続いている」とのことだ。Optimizelyも、リーンスタートアップと同じように、A/Bテストをより多くの組織に文化的にも人材的にも根付かせていけるか、GrwothHacker.jp も運営する僕としては個人的に期待している。