フランスのフィンテックスタートアップのLydiaはシリーズBラウンドを延長した。全ての主要な既存株主も参加の元、Accelが延長を主導。Lydiaは2020年1月に最初の4500万ドル(約47億円)を調達したが、この投資はTencentが主導した。今回さらに8600万ドル(約89億円)を調達したことで、LydiaはシリーズBラウンドの一環として合計1億3100万ドル(約140億円)を調達したことになる。
Lydiaはこのラウンドの評価については述べなかったが、共同設立者兼CEOが筆者にヒントをくれた。「当社の企業価値はこの2つのBラウンドの間に著しく増加しました」と彼は語った。
興味深いのは、Amit Jhawar(アミット・ジャワール)氏がこのAccelの投資を進めたことだ。 彼は7月にベンチャーパートナーとしてAccelに入社し、Lydiaの取締役会に加わる予定だ。
ジャワール氏は2011年に決済代行会社のBraintreeにCOO兼CFOとして入社。間もなく、Braintreeはピアツーピア決済アプリのVenmoを買収した。「買収当時のVenmoは僅か15人。2012年にモバイルアプリをリリースしたばかりでした」とジャワール氏は電話インタビューで語った。
後にPayPalがBraintreeとVenmoを買収。ジャワール氏は2020年初頭まで残り、Venmoをアメリカで5200万人が利用する巨大なフィンテックコンシューマー向けアプリへと拡大させた。ジャワール氏はピアツーピア決済は長期的な消費者との関係の始まりだと考えている。
「消費者のアカウントに残高があれば、再度使用してもらえるので、P2Pとしては成功なのはご存知の通りです」と彼は述べた。
2014年頃に初めて本誌でLydiaを取り上げた時、筆者は同社のことをフランスのVenmoと呼んでいた。当時、彼らは60万ユーロ(約7600万円)しか調達していなかった。ジャワール氏はその見解に同意しているようだ。その後、Lydiaは大きく成長し、様々な面でピアツーピア決済を超えて拡大した。
Lydiaを使用すれば数秒で他のユーザーに送金できる。口座番号を銀行アプリに入力する必要はない。送金する側が相手の電話番号を知っていれば、相手は支払いを受け取ることができる。
アカウント内に残高があれば、Visaデビットカードを使用して直接支払うこともできる。Lydiaでバーチャルカードを作り、Apple PayやGoogle Payで利用することも可能であり、プラスチックカードの発行依頼をすることもできる。
LydiaではアプリでIBANを取得することで口座振り込みもサポート。また、マネーポットを作成し、他のユーザーへのリンクの送信、Lydiaで銀行口座の確認、病院や慈善団体への寄付、クレジットラインの取得等が可能だ。
他の全てを凌駕する目玉機能がある。銀行口座は硬固ではあるが画一的な傾向があり、人々のお金の使い方に対応できていない。「現在、銀行ではメインの口座を当座預金と呼んでいます。それは設計上時代遅れなものになっています」とCEOのCyril Chiche(シリル・チチェ)氏は述べている。
Lydiaは多くの様々な方法で使用できる柔軟なサブアカウントを作成した。第2サブアカウントを作成して、請求書の支払いのためにお金をいくらか取っておくことができる。第3サブアカウントを作成して、一緒に旅行する数人の友人達とシェアすることも可能だ。
アカウントのグリッド上を指でスワイプすることで、口座から口座へと資金を移動することができる。複数のコントリビューターを持つことができ、デビットカードに関連付けられているアカウントを変更できるため、お金の流れがより自然になる。まるで金融アプリではなく、メッセージングアプリを使っているみたいだ。
そして、Lydiaはフランスでは順調に事業を進めている。現在、同社には400万人を超えるユーザーがいる。過去1年間で取引きは倍増し、利用が加速している。
「PayPalを別にすれば、Lydiaにはヨーロッパ最大のP2Pネットワークがあり、モバイルファーストかつ顧客中心のソリューションで、ヨーロッパ全体で成長する可能性があります。これにより消費者金融商品の需要や支払いを受けるための業者の関心が高まるでしょう」とジャワール氏はメールで述べた。
そして、2020年はLydiaにとって忙しい年となった。同社は金融サービス向けのスーパーアプリとして優位に立つために完全に再設計したアプリを発表したばかりだ。全てのインタラクションとメインタブが変更されている。
Lydiaはまた、無料プランよりも上限が高く設定されたプランおよび、最も料金の高いプラン向けの保険パッケージを提供するプランの、2つの新しいプレミアムプランの提供を再開した。これらのプランは現在アプリが提供している内容により合致しており、企業の最終収益に貢献するはずだ。「次のステップはLydiaの収益性を高めることであり、それは当社にとって常に重要な位置を占めてきました」と最近のインタビューでチチェ氏は述べている。
Lydiaは密かに、カードの新しいインフラストラクチャへの移行、アカウントアグリゲーションに対する残高通知機能の追加、単一ユーロ決済圏内での銀行口座への即時振込みなど、多くの主要機能もアップグレードした。
2021年に、同社はさらなる金融商品の新たな基盤を足掛かりにして事業を進めて行く計画だ。「クレジット、貯蓄、投資など、ありとあらゆる商品を試してみるつもりです」とチチェ氏は述べた。
同社はまた、より多くの国々へと緩やかに拡大している。だが、受け入れ率を上げるため、現地のカードとIBANを使用することでその地域に根差していると感じられる商品の提供を望んでいる。Lydiaはそれをポルトガルから始めている。
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(翻訳:Dragonfly)