AIをクラウドにデプロイする過程を単純化するためにPaperspaceはサーバーレスを選ぶ

GPUベースのインフラストラクチャをサービスとして提供することは、スタートアップにとって容易なことではないが、機械学習やVFXを多用するモダンなソフトウェアの開発とデプロイを目指すクラウドインフラストラクチャサービスPaperspaceは、あえてそれに挑んでいる。そして同社は今日(米国時間3/21)、さらに次の一歩として、AIや機械学習のプロジェクトでサーバーのデプロイを不要にするサービスプラットホームGradientを発表した。

どんなサーバーレスのアーキテクチャでも、サーバーがいなくなるわけではないが、ユーザー(デベロッパー)が手作業でそれらをデプロイする必要はなくなる。Gradientはコードをデプロイする手段を提供し、アロケーションやマネージメントはすべてPaperspaceが面倒見る。それにより、機械学習のモデルの構築に伴う複雑性の、大きな塊(かたまり)を取り除く。

同社の協同ファウンダーでCEOのDillon Erbによると、数年前に同社を立ち上げたときはGPUは今日のクラウドサービスのように一般化していなかった。最初は仮想マシンのGPUインスタンスを立ち上げるやり方が主流で、今でもそうだが、問題はツールの不備だった。

Erbの説明では、大企業はツールセットを内製することが多い。しかし実際には、それだけのリソースを持たない企業がほとんどだ。“GPUなどで十分な計算パワーがあっても、それだけではだめで、ソフトウェアスタックが必要なんだ”、と彼は言う。

同社が昨年1年間を費やして作ったGradientは、デベロッパーにそのための構造を提供し、それにより彼らは、もっぱらモデルやコードの構築と、プロジェクトを軸とするコラボレーションに集中できるようになる。そしてマネージメントは、Paperspaceにまかせる。DevOpsのチームが、チームとコードとその下のインフラストラクチャの間の対話を管理する必要も、なくなる。

“コードとDockerのコンテナだけをいただければ、VMのスケジューリングなどはわれわれがいたします。ご自分でマシンを立ち上げる必要はありません”、とErbは語る。

Paperspaceは、Y Combinatorの2015年冬季クラスを卒業して以来、クラウドにGPUをデプロイするという難題に取り組んできた。2014年にローンチしてから今日までに1100万ドルあまりを調達してきたが、シードラウンドの400万ドルがやっと2016年だった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Y Combinatorを卒業したばかりのPaperspaceは仮想デスクトップという成熟市場にどうやって食い込むか

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PaperspaceのファウンダーDaniel KobranとDillon Erbは、ふつうのスタートアップなら避けて通りそうな難しい問題に挑戦している。彼らは、成熟市場である仮想デスクトップ市場をディスラプトしたいのだ。そこは、VMware, Citrix, Amazonなど、名の知れた巨人が支配する市場だ。しかしPaperspaceは今日(米国時間10/4)、シード資金にしては大きい400万ドルを獲得して、今後もその夢を追うつもりだ。なお今日は、彼らのプロダクトの一般公開も発表された。

このシードラウンドの投資家は、Ludlow Ventures, Data Collective, Initialized Capitalの三社。ほかに、Digital Oceanの協同ファウンダーJeff Carrなど、数名の個人投資家も参加した。

確立した市場への参入は、容易ではない。しかも仮想デスクトップは、Paperspaceの場合もそうだが、自前のデータセンターを持たなければならない場合が多い。しかしY Combinator2015冬季出身のKobranとErbは、そんなことではめげない。既存の競合製品をたくさん試した結果彼らは、どれもインストールとメンテナンスが難しすぎる、そして遅すぎて大きな仕事はできない、と結論した。

仮想デスクトップはユーザー企業の社員たちに、彼らが必要とするすべてのツールを、机上専有面積の小さなマシンから提供する。それらのデスクトップのコントロールとセキュリティと管理は、企業のIT部門が担当する。デスクトップのそういう一元管理は、金融、保健医療、教育など、規制の厳しい業界ではとくに重要だ。

Paperspaceは、そんな仮想デスクトップの概念をさらに一歩進めて、ブラウザー上で動き、どんなデバイスにもコンテンツをストリームするサービスを作り上げた。しかも、十分なセキュリティと管理性がありながら、それまでの仮想デスクトップ製品と違って、導入したらすぐに使える、簡単な製品に仕立てた。マシンをクローンしたり、既存のVPNにそれらを統合したり、既存のActive Directoryを使う、といったセットアップ作業も、簡易なサービスとして提供されるのでITの負担は少ない。大企業のユーザーは、ワンクリックバックアップ、モニタリング、カスタムテンプレート、共有ドライブ、などの周辺サービスも利用できるが、いずれもボタン一つで使える簡便さだ。

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アニメーション提供: Paperspace

これらのサービスやツールはすべて、クラウドから提供される。AWSにもクラウド仮想デスクトップの時間貸しサービスがあるが、しかしPaperspaceの連中に言わせると、それらのサービスですら技術的に難しくて、しかもAWSの使用という別の負担も生じる。Paperspaceなら、社内に技術に詳しい社員がいなくても、誰もがすぐに、自分の机上で仮想デスクトップを使えるようになる、と彼らは主張する。

しかしPaperspaceのように仮想デスクトップをブラウザー上で提供するということは、いわばブラウザーの中で仮想マシン(VM)が動くことだ。そこで、導入の単純性とともに必要なのが、スピードだ。そこで、ブラウザー上の各VMに(クラウド上で)専用のGPUを割り当ててスピードを確保する。それによりユーザーは、相当複雑なタスクでも快調にこなせるようになる。

二人のファウンダーは前職がシステム設計のアーキテクチャ担当で、その職場で仮想デスクトップの重要性を十分に認識した。しかしそういうローカルな仮想デスクトップシステムは、大きなファイルや複雑なプログラムを扱うには非力だった。

しかしPaperspaceは、彼らの前の会社がやっていた複雑なCADだけがターゲットではなく、金融サービスや教育、法律、保健医療など、どんな分野の企業や組織でも仮想デスクトップを利用できる。お望みなら、ゲームもOKだ。

クラウドサービスを提供するのに自前のデータセンターを必要とするスタートアップは、いまどき珍しい。しかし彼らが望む仮想デスクトップのパフォーマンスは、既存のクラウドプラットホームのVMインスタンスでは無理だった。そこで彼らは、カリフォルニアとニューヨークの二箇所にデータセンターを立ち上げた。それが通常のやり方ではないことを十分に承知している彼らは、その道の経験者である、クラウドIaaSのベンダーDigital OceanのJeff Carrなどに助言を仰いだ。自前のデータセンターを必要とするビジネスについて、いろいろ教えてくれる経験者たちだ。

そしてKobranとErbによると、Carrらのアドバイスも非常に助かったけれども、Y Combinatorでの経験も大きい。“Y Combinatorがなければ、できなかっただろう。あそこには、とても強力なお助けネットワークがあるからね”、とKorbanは述べる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ついに高性能パソコンそのものがクラウドから提供、仮想化コンピューティングを大衆化したPaperspace

【抄訳】

これからは、パソコンをアップグレードしてスピードもストレージも増やしたいとき、それを高価な新しいハードウェアを買わずにできる。Y Combinatorから巣立ったPaperspaceが、一台の完全なパーソナルコンピュータをクラウド上に作ってくれる。ユーザはそれに、Webブラウザからアクセスする。それはある意味では、VMWareやCitrix、Amazon Workspacesなどエンタプライズ向けのソリューションにも似ているが、Paperspaceがねらうのは一般消費者や、在宅の仕事人だ。

ローカル機(自機)はWebがふつうに閲覧できる程度のものでよいが、クラウド上の高性能リモートパーソナルコンピュータには、同社の専用通信デバイス(上図左下)を自機に接続してアクセスする。

この専用デバイスは文鎮に似ているので Paperweightと呼ばれ、Paperspaceのサーバ上にあるユーザのリモートマシンと対話する。そのリモートマシンは、必要とするコンピューティングパワーに応じて”basic”または”pro”を選ぶ。このデバイスは中に小さなマイクロプロセッサがあるだけで、計算処理はすべてクラウド上で行われるから、“ゼロクライアント”であると見なされる。

Amazon Web Services(AWS)などを初めとして、今日ではクラウド上のコンピューティングパワーを利用するソリューションはたくさんある。でもそれらのサービスはすべて、プロフェッショナルの技術者向けだ。しかしPaperspaceは、同じくリモートのクラウドコンピュータにアクセスするサービスでありながら、一般消費者が画面上のボタンなどをクリックするだけで簡単に使えるようになっている。しかもそのリモートマシンは、机上の自機よりずっと強力な高性能機なのだ。

協同ファウンダのDillon Thompson ErbとDan Kobranによると、彼らがPaperspaceを発想したのはミシガン大学在学中に、建築業界向けの技術的なアプリケーションを作ったときだ。

建築関連のシミュレーションなどを動かすためには、高価なハイエンド機を買う必要があるが、それでもシミュレーションのアプリケーションを数日間ぶっ続けで動かさなければならない。“でも、科学計算の分野ではクラウドコンピューティングが利用され始めていることに、ぼくたちは気づいていた”、とErbは説明する。“そこで、“クラウドコンピューティングのパワーをコンピュータが苦手な建築士などが簡単に使えるためには、どうしたらいいか、と考えるようになった。クラウドコンピューティングは今でも、コンピュータの専門技術者でないと扱えない”。

彼自身もKobranも、二人ともコンピュータの技術者だから、今のソリューションでも十分に使える。ときどきコマンドラインからアプリケーションを動かすこともある。でも、それは一般の人びとには無理だ。

【中略】

Paperspaceは最初のうちAWSを使ってその仮想化機能などを実現していたが、今では自前のサーバの上でクラウドオーケストレーションソフトのXenやNvidia GRIDなどを使っている。サーバを置くスペースとしては、某コロケーションサービスを利用しているが、いずれ自前でデータセンターを持ちたい、と考えている。

VNCや、MicrosoftのリモートデスクトッププロトコルRDPなど従来のリモートアクセスと違ってPaperspaceは、WebsocketやWebGL、asm.jsなど最新のWeb技術をクライアントサイドで利用することによって、クライアント上で完全なHDのコンテンツを動かせる。

Netflixの映画をストリーミングできる程度のローカル機であれば、Paperspaceを十分に利用できる、という。

このサービスの利用料金は月額10ドルが下限だが、完全な料金体系はまだ決まっていない。今はWindows 7と8、およびUbuntuに対応しているが、Mac OS Xなどそのほかのオペレーティングシステムも近くサポートする予定だ。いずれ料金体系が確定して、リモートマシンをより“高性能機”にアップグレードしたいとき、ユーザがすることは何もない。設定も構成もそのまま完全に引き継がれるから、すぐに使い始められる。そこが、Paperspace、クラウド上にある高性能パーソナルコンピュータの、大きなアドバンテージの一つだ。

Paperweightデバイスは当分のあいだ予約価格50ドルで売られるが、本誌の読者250名には5ドルの割引がある。コードTECHCRUNCHを入力すること。デバイスの発売は、今年の後半を予定している。

Paperspaceは現在、Y Combinatorからの支援を除いては自己資本のみ。7名のチームが各地に分散している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa