患者と医師、両方からデータを得てがん治療をよりパーソナライズする仏Resilience、約51.6億円調達

フランスのスタートアップであるResilience(レジリエンス)は、中央ヨーロッパ時間1月25日、Cathay Innovationが主導するシリーズAラウンドで4000万ユーロ(約51億6000万円)を調達したと発表した。同社は、がんと診断されたときの治療の道のりを改善し、より健康で長い人生を送れるように支援することを目指している。

このラウンドには、Cathay Innovationに加え、既存投資家であるSingularも参加した。Exor Seeds、Picus Capital、Seaya Venturesなどのファンドもこのラウンドに参加している。さらに、Fondation Santé Service、MACSF、Ramsay Santé、Vivalto Venturesといったヘルスケア分野の投資家も参加している。

Resilienceについては2021年3月にすでに紹介しているので、ぜひ前回の記事を読んで、この会社のことをもっと知っていただきたい。同社は、シリアルアントレプレナーであるCéline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏とJonathan Benhamou(ジョナサン・ベンハモウ)氏が共同設立した会社で、がん治療において患者と医療提供者の両方を支援したいと考えている。

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患者側では、Resilienceはがんやがん治療の影響や副作用を測定し、理解し対処するのに役立つ。ユーザーはアプリ内でさまざまなデータポイントを追跡し、自分の病気に関するコンテンツや情報を見つけることができる。

だが、Resilienceは自宅で使用するアプリだけではない。病院が治療をよりパーソナライズするための、病院向けのSaaSソリューションでもあるのだ。Resilienceは、世界有数のがん研究機関であるGustave Roussy(ギュスターヴ・ルシー研究所)とのパートナーシップにより設立された。

医療関係者は、患者がアプリを使って集めたすべてのデータを活用できるようになる。これにより、がん治療施設は患者をよりよく理解し、より迅速にケアを適応させることができる。ResilienceはBetteriseを買収することで、データ駆動型のがん治療に関して先陣を切ることができた。

長期的なビジョンは、それよりもさらに野心的だ。がん治療施設で働く医療提供者に話を聞くと必ず、時間がいくらあっても足りない、という。

しかも、ますます専門化していく新しい治療法を把握するのはさらに困難だ。Resilienceは、医師に取って代わるものではない。しかし、医師が盲点を克服する手助けをしたいと考えている。

その結果、患者はより良い治療を受けることができ、Resilienceアプリによって追加サポートを受けられるようになるはずだ。がんの治療は長く苦しいものなので、プロセスを改善することができれば、それは良いことに違いない。

画像クレジット:Resilience

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

ITでがん治療を支援するフランスの意欲的なスタートアップ「Resilience」

新しいスタートアップのResilience(リジリエンス)は、がん治療施設とがん患者を、治療のあらゆる段階で手助けしたいと考えている。これはフランスの有名な起業家2人が立ち上げた意欲的なプロジェクトだ。彼らは自分たちのIT技術をこの新たな医療スタートアップに活用したいと思っている。

Céline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏とJonathan Benhamou(ジョナサン・ベンハモウ)氏の2人が共同CEOを務める。Nicolas Helleringer(ニコラス・ヘレリンジャー)氏とMatthieu Pozza(マシュー・ポッツァ)氏が残り2人の共同ファウンダーで、それぞれCTO(最高技術責任者)とCPO(最高人事責任者)に就いている。ラゾルテス氏は以前、フランスで有数の「Money Pot(個人がお金を集める仕組み)」の会社であるLeetchiを共同設立した。さら、スピンアウト企業としてマーケットプレイス決済ソリューションのMangoPayも立ち上げている。どちらの企業もCrédit Mutuel Arkéa(クレディ・ミュチュエル・アルケア)に買収された。

ベンハモウ氏は、クラウドベースの人事サービスPeopleDocを共同設立した。2018年、同社はUltimate Softwareに買収されている。同氏は、買収後も上場企業である同社の幹部を務めた。その直後、非上場株式投資会社のHellman & Friedman Capital PartnersがUlitimate Softwareを買収した。

2020年、2人はかなりの時間を割いてProtegeTonSoignantという非営利団体で一緒に仕事をした。140名の人々とともに、同組織は740万ユーロ(約9億6000万円)の寄付を集め、個人防護具を購入して必要としている病院に届けた。寄付金集めと物流面、両方の挑戦だった。

医療専門家と長い時間話す機会を得た2人は「少なくとも次の10年を命を救う人たちに自らを捧げる」決心をした、とラゾルテス氏はいう。

それは野心的な挑戦と思われ、彼らもそれを知っていた。「医療に関しては何も知りません、人事や金融のことを知らないのと同じように。私たちは非常に規制の厳しい市場に参入しようとしています」。

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だから彼らは1つの分野、がん治療に特化しようと決めた。研究機関が過去数年間に著しい進歩を遂げてきた結果、がん治療はますま複雑化している。例えば次の3年間に300種類の新たな治療法が出てくる、とベンハモウ氏は推測する。治療は広域療法から標的療法へと徐々に移りつつある。

現在、がん治療施設は3つの課題に直面している。第1に「人間の脳はこの全データを吸収できません」とベンハモウ氏はいう。第2に、平均余命が伸びるにつれ、がん症例は毎年増えている。腫瘍委員会は個々の患者の治療方針の決定に1分半から2分間費やすことになる。

第3に、前の2つの問題の結果、患者は自己裁量に任されることになる。例えば治療における投与量の調節がなされなかったために副作用に苦しむ患者もいる。

画像クレジット:Resilience

Resilienceは、医療チームと患者療法のためのがん治療の多面的ソリューションになることを目指している。開業医に対しては、Resilienceが治療決定を支援する「サービスとしてのソフトウェア」ソリューションになる。同社は科学文献を分類し、機械学習を利用して過去の症例との類似性を調べ、さまざまな条件に基づく臨床試験を見つけ出す。

患者に対しては、自分のがんに関するコンテンツや情報をアクセスできるウェブとモバイルアプリを提供する。具体的に、例えばResilienceは患者が副作用を理解して治療する手助けをする。

「私たちのゴールは、このアプリが患者のクオリティ・オブ・ライフを改善できると証明することです」とラゾルテス氏はいう。Resilienceはアプリを使って質問をして、治療を改善するためのデータを集めることも考えている。

すでに同社はデータサイエンスチームを結成している。そこでは自然言語処理を使って科学文献を解析する。さらに、医療チームと協力してあらゆる部分を二重チェックする。

患者間の類似性を見つけるために、同社は複数の病院と提携して過去の症例データを入手する予定だ。

Resilienceは、調達ラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した。元AlvenのパートナーであるRaffi Kamber(ラフィ・カンバー)氏とJérémy Uzan(ジェレミー・ウザン)氏が設立したVCのSingularがラウンドをリードした。テックビジネスのエンジェル投資家であるLa RedouteのNathalie Balla(ナタリーバラ)氏、Xavier Niel(グザビエ・ニール)氏、AlanのJean-Charles Samuelian(ジャン-シャルル・サミュリアン)氏、Sation FのRoxanne Varza(ロクサーヌ・バルザ)氏らも参加した。

同日の調達ラウンドには、医療投資家であるAstraZenecaのCharles Ferté(チャールズ・フェルテ)氏、BioclinicのPhilippe Dabi(フィリップ・ダビ)氏、OwkinのThomas Clozel(トーマス・クローゼル)氏などの名前もあった。

Resilienceはミッションに向かって行動する会社だ。同社は科学委員会、患者委員会と提携を結んでいる。世界有数のがん研究施設であるGustave Roussy(グスタフ・ルッシー)がん研究所もResilienceの共同ファウンダーに名を連ねている。

かなりの数の利害関係者がいるが、これは医療会社を作るためには正しい行動だ。Resilienceは今、自分たちのプロダクトを洗練し、がん治療を実際に改善する可能性のあるプロダクトを展開するために最適な抑制と均衡のシステムを手に入れた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Resilienceがん医療

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook