高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」のグローバル化を目指すClearが12.96億円を調達

高級日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」のグローバル化を目指すClearが12.96億円を調達

ラグジュアリーな日本酒ブランドとして世界展開を目指す「SAKE HUNDRED」(サケハンドレッド)と、日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」(サケタイムズ)を運営するClear(クリアー)は5月26日、第三者割当増資による総額12億9500万円の資金調達実施を発表した。引受先には、ジャフコ グループをリード投資家に、既存投資家である三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、アカツキ「Heart Driven Fund」、OPENSAUCE、その他複数の投資家が名を連ねている。

Clearは「日本酒の未来をつくる」をビジョンに、2013年に創設されたスタートアップ企業。SAKETIMESは2014年から運用を始め、現在の月間購読者は55万人。SAKE HUNDREDは2021年5月26日現在の会員登録者数が5万3109人となっている。「SAKE HUNDREDでは、ラグジュアリーシーンで愛される日本酒ブランドを確立して新たな市場をつくることを、SAKETIMESでは世界における日本酒情報のインフラとなること」を目指している。

今回調達した資金は、SAKE HUNDREDとSAKETIMESの事業を拡大し、新たなステージに引き上げることにあてられる。具体的な今後の展開は、SAKE HUNDREDの海外進出強化、SAKE HUNDREDのブランド投資、サステナビリティーの推進、グローバル展開のための人材採用、SAKETIMESの発展が揚げられている。

海外展開では、これまで香港、シンガポールを中心に行ってきたが、今後は、アメリカ、イギリス、中国、UAEに輸出エリアを拡大し、卸売販売に加えて個人販売も促進してゆく。

SAKE HNDREDのブランド投資では、直営ブティックの開業プロジェクトを推進し、「最高峰のグローバル日本酒ブランド」の味に加え、「お客様の心の充足に貢献するためのブランド体験」を提供してゆく。

SAKE HUNDREDでは、環境に配慮した酒づくりの資材の研究開発、大学や研究機関との協力で日本酒製造時の環境負荷の可視化と低減に取り組み、日本酒産業全体のサステナビリティーな発展に貢献してゆくという。そうした活動は、SAKETIMESで発信してゆくとのことだ。

Clear代表取締役、生駒龍史氏はこう話している。
「自社の売上・利益を上げることを前提に、サプライチェーン全体が潤う起点となること、Clearの事業を通じて、産業全体の未来が拓かれていくことこそが、私たちの目指す未来です」

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「ライバルはラグジュアリーブランド」日本酒スタートアップのClearが2.5億円調達

カテゴリー:フードテック
タグ:CLEAR酒 / アルコール飲料(用語)SAKE100資金調達(用語)日本酒日本(国・地域)

「ライバルはラグジュアリーブランド」日本酒スタートアップのClearが2.5億円調達

Clear代表取締役 生駒龍史氏

日本酒スタートアップのClear(クリアー)は2月3日、総額2.5億円の資金調達実施を発表した。Clearは、日本酒に関するWebメディアを運営しながら、プレミアム日本酒のブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」を展開。酒蔵と共に開発した高品質・高価格の日本酒をネット経由で販売するなど、日本酒に特化した事業を展開している。

海外で高まる日本酒ニーズによりスタートアップに勝機

ここ数年、国内外でSAKEスタートアップの動きが活発だ。これはしかし、日本酒産業そのものに勢いがあるということではなく、むしろ産業自体はもう数十年、ずっと衰退傾向にある。なぜ、この分野で新興企業に注目が集まるのだろうか。

農林水産省「日本酒をめぐる状況(令和元年10月)」(PDF)によると、日本酒の国内出荷量はピーク時(1973年)には170万キロリットルを超えていたが、近年は50万キロリットル程度まで減少。一方で吟醸酒、純米酒といった「特定名称酒」の比率は増加傾向にあり、出荷量も一般酒と比べれば、そう大きく落ち込んでいない。

また、国内出荷量が減少傾向にある中で、輸出量は日本食ブームなどを背景に増加傾向にあり、2018年の輸出総量は約2万6000キロリットルと10年で倍になった。金額では2013年に初めて100億円を突破して以来増え続けており、2018年には222億円と10年で3倍の伸びとなっている。

さらに、日本酒の海外輸出を促進するため、政府も後押し。輸出向け商品のみを製造する場合に限り、日本酒製造場の新設許可を政府が検討していることが2019年11月、明らかになった。これまでは需給均衡を保全するため、原則として清酒製造免許は新規発行されていなかったのだが、これで国外向け限定とはいえ、日本酒造りに新規参入する道が開ける可能性が出てきた。

こうした状況のもと、パリに醸造所を開設し、世界酒としての日本酒開発を進めるWAKAZEや、地方に眠る酒蔵をよみがえらせ、土地オリジナルの日本酒を蔵と組んで販売する日本酒応援団、AIによる日本酒レコメンドサービスや、SAKEセレクトショップなどを運営するMIRAI SAKE COMPANYといったスタートアップが登場。資金調達や大手企業との提携を実現してきている。そのひとつが、SAKE100などを展開するClearだ。

Clear代表取締役の生駒龍史氏によれば「国外でもSAKEベンチャーは増えている」とのこと。同社の調査では現在、45〜50社ぐらいのスタートアップがあるそうだ。日本酒の海外出荷量は年120%成長を遂げているが、「フランスワインの世界市場は1兆2000億円規模なので、(222億円の日本酒市場は)まだまだ伸びしろがある」と生駒氏は考えている。

「これは歴史的に革命的なことだ」と生駒氏は言う。「これまで日本酒のプレイヤーは減ることはあっても、新たに入ってくることは長年なかった。それが近年、新規参入が始まっている」(生駒氏)

この状況を生んだ理由について「インバウンド訪問者が増え、日本各地で本場の日本酒を飲んだ人たちが、帰国してから『地元でも日本酒が飲みたい』と考えて動き出していることや、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことで和食がムーブメントとなり、それに合う食中酒として日本酒が求められていることなどが考えられる」と生駒氏は分析している。

輸出のための酒造免許発行だけではなく、内閣府や国税庁などの関連省庁が中心となった、クールジャパン戦略の枠組みの中で促進する日本産酒類の輸出に関わる予算も、年々増加している。

「日本に1400ある蔵元は、1カ月に3社廃業している。これは赤字だからだ。蔵元は『安くてうまい』酒を追求してきたし、国税庁も金額ではなく、生産する量に対して課税してきた。一方で多様化は進んでいる。(大量生産を想定した)ビジネスモデルが同じようには成立しなくなっている」(生駒氏)

生駒氏は「日本酒業界にはラグジュアリーブランドが求められている」と語る。「海外では、フランスの第1級格付けのシャトーが造るワインのような、最上級の日本酒へのニーズがある。そういう環境では、レガシーなプレイヤーでなく、スタートアップにチャンスがあると見ている」(生駒氏)

世界に認められたプレミアム日本酒「百光」

Clearは2013年2月の設立。2014年にWebメディア「SAKETIMES」をローンチし、その後、英語版の「SAKETIMES International」も立ち上げ、運営している。

Clear代表の生駒氏は「一ファンとして日本酒の情報を集めるときにメディアが必要だったが、それがなかったので自分で作ることにした」とSAKETIMES立ち上げの経緯について話す。「当時は日本酒に関する情報がほとんど、流通していなかった。ちょうどバーティカルメディアの運営がはやっていた頃。2014年にSAKETIMESを立ち上げたときには、取材先の蔵元も『どこの馬の骨か分からないメディアが来た』という感じだったが、地道に取材を続け、2016年ぐらいからは、逆に執筆依頼が来るようになった」(生駒氏)

SAKETIMESのページビューはローンチから5年間伸び続けており、現在は月間90万PV、45万UUと、日本酒専門Webメディアとしては国内でもトップクラスになったという。生駒氏は酒メディア運営の知見をワインやウイスキーなど、ジャンルを広げて横展開するのではなく、「日本酒の未来をつくる」という最初の動機に従い、深掘りしていくことを選んだ。その結果生まれたのが、2018年7月にスタートした日本酒ブランド、SAKE100だ。

SAKE100は、海外で求められる“最上級の日本酒”を酒蔵と共に開発し、販売する。「日本酒のラグジュアリーブランドをつくる」ことを目指す生駒氏は、2018年10月のシード調達から、今回のシリーズAラウンドに至るまで「定量より定性に注力してきた」と、日本酒におけるブランドづくりの重要さについて強調する。

SAKE100ブランドで提供されているプレミアム日本酒の例として、山形県の楯の川酒造と開発したフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」がある。百光は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る、「上質」を追求した日本酒として、2018年7月にリリースされた。

リリースから1年足らずで、百光は世界的なワイン品評会「IWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)2019」の純米大吟醸酒部門でゴールドメダルを獲得。また“フランス人によりフランス人のために開催される”日本酒コンクール「Kura Master 2019」でも、純米大吟醸酒部門でプラチナ賞を受賞している。「同じ年で、2つの賞を受賞することは少ない」と生駒氏はプロダクトの品質に自信を見せる。

その品質の高さから、一流ホテルや有名レストランでソムリエやシェフに認められ、パレスホテルやアマンリゾーツ、星野リゾートなどでも採用されているという、SAKE100の日本酒。ホテル・飲食業界といった業者だけでなく、個人向け販売でも「直近でリピーターは年間8万5000円〜9万円を購入し、年間100万円以上の購入者も2人いる。エンゲージメントは高い」と生駒氏は述べている。なお、販売の99%は消費者向けが占めるという。

蔵とのネットワークを大切にしながら海外展開図る

一般消費者からも認められ、海外および有名店でプロ中のプロによる評価も得たSAKE100に、投資も集まった。今回のシリーズAラウンドに参加した投資家は下記のとおりだ。

  • アカツキ(同社ファンド事業「Heart Driven Fund」から)
  • 朝日メディアラボベンチャーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • MTG Ventures
  • OPENSAUCE
  • KVP(既存株主)
  • 三井住友海上キャピタル
  • ほか、複数の投資家

SAKE100の売上拡大策について、生駒氏は「面は広げたいけれど、ブランドとして需給バランスも大事。必要以上に生産を絞って無理に価値を上げることはしないけれども、どんどん作って出すということもしない」と語る。「そもそも製造サイクルに制限がある日本酒は、ブランドづくりと相性が良い。米を仕込んで、冬からある一定の時期酒造りをしたら、その年は造りたくても造れないというところに価値がある」(生駒氏)

2020年からは、調達で得た資金も活用して、SAKE100の海外展開を図ると生駒氏はいう。冒頭で挙げた農水省の資料によれば、日本酒の輸出額で見た輸出先上位国は、アメリカと中国・香港だ。全体の約3分の1がアメリカ、ほぼ同額で中国・香港の合計が続き、残りが他の各国となる。

「フランスへの進出はブランドとしての意義は強いが、マーケットは小さい。中国は市場の伸び率はよい国だが、ラグジュアリーブランドとしての日本酒を展開するにはまだ、少し早いのではないかと見ている。そこで、アメリカのサンフランシスコを中心としたベイエリアで事業展開を図るつもりだ」(生駒氏)

サンフランシスコは、郊外にワインの高付加価値化に貢献した産地・ナパバレーもあり、ミシュラン3つ星レストランはニューヨークより多い美食都市で、高単価のプレミアム日本酒へのニーズも高いと生駒氏はにらむ。「日本と同様、高級店や富裕層へアプローチしていく。進出するなら早い方がいい」(生駒氏)

5〜6年前の投資環境では日本酒スタートアップの旗を掲げても「投資家がピンとこなかった」が「今は変わった」と生駒氏はいう。「グローバルでの成功、ユニコーンを作るといった投資家の課題をかなえるのが、必ずしもWebサービスやB2B SaaSでなくなってきている今、強いのは(リアルな)プロダクトだ。D2C文脈でなくともグローバルに展開できて、富裕層にアプローチできる日本酒は、産業そのものがド真ん中に入りはじめている」(生駒氏)

国内外のほかのSAKEスタートアップと比べて「メディアで培った事情理解があることがClearの強み」と語る生駒氏は、SAKETIMESの運営のなかで、蔵を数百軒まわって誰よりも日本酒についてインプットしてきた、と自負する。「日本酒という産業を背負っていきたい。日本酒への熱意と情熱では誰にも負けない、ということを知ってもらっている、蔵とのネットワークをこれからも大事にしていきたい」(生駒氏)

「競合はエルメスやルイ・ヴィトンといった、ほかのラグジュアリーブランド」という生駒氏。「“心を満たし、人生を彩る”圧倒的な品質の日本酒づくりを通して、(あると暮らしやすさが上がるといった)機能ではない、プレミアムな日本酒のある豊かさ、ライフスタイル、世界観を実現したい」と語っていた。

日本酒スタートアップのClearが7500万円を調達——D2CモデルのECサービス「SAKE100」運営

日本酒に特化した事業を展開するスタートアップのClearは10月31日、KLab Venture Partnersおよび複数の個人投資家から、総額7500万円を資金調達したことを明らかにした。

「日本酒は懐が深く、人生を豊かにする飲み物。世界中の人にその魅力を知ってもらいたい」と語るのは、Clear代表取締役の生駒龍史氏だ。Clearは2013年2月の設立で、日本酒のサブスクリプションコマース事業から始まった日本酒スタートアップ。現在は、2014年にローンチした日本酒メディア「SAKETIMES」、131カ国で読まれる英語版の「SAKETIMES International」を運営する。

また2018年7月からは、D2Cモデルの日本酒ECサービス「SAKE100(サケハンドレッド)」をスタート。高品質・高価格の“プレミアム日本酒”を酒蔵とともに開発し、ネット経由で販売している。

例えば、山形県の楯の川酒造と開発した日本酒「百光(びゃっこう)」は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る。吟醸酒の精米歩合は60%以下、大吟醸でも50%以下、というのが決まりなので、この磨き度合いは相当なもの。もちろん精米にも醸造にも高い技術が要ることだろう。

SAKE100で扱う日本酒にはほかにも、単に「究極の高級酒を造る」というだけでなく、耕作放棄地となっていた田んぼを開墾し、その土地で育てた酒米を使って醸した、という純米酒「深豊(しんほう)」や、濃厚で甘い、デザートワインならぬ“デザートSAKE”などもある。

SAKE100では「日本酒の魅力をさまざまな価値軸で打ち出すことで、世界中で認知され、親しまれる」ことを目指している。画一化された評価軸を突き抜けた日本酒を提案することで、高価格市場の形成を狙う。

「Clearの強みは、SAKETIMESなどのメディア運営を通じて日本酒の世界にどっぷり漬かり、蔵元や酒販店の動向や、売れ筋の傾向など、業界のことがよく分かっている点だ」と生駒氏はいう。「もともと、めちゃくちゃ日本酒が好きでビジネスのことも分かる集団が、好きが高じてやっている。業界がよく分かる人間がスタートアップ的に戦うことで、勝算があると考えている」(生駒氏)

同社にとって今回の資金調達は、VCが参加する初めてのエクイティによる調達となる。調達資金により、国内D2Cコマース成長のためのマーケティング強化を行うとともに、アメリカ・中国・香港・シンガポールなど、海外市場への展開も進める構えだ。

「世界一の日本酒企業を目指す」と話す生駒氏。SAKE100リリースに当たり、2018年7月、Clearは既存の酒販店を子会社化しているが、これも「制限のない事業展開を行うため」とのことだ。

「酒類小売業免許を新規に取得すると、3000キロリットル以上製造する酒蔵のお酒を売ることができないなど、免許上、制限がある。事業をスケールさせるなら大きい蔵と組む必要があるが、それができないのは困る。そのため、制限のない、旧来の免許を持つ酒販店を子会社化することにした」(生駒氏)

日本酒の輸出は8年連続で拡大しており、2017年の輸出額は約187億円、2018年は200億円を超えるのではないかと見られている。ただ一方、フランスワインの輸出額は年間90億ユーロ(約1兆1800億円)にものぼり、桁違いだ。生駒氏は「日本人以外にも日本酒を飲む人を増やすために、早い段階で海外にもブランドを展開して、アプローチしたい」と話している。

生駒氏はまた「日本酒を“社会ごと化”するために、IPOも目指している」という。「これまでの日本酒業界は“家業”か“免許”で縛られた閉鎖的な世界。『家を継ぐ』『免許があるからやる』ということではなく、社会に絡ませることでその世界を広げたい。そのためには、IPOにより、投資の対象として日本酒が見られることも効果があるのではないかと考えている。今まで日本酒だけの製造・販売で上場した企業はないが、上場することで社会に日本酒の価値・意義をつなげたい」(生駒氏)