新型コロナによる非接触需要でスキャン技術のScanditが約86億円調達

企業向けバーコードスキャナーのScandit(スキャンディット)が8000万ドル(約86億円)のシリーズCラウンドをクローズした。本ラウンドはシリコンバレーのVCファームG2VPがリードし、Atomico、GV、Kreos、NGP Capital、Salesforce Ventures、Swisscom Venturesも参加。Scanditの累計調達額は1億2300万ドル(約132億円)となった。

チューリッヒに拠点を置くScanditはバーコードスキャン、OCR(光学文字認識)、オブジェクト検出、拡張現実(AR)にコンピュータービジョンと機械学習技術を組み合わせたプラットフォームを提供している。ARはスマホからドローン、ウェアラブル(倉庫労働者向けのARメガネなど)、ロボットに至るまでカメラ搭載のあらゆるスマートデバイス向けにデザインされている。

Scanditのプラットフォームのユースケースには、モバイルショッピング、セルフチェックアウト、在庫管理、配達証明、アセット管理・メンテナンスのためのモバイルアプリやウェブサイトがある。医療分野でも患者のIDや検体、薬、用品のスキャンに同社の技術が活用されている。

スピードや精度において、また明るさが十分でないところやあらゆる角度、破損したラベルのスキャン能力においても、自社ソフトウェアは「並ぶものがない」と同社はうたう。売り込みをかけている産業は小売、ヘルスケア、産業・製造、旅行、運輸・ロジスティックなどだ。

今回の資金調達の前には、2018年にシリーズBで3000万ドル(約32億円)を調達した。それ以来、経常収益は3倍超、優良顧客の数は倍以上となり、グローバルチームの規模も倍に増強した。

世界に広がる同社の顧客には7-Elevenアラスカ航空、Carrefour、DPD、FedEx、Instacart、ジョンズ・ホプキンズ病院、La Poste、Levi Strauss & Co、マウントサイナイ病院、トヨタなどが含まれる。現状では1億台超のデバイスで年間「数百億ものスキャン」が行われているとのことだ。

新たに調達した資金はアジア太平洋地域や中南米を含む新たなマーケットでのさらなる成長の加速、北米と欧州での足掛かり構築に使われる、とScanditは話す。また、企業がコンピュータービジョンとARを使って主力事業のプロセスを変える新しい方法を考案するためのR&Dにもこれまで以上に資金を注入する。

Scanditによると、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによるソーシャルディスタンシングの必要性から、個人のスマート端末向けのモバイルコンピュータービジョンの需要も増えている。非接触型のやり取りができるようにする方法を顧客が探している、と同社は話す。

また、パンデミック絡みでは他にも急増している需要がある。「クリック&コレクト」小売と、新たに発生している何百万もの宅配だ。専用のハードウェアではなく、ScanditのスキャンアプリはBYOD(bring your own device、個人のデバイスの持ち込み)をサポートするので、同社の技術はこうした需要にうまく対応できる。

「COVID-19は、この不確実な時代における急速なデジタルトランスフォーメーションの必要性、フィジカルとデジタルをブレンドさせて重要な役割を果たすことの必要性に光を当てた」とCEOのSamuel Mueller (サミュエル・モラー)氏は声明文で述べている。「新たな状態(ニューノーマル)がどのようなものであれ、さらに多くの企業が『コンタクトレス事業』の新たな需要にすばやく対応し、成功できるよう、新たな資金でサポートすることができる」。

資金調達に関する発表文の中で、ラウンドをリードしたG2VPのゼネラルパートナーであるBen Kortlang(ベン・コルトラン)氏は以下のように述べている。「Scanditのプラットフォームは、企業グレードのスキャンソリューションを従業員や顧客が古いハードウェアを必要とすることなくいつでも使えるようにしている。物理的世界とデジタルの世界を結ぶものであり、世界がオンライン購入や配達、分散サプライチェーン、キャッシュレス小売へのシフトを加速させる中で重要性が増すだろう」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

分子スキャナー、SCiOの開発元がKickstarterでの苦情に回答

scio_screencap

カルト的人気を持つ製品がいつもそうであるように、SCiOにはファンもいれば中傷する人もいる。最近そんな中傷する人々が、このハンドヘルド分子スキャナーは2014年に250万ドルを集めながら未だに出荷されていないと、ネット上で不満を漏らしている。その結果は?ネガティブ報道と山ほどのツイートだ。

私はSCiOの開発者であるDor Sharonに、製品の現状がどうなっているのか、いつ出荷されるのか、そしてもっと大切なこと、M&Mを正しくスキャンできるのかを質問した。

TC:商品が全員に出荷されるのはいつか?
Dror Sharon: これまでに5000台を出荷し、残りの注文も来年初めまでに発送する予定。

TC: 遅れの原因は?
DS: SCiOの製造・組立てを開始して以来、何度か障害にぶつかった。例えば入手した部品が当社基準に合っていないこともあった。SCiOセンサーは複雑なテクノロジーであり、当社の品質管理基準は高い。製造過程の途中で、SCiOセンサー自身の設計変更も繰り返し行った。その結果、SCiOの精度と感度は向上し、設計と製造にさらに時間を要することになった。

TC: こうすればよかった、ということは?
DS: 後悔はしていない。

私たちは会社を作り、ワールドワイドなデベロッパーコミュニティーとユーザー基盤を作りつつ、非常に複雑なテクノロジーに挑戦している。遅延に不満を持つメンバーがコミュニティーに少数いることは理解している。その人たちからの苦情や意見は深刻に受け止めており、FacebookやTwitterのチャンネルでコメントしたり質問を寄せてくれた人たちには、サポートチームが直接連絡を取っている。ちなみにKickstarterキャンペーンに法的な返金義務はないが、支援者が求めれば返金にも応じている。

遅延に苦情を言っている人たちには返金を提案しているが、大半は返金を求めていない。ほとんどの人たちが忍耐強く、私たちの作るものを理解し、製品の到着を待つことを選んでいる。当社のFacebookページにコメントしている人の中には、返金を受けた人もいるし、そもそもSCiOコミュニティーに参加したことのない人もいる。

TC: 箱から出したばかりの状態で、何がスキャンできるのか?
DS: SCiOはそのままで、食品や錠剤をスキャンできる。チーズ、ヨーグルト等の乳製品、果物や野菜、鶏、豚、牛その他の肉類等の栄養価を測定できるアプレットもある。市販の錠剤をスキャンすることもできる。トマトの糖度を測って作物選別器として使うこともできる。支援者には他にもいくつかアプリをベータ版として提供している ― 完成品ではないが将来のSCiOを垣間見る基本機能の提供するもので、例えば人間の体脂肪を測るものもある。

加えて、ユーザーはWorkshopというアプリクリエーターを使ってSCiOに「教える」こともできる。異なる物質をスキャンしてボタンを押すと、リアルタイムで機械学習モデルが作られ、その物質を区別できるようになる。これは当社のデベロップメントキットであるSCiO Labの簡易バージョンだ。SCiOを楽しく教育的に使えるようになると、良い反響をもらっている。これによって当初の(限定された)データベース以上に機能が拡張される。

TC: いつ、M&Mを正しくスキャンできるようになるのか?

チョコレートのカカオ成分を測定する以外に、M&M等のお菓子をスキャンする機能を計画したことはない。錠剤アプリはM&Mをスキャンするためのものではなく、 あれはちょっとしたイタズラだった。今の質問はジョークだと理解している。しかし私たちは、消費者や産業の現実的な問題を解決するためのアプリ開発に本気で取り組んでいる。例えば、まだベータ版だが二頭筋をスキャンするだけで体脂肪を測定するアプリもある。Fortune 2000企業数社とも協力して、工業的IoTソリューションを提供するアプリを開発し、農業、石油・ガス、宝石、化粧品、医薬品、等様々な分野で起きている現実的問題を解決しようとしている。

SCiOプラットフォームを使って開発しているデベロッパーも何社がある。

そして、いくつかの家電トップ企業とは、スマート家電に当社のセンサーを内蔵する検討を進めている。時期が来たら詳しい情報を公開するつもりだ。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook