Sidewalk Labsのスマートシティプロジェクトがグーグルに復帰

Alphabetのスマートシティプロジェクトが終了し、Googleが引き継ぐことになった。Sidewalk LabsのCEOであるDan Doctoroff(ダニエル・ドクトロフ)氏は、健康上の理由で退任することを記した書簡で発表した。広報担当者は、Sidewalk LabsのプロダクトはGoogleに組み込まれることを確認したが、AlphabetはCanopy Buildingsを別会社としてスピンアウトさせる予定だという。

「2022年からSidewalkのPebble、Mesa、DelveおよびAffordable ElectrificationのプロダクトはGoogleに加わり、Googleの都市持続可能性プロダクトの中核になります。これらのプロダクトは、Sidewalk Labsの都市プロダクト担当社長Prem Ramaswami(プレム・ラマスワミ)氏と最高技術責任者のCraig Nevill-Manning(クレイグ・ネヴィル-マニング)氏が引き続き担当します。2人はGoogle出身であり、チームは彼らのビジョンの実行を継続し、顧客に奉仕します」とドクトロフ氏は述べている。

Pebbleは縁石や駐車場の管理を目的とした車両センサーシステム、DelveはAIの力を借りて不動産開発を強化することを軸としている。Mesa sensorsは省エネを目的としたセンサー、Affordable Electrificationは家庭のエネルギー管理を目的としたセンサーだ。一方、Canopy Buildingsは「木材や木造建築の自動化された大量工場生産」を目指している。

ドクトロフ氏は6年前にGoogle内でSidewalk Labsを立ち上げ、その後Alphabetの傘下で独立企業になった。2017年10月、Sidewalk Labsはトロントのウォーターフロントにスマートな地域を建設する計画を発表した。Quaysideは、特に配達ロボットや騒音、交通、汚染といったものを管理するためのセンサーを多数導入していたはずだ。

しかし、Sidewalk Labsは2020年5月にプロジェクトを中断した。ドクターフは当時、新型コロナウイルス(COVID-19)による「前例のない経済的な不安」と、その他の妥協しなければならないことから、キーサイドのビジョンはもはや実行不可能であるとされていた。同社は、北米の開発プロジェクトに関するアドバイスも行っていた。

Sidewalk Labsからは、恵まれない地域のヘルスケアの改革を目指すCityblock Health、交通計画の見直しを目指したデータ収集プロジェクトで物議を醸したReplica「テクノロジーを駆使した新しい形のインフラを開拓した」とドクトロフ氏が語るSidewalk Infrastructure Partnersなどの企業がスピンアウトしている。

ドクトロフ氏は、医師からALS(ルー・ゲーリック病)である可能性が高いと判断され、身を引くことになったという。家族と過ごす時間を増やし、この病気と闘うことに専念するとのこと。2010年、ドクトロフ氏は、ALSと診断された父と叔父の死後、ALS研究のための新しい共同アプローチを構築することに焦点を当てた組織を立ち上げている。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者Kris HoltはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(文:Kris Holt、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アルファベット傘下のSidewalk Labsがリアルタイムデータで都市部の駐車スペースを管理するセンサー「Pebble」を発表

Alphabet(アルファベット、Googleの親会社)傘下の都市イノベーション企業であるSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)は、駐車場や路上駐車スペースの空き状況をリアルタイムに提供して都市部の駐車スペース管理を支援する車両センサー「Pebble」を発表した。

Pebbleのシステムは次のようなものだ。駐車スペース(地面)に設置された小さな球状のセンサーが車両の有無を記録する。街頭などに取り付けられた、太陽電池で駆動するゲートウェイハードウェアによって、携帯電話ネットワーク経由でデータがクラウドに送信される。データは不動産開発会社や駐車場運営会社、自治体などがダッシュボードで閲覧・分析できる。

Pebbleは、カメラを使用しないことや、人や車の識別情報を収集しないことで「プライバシーが保護される」という。Sidewalk Labsは1年前に、13億ドル(約1400億円)を投じたトロントのスマートシティ開発をプライバシーの問題で中止して以来、目立った活動はなかった。同社は、大規模な都市インフラプロジェクトをてがけるのではなく、民間企業や公共団体が都市をより良いものにするために利用できる小規模なソリューションに力を注ぐようだ。

関連記事:グーグル子会社スマートシティ開発のSidewalk Labsがトロント事業から撤退

2020年10月、Sidewalk Labsは機械学習を使った設計ツール「Delve」を発表した。Delveでは開発者、建築家、プランナーが都市プロジェクトの最適な設計プランを作成することができる。また、数週間前には、Sidewalk Labsから独立したReplica(レプリカ)が、AIと機械学習を利用して「合成」人口を生成し、その行動を追跡することで現実世界で起こり得るであろうシナリオをシミュレートするデータプラットフォームで、4100万ドルを獲得(シリーズB)した。

ニューヨーク市のMetropolitan Transit Authority(メトロポリタン・トランスポーテーション・オーソリティ)は、パンデミックの際にReplicaを活用して公共交通機関のスケジュールを調整した。現在、新型コロナを克服しつつある米国において、駐車場とモビリティに関わる組織、特に環境的に持続可能な交通の復興計画を展開しようとしている都市は、Pebbleのようなツールを使って駐車スペースの供給を効率的に管理することを検討する可能性がある。

交通量の9~56%とそれにともなう公害は、駐車スペースを探して走り回る車両によって引き起こされている。Pebbleを利用すると、リアルタイムの駐車スペース情報が、APIでGoogleマップなどのナビゲーションアプリに表示することが可能で、このような車両を減らすことに役立つという。

Sidewalk LabsのシニアクリエイティブテクノロジストであるNick Jonas(ニック・ジョナス)氏は、今回の発表を次のようにブログで紹介している。「ユーザーは家を出る前にリアルタイムの駐車スペース情報を見て駐車スペースが限られていることを知り、パーク&ライドやフェリーなどの別の移動手段を利用するかもしれません」「例えばBARTのパーク&ライドステーションにおけるスマートパーキングプログラムでは、運転距離が1人当たり月平均約16km短くなり、通勤時間も短縮されました」。

都市部の路上駐車スペースを監視できるツールがあれば、都市には確実にメリットがあるが、その労力は膨大なものになるだろう。ニューヨークのような都市で、路上駐車のスペースに1つずつセンサーを広く設置することを想像してみて欲しい。個々の駐車スペースを線引きするのが難しいのはいうまでもないが、これはかなり大変な作業だ。Sidewalk Labsによると、すでに顧客と協力して、試験的に数万台の駐車スペースを管理しているとのことだが、この顧客の中に都市が含まれるかどうかについての詳細な情報は得られなかった。

Pebbleを発表したブログ記事の中で、Sidewalk Labsは、想定されるユースケースを説明している。Pebbleを路上駐車スペースに設置する市当局は、Pebbleで得た情報を活用して、アウトドアダイニングなどで利用されそうな場所に路上駐車スペースを割り当てたり、需要と供給に応じて路上駐車の料金を調整する変動価格制などの柔軟なプログラムを適用したりすることで、収益を上げることができる。

さらにSidewalk Labsによれば、不動産開発業者は、需要に見合うだけの駐車スペースがすでにあることを市に証明できれば、駐車ゾーンを共有にしたり、駐車スペースの数を減らしたりすることができるという。

駐車の効率が上がれば、車への依存度が上がるように思えるが、Sidewalk Labsはその逆だという。ジョナス氏は、Pebbleが「車の運転を減らし、新たな駐車場を減らすためのいくつかの方法」で貢献できると述べる。例えば不動産開発業者は、新しい住宅やオフィススペースに一定量の駐車スペースを建設することを求める市の条例に対して、説得力のある反論をするために必要なデータを収集することができる。

「Pebbleは、駐車スペースの需要が既存の駐車場や共有の駐車ゾーンでカバーされていることを証明し、新たな駐車スペースを確保する必要性を減らすことができます」とジョナス氏。また、ユーザーが駐車スペースを探す際に発生する交通量についても、Pebbleは「駐車スペースに直接ナビゲーションできるようにする」ことで「駐車スペースを探して走り回ることで発生する交通渋滞の30%」を軽減することができるとのことだ。

こうしたインフラ面でのメリットに加えて「Pebbleは通勤に車ではなく他の交通手段を選択するような経済的・利便的なインセンティブにも貢献できる」とジョナス氏は指摘する。

「Pebbleは、都市が変動価格制を導入して駐車スペースの『適正価格』を設定し、代替の移動手段を促進することができます」とジョナス氏は述べ、ベイエリアのBARTパイロットの初期データに基づいて「駐車スペースへのナビゲーションとリアルタイムの駐車スペース情報を含むPebbleのデータは、オフィスまで車で行くのではなく、パーク&ライドを使用するように促すこともできる」と続ける。

Sidewalks Labsの主張の多くは、人々が実際にはどのように活動しているのか、どのように都市を移動しているのか、という点に関する既存のデータのギャップや盲点に対処することができれば、都市をより効率的に、効果的に、そして安全に運営することができる、という考察をベースにしている。Pebbleは、駐車スペースの利用状況に関するデータの空白を埋める重要な要素になりそうだ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Sidewalk Labs駐車場Pebble都市

画像クレジット:Sidewalk Labs

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

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Alphabet(アルファベット)のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)からスピンアウトした企業で、次世代のインフラへ資金提供し、インフラを開発・所有する企業であるSidewalk Infrastructure Partners(サイドウォーク・インフラストラクチャー・パートナーズ)が、電力網の効率性と信頼性の向上に焦点を当てる最新のプロジェクトであるResilia(レジリア)を発表した。

Sidewalk Infrastructure Partners(SIP)は、スタートアップのOhmConnect(オームコネクト)への2000万ドル(約21億円)の株式投資と、カリフォルニア州全体でOhmConnectのテクノロジーとサービスを活用するデマンドレスポンスプログラムの開発への8000万ドル(約83億円)のコミットメントを通じて、デマンドレスポンステクノロジーの領域で先行し、全国で安定したエネルギー網を確保するための足がかりとする狙いだ。

「私たちは仮想発電所を作ろうとしています」と、Sidewalk Infrastructure Partnersの共同CEOであるJonathan Winer(ジョナサン・ウィナー)氏はいう。「発電所は典型的にプロジェクトファイナンスによりますが、仮想発電所では基本的にスマートデバイスの展開に助成金を提供します」。

ウィナー氏自身がインタビューで認めたように、人々がグリッドからの信号に応答するという考えは新しいものではない。しかし、Sidewalk Infrastructure PartnersがOhmConnectと並んで、プッシュ通知と支払いの組み合わせにより個人住宅の顧客にインセンティブを展開するために取っているアプローチは斬新だ。「人々が最初に焦点を当てたのは、商業用および工業用の建物です」と同氏は説明する。

SidewalkがOhmConnectのアプローチに引き付けられたのは、OhmConnectの経営陣が持つエンドユーザーに関する知見だった。同社の最高技術責任者はZyngaの元最高技術責任者だったとウィナー氏は指摘した。

「OhmConnectプラットフォームの優れている点は、参加を促進することです」とウィナー氏はいう。「誰でもこのプログラムに登録できます。あなたがOhmConnectユーザーだとします。停電が発生した場合に、その後2時間サーモスタットを止めると5ドル(約520円)がもらえます」

Sidewalk Infrastructure PartnersのResilia発電所のイラスト(画像クレジット:Sidewalk Infrastructure Partners)

サンフランシスコに本拠を置くデマンドレスポンスの会社であるOhmConnectは、すでに同社のプラットフォームに15万人のユーザーを抱える。過去1年間にカリフォルニアの電力網を襲った電圧低下と停電の際、顧客に約100万ドル(約1億円)を支払った。

Resiliaの旗の下でのOhmConnectとSidewalk Infrastructure Partnersの最初のコラボレーションは、2社が「Resi-Station」と呼んでいるものだ。これは、スマートデバイスによりエネルギー削減目標を達成する容量550MWのデマンドレスポンスプログラムだ。

本格稼動の際には、このプロジェクトは世界最大の住宅用仮想発電所になると2社は述べた。

「OhmConnectは、多くの個人消費者の節約分をつなげることで、グリッドへのストレスを軽減し、停電を防ぐことができることを示しました」と、OhmConnectのCEOであるCisco DeVries(シスコ・デブリーズ)氏はいう。「SIPによるこの投資により、数十万人の新たなカリフォルニア州民にエネルギー節約の恩恵をもたらすことができ、同時に将来のスマートエネルギープラットフォームを構築することができます」。

カリフォルニア州の電力会社は、得られる限りすべての助けを必要としている。夏の間、州の過去最高気温に何日か直面したとき、熱波と計画停電が州全体に広がった。カリフォルニア州の住民は、すでに住宅用電力価格としては米国内で最も高い1kWh当たり21セント(約22円)を払っている。全国平均は13セント(約14円)だ。

2020年の初めにストレスがピークに達したとき、OhmConnectは総エネルギー使用量のほぼ1GWhを削減するよう顧客に働きかけた。これは、60万戸を1時間グリッドから外すのと同じだ。

Resiliaプロジェクトが大規模に展開された場合、2社は5GWhのエネルギーを節約できると見積る。これは、2020年の停電によるエネルギー不足全量であり、380万ポンド(約1700トン)の石炭を燃やさないことに相当する。

今後、エネルギーグリッドが集中型電力から分散型・非集中型電源に移行するにつれ、Resiliaのエネルギー効率とデマンドレスポンスプラットフォームが他のインフラのイノベーションも進めると思われる。OhmConnectはそのプラットフォームの不可欠な部分であるように見える。

「以前はエネルギーグリッドは単方向でした。近い将来、グリッドは双方向で応答性が高くなると考えています」とウィナー氏は説明する。「私たちのアプローチでは、投資はこれに限られません。複数の投資を行う可能性があります。ビークルトゥグリッド、マイクログリッドプラットフォーム、ジェネレーティブデザインが重要になります」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Sidewalk Infrastructure Partners電力網Sidewalk Labs

画像クレジット:ArtisticPhoto

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(翻訳:Mizoguchi