スペースマーケットがiOSアプリをリリース、今後はポップアップショップの紹介なども

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昨年4月にサービスを開始した“ビジネス版Airbnb”こと「スペースマーケット」。野球場から映画館、果ては船まで、さまざまなスペースを1時間単位でレンタルし、会議や株主総会、研修、イベントなどに利用できるこのサービスが6月30日、iOS版のアプリをリリースした。App Storeから無料でダウンロードできる。なおAndroid版アプリは今後提供する予定。

アプリでは、レンタルスペースを検索して予約リクエストを送信。アプリ上で決済までを完了できる。設備等の気になる点を質問できるメッセージ機能も用意する。ただし、アプリ経由でのオーナー登録(貸したいスペースを掲載する)の機能は現在実装されておらず、今後対応する予定だという。

取り扱いスペースは3000件に

サービスを運営するスペースマーケット代表取締役社長の重松大輔氏に聞いたところ、取り扱いスペースは現在約3000件。5月にはNPOと提携して群馬県桐生市にある遊休施設のレンタルを開始するなど、“地方創生”関連の案件なども積極的に開拓しているそうだ。

とはいえ、ビジネスの中心になっているのは結婚式場などの大きなスペースで企業の周年イベントや社員総会を開催するといったBtoBの案件。「今ホテルの宴会場を貸し切ると高い価格になるが、平日の式場などは安価に利用できる。我々にも競争力がついてきたので、スペースとの価格交渉もできるようになってきた」(重松氏)

事業面を見るとまだ赤字ながら、売上、利益ともに伸びているという。ただし売上は「季節要因が大きい」(重松氏)。会社行事などが集中する12月や3月、4月などは増加する一方、5月以降は下降ぎみだという。

今後はポップアップショップの紹介も

国内の競合を見渡すと、米「StoreFront」や英「Appear Here」のようにポップアップショップに特化したCOUNTERWORKSの「SHOPCOUNTER」が5月にスタートしているほか、またWiLなどが出資しており、安倍政権の特区構想に準拠するかたちで日本版Airbnb「TOMARERU」を提供する予定の百戦錬磨も、2014年末に「Jambalaya」なるスペースレンタルサービスをひっそりと開始している。古参の「軒先ビジネス」なども健在だ。

重松氏は「CM撮影やイベント開催、ポップアップショップなどはトレンドとして確実に『来る』と思っている。ちょっとしたスペースも、コンセプトを与えてやるとうまく回っている」と説明。今後はより広いニーズに対応していきたいと説明する。すでに同社のオウンドメディア「BEYOND」でも、そんな物件が紹介されていたりする。

スペースマーケット、CAVとみずほキャピタルから約1億円の資金を調達

TechCrunchでもローンチ時からご紹介しているスペースマーケット。最近ではInfinity Venture Pertnersが主催するIVS(Infinity Ventures Summit)のLaunchpadで準優勝、B Dash Venturesが主催するB Dash Campのピッチアリーナで優勝、サイバーエージェント・ベンチャーズ主催のRising Expo 2014でも優勝。さらには僕も運営を少しだけお手伝いしているSkyland VenturesとトーマツベンチャーサポートのイベントであるStartup Pressでも、ジャーナリストの田原総一郎氏が最優秀プレゼンとして選出するなど、国内で開催されるスタートアップのプレゼンコンテストを席巻している。

そんなスペースマーケットが、10月14日サイバーエージェント・ベンチャーズとみずほキャピタルを割当先とした総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回の資金調達をもとに経営基盤の強化を図るとともに、サービスの本格展開に向けて採用を強化していくという。

スペースマーケットでは現在800のスペースを取り扱っているそうだ。最近では東京・新宿のスタジオアルタ、東京都の猿島(同社いわく「初の“島”物件」とのこと)、帆船なども利用できるようになっている。現在もインターン、社員含めて積極的な営業で利用スペースの拡大を進めている。

またシナジーのある事業者と提携を進めているという。一例だが、会社のミーティングのためにスペースを借りたのであれば弁当やケータリングが必要になるが、これをスペースとあわせて予約できるようなサービスを目指すのだそうだ。スペースマーケットではすでに複数社と提携に向けて話をしているとのことで、年内にもサービスが始まる予定だ。


球場やお寺だって借りられる「スペースマーケット」はビジネス向けのAirbnbだ

最近、スタートアップと話すときに聞くのが「Airbnbを(ときにはUberも)を徹底的に研究した」という言葉だ。特に聞くのはCtoCの領域だろうか。フリマ、旅行・アクティビティをはじめとしてあらゆるところでそういった声を聞く。

その中でもっとしっくりきたのが、4月28日にオープンしたスペースマーケットの「スペースマーケット」ではないだろうか。このサービスは、いわば“BtoB向けのAirbnb”だ。企業の持つ遊休スペースや利用時間外のスペースを、会議や株主総会、研修、イベントなど向けに貸し出すためのマーケットプレイスとなる。

当初利用できるのは、都内を中心にした100スペースほど。提供されるスペースは貸し会議室やオフィススペースにとどまらない、青山迎賓館(結婚式場)、ユナイテッド・シネマ豊洲(映画館)、門間箪笥店(古民家)、正蓮寺(お寺)、オバケン(お化け屋敷)、Coca-Cola Park(野球場)など、ユニークスペースが並ぶ。なんと現在は「お城」などもそのラインアップに入れるべく営業活動中だそうだ。

価格はスペースの性質にもよるが、「ホテルなどで会議をすると、平均で20万円程度かかるという資料があったがそれより安価になる」(スペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏)とのことだ。 実際僕がサイトを見たところ、VOYAGE GROUPのオフィス入り口にあるバースペース「AJITO」やフォトクリエイトセミナールームが利用無料で提供されているのにはじまり、1時間数千円の会議スペース、1日利用45万円の「代官山TSUTAYA」、さらには詳細は問い合わせとなっているスペースまでバラエティに富んでいる。なお、利用は最低3時間(スペースによっては1日)からになるという。

当初は、会場の性質や稼働率、運用をどこまでサポートするかなどの条件によって、20〜50%の手数料を取る。今後は広告でのマネタイズなども検討する。年内1000スペース、3年後5000スペースまでの拡大を狙う。また今後はスペース管理やセキュリティ、イベントへのケータリングなど、パートナーと組んでの派生事業も検討する。

“披露宴会場の課題”が起業のきっかけに

代表の重松氏は、NTT東日本に新卒で入社した後、同社の同期でフォトクリエイト代表取締役社長の白砂晃氏に誘われて同社へ。こそで新規事業のほか、広報、人事を担当。新規事業で立ち上げたウェディング事業は、全国で年間約3万組の結婚披露宴(日本全体では25万組程度らしい)で導入されるに至ったという。

実はここに、スペースマーケット創業のきっかけがある。重松氏はウェディング事業を通じて知ったそうだが、披露宴会場は優秀なスタッフがいるものの、披露宴がない場合、特に平日などは遊休スペースとなる。だが本業とは異なる分野で営業をかけ、スペースの利用を促すことは難しい。

また一方で、フォトクリエイトは各種イベントの写真を撮影し、オンラインで販売する事業を展開していたため、スペースの情報にも詳しく、同時にイベントなどで利用するスペース探しに広告代理店などが苦労している様をずっと見てきた。起業自体は以前から考えていたということだが、この2つの点から重松氏はスペースマーケットの企画を始めたのだという。余談だが同氏の妻はサイバーエージェント・ベンチャーズのキャピタリストとして活躍する佐藤真紀子氏。家庭内の会話で事業計画をブラッシュアップしていったそうだ。

「最初はオフィスの『間借り』のマッチングを考えたが、それではマーケットが小さい。Airbnbから発想したが、受け入れられるのは大きいハコではないかと考えた。イベントだけでなく、株主総会や採用説明会などでイベントスペースは求められている。需要が顕在化しているビジネス領域からまずはやっていこうとなった」(重松氏)。海外でも、「Liqudspace」「eventup」といった、スペースを貸し出すマーケットプレイスには注目が集まっている。また国内でも、サムライインキュベートが投資する「軒先.com」などがある。