有料ニューズレターのSubstackがサブスクソーシャルアプリ「Cocoon」のチームを買収

サブスクリプション方式のニューズレターを作れるプラットフォームとして最大のサービスであるSubstackが、同じくサブスクリプション方式で親密な友人たちのためのソーシャルメディアを提供しているCocoonを買収したことを発表した。

TechCrunchはこのY Combinatorで育ったスタートアップが、Lerer Hippeauがリードするシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)を調達した2019年11月に取り上げたことがある。それから間もなくパンデミックがやってきて、互いに親しい者同士がソーシャルメディアでコミュニケーションする方法も激しく変わった。Cocoonの初期の提案は「親友のためのソーシャルネットワーク」というもので、それは前から多くの人がやっていた文章によるグループの、ちょっと高級なものだと考えられていた。しかしながらやがてCocoonは進化して、ユーザーは自由に微調整できるもっとオープンなソーシャルサークルになっていった。ユーザーはアプリでテキストや写真のアップデートを共有できる他、モバイルの位置データやフィットネスの成績など、自動的に更新されるデータを友だち同士のSlackのチャンネル風フィードで共有できるようになった。

アプリの共同創業者であるSachin Monga(サチン・モンガ)氏とAlex Cornell(アレックス・コーネル)氏は、Facebookのプロダクト部門にいたときに出会った。

多くのネットワーキングアプリと違い、Cocoonは広告やユーザーデータを収益源にせず、月額4ドル(約440円)のサブスクリプションをユーザーに押し付けて収益を得ていた。Substackによると、Cocoonは今後も独立して運営されるが、買収したのは立ち上がったばかりのCocoonアプリではなく、小さなチームだという。最近のSubstackは、ニューズレターを書いている人たちのネットワークによるコミュニティ作りに熱心であるため、自らのプラットフォームの機能を進化させるためにより多くの人材を求めていることは驚くことでもない。

3月にこのスタートアップは6億5000万ドル(約715億4000万円)の評価額で6500万ドル(約71億5000万円)のシリーズBを完了した。そもそも最近ではFacebookもTwitterもニューズレターというメディアに関心を示しているため、Substackは今後ますます有望と思われる分野を支えていくに十分なキャッシュを入手できたことになる。実は、Cocoonの前にも小さなスタートアップをいくつか買収している。2021年8月初めにはディベートのプラットフォームLetterを額非公表で買収した。5月には、コミュニティづくりのコンサルタント事業People & Companyを人材取得の目的で買収している。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

個人向けニュースレターサービスのSubstackが地元ジャーナリストに約1億1000万円の資金提供を発表

Substackをめぐる果てしない議論は、全国的に有名なライターに集中しているように見えるが、このニュースレターのプラットフォームは新しいプログラムを通して、地元の(おそらく有名でない)ジャーナリストを支援すると発表した。

Substack Localは100万ドル(約1億1000万円)規模のプログラムで、地元のニュース出版物を作成する独立系ライターに資金を提供すると説明している。Substack Proプログラムと同様に、同社は最大10万ドル(約1100万円)の前払い金を提供するほか、メンターシップ、健康保険やデザインサービスへの「補助的なアクセス」も提供する。その代わり、Substackは年間サブスクリプション売上の85%を受け取る(その後は通常の10%に戻る)。

応募は4月29日までに締め切られ、審査員団によって選ばれた参加者たちはSubstackの出版物を持つ審査員であるInsightのZeynep Tufekci(ザイネップ・トゥフェクチ)氏、Culture StudyのAnne Helen Petersen(アン・ヘレン・ピーターセン)氏、Second Rough DraftのDick Tofel(ディック・トーフル)氏、The DispatchのマネージングエディターであるRachel Larimore(レイチェル・ラリモア)氏たちによって選出される。

Substackによると、このイニシアチブを通じてニュージーランドのStuffと提携し、国内サービスが行き届いていない地域をカバーする2つの新しい出版物をローンチするという。

Substackに懐疑的な人は、このようなプログラムはポジティブな宣伝をするための簡単な方法だというかもしれない(FacebookGoogleもローカルニュースをサポートするプログラムを発表した)。Substackの場合、プラットフォームがトランスジェンダーの作家たちに大きな進歩をもたらしていると批判された後のことだ。ほんの数日前、同社はDaniel Lavery(ダニエル・レイブリー)氏を含むトランスジェンダーの作家たちと、有利な契約を結んだことを明らかにした。

動機が何であれ、多くの地方紙の閉鎖と苦境によってニュースの砂漠が作られ、より多くの地方ジャーナリズムが必要とされているのは事実だ。希望があるとすれば、それはデジタルに特化した新しい出版物や独立系ジャーナリストからもたらされる可能性が高いと思われる。

「これは助成金プログラムでもなければ、慈善事業を意図したものでもありません」と、Substackはブログ記事で述べている。「私たちの目標は、成長の余地を十分に与える独立したローカルニュースのための、効果的なビジネスモデルを育成することです」

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画像クレジット:SuperStock / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:塚本直樹 / Twitter

シリコンバレーに広がる冷笑主義に対抗する方法はSubstack、Clubhouseそしてマイアミ脱出だ

映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」ではないが「それを作れば人はやってくる」というのがスタートアップの信念だ。しかし残念ながら本当に人が来るまでの道のりには、何もかも否定しようとするシニシズム(冷笑主義)が満ちることになる。

今年だけでもテクノロジービジネスでは何百万回ものギャンブルがあった。そうした賭けの一部にはベンチャーキャピタルの投資の決断も含まれていた。また地域を選ぶ賭けもあった。サンフランシスコの未来に賭けるのがいいだろうか?それとも他のテクノロジーハブの成長に賭けるべきか?プロダクトに新機能をリリースするべきか、既存機能のブラッシュアップに時間を割くべきか?今の会社に賭けるか、新しい会社を探すか?

2020年の締めくくりとして、こうした賭けの結果について成績表を作ってみよう。このビジネス全体を通してその未来に熱狂な支持を集めることに成功したのは「メディア、特にオーディオメディア、米国のある有名大都市」の3つだけだった。

具体的にいえば、ニュースレター配信のSubstack、ソーシャルメディアのClubhouse、そして新興テクノロジーハブのマイアミだ。もちろんまだ先物買いではある。どれも夢を実現するまでにはまだまだ距離がある。Substackは、テキストベースのジャーナリズムを再建しようと試みている。Clubhouseは、対話可能な音声ベースのソーシャルプラットフォームとしてラジオを活性化するつもりだ。マイアミはこれまでスタートアップ育成の巨大なエコシステムがなかった場所にもサンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンに匹敵するテクノロジーハブを建設できるという賭けだ。

こうしたオプティミズム(楽観主義)は脅威、失敗、障害の可能性を仔細にいい立てる人々からあらゆる否定を浴びている。

現在のテクノロジー業界を覆う否定的な空気は、パンデミックを筆頭に業界を絶え間なく襲った悪いニュースに疲れたための一時的な倦怠感に過ぎないといいいたいところだ。しかしここに底流するシニシズムは新型コロナウイルスがトレンドトピック入りするはるか以前から業界に深く浸透していた。

今までにないほど、多くのスタートアップが資金を調達している(評価額も上昇を続けている!)し、買収や上場によって「出口」を得たスタートアップの数も2020年12月初めの時点で過去数年間で最高だ。

それでも悲観的分析は根強い。そのほとんどをは、テクノロジー業界を覆うある種の不安から生じている。Substackはテクノロジーの不安とメディアの不安が重なる部分に位置するので特に目立つ。テクノロジー側からの批判は、「あんなものはただのメールサービスだ!」と要約できる。誰もがSubstackのようなサービスならこの10年、誰でも構築できたはずだ。そう思えるだけにSubstackの単純さと巨大な評価額は脅威だ。

事実、もともとのコンセプトが単純なだけにSubstack的な試みは何度もあった。しかし単純さは他の多くの成功した消費者向けスタートアップに共通するDNAだ。なるほどSubstackのテクノロジーの本質は電子メールだ。StripeにCMSエディターをプラスしたメール配信サービスともいえる。有能なエンジニアはコンセプト版でよいなら1日で書ける。ところが誰もやらなかった。そこでスタートアップの世界では疑いと不安が始まる。

メディアの観点からはどうだろう?ニュースも出版も過去数年間はひどい状態だった。当然のことながら、マスコミのシニシズムはひどく強いものとなっている(もともとジャーナリストというのは楽観的なことを口にしない人種だ)。マスコミ側の批判の大部分は「Substackは数年前からあったのにマスコミの崩壊を止めるのに少しも役立たたなかった」と要約される。

そのうちに助けになるかもしれないが、大きな影響を与えるようなサービスが出現するには時間がかかる。スタートしたばかりの企業がマスコミを完全に再構築する可能性さえあると見られるているという事実が、まさにSubstack(や類似のスタートアップ)を賭けるべき対象として魅力あるものにしているのだ。Substackは今すぐに解雇された数万人のジャーナリストに再び職を与えたり、ニュース報道や出版ビジネス内の不平等を是正したり、フェイクニュースを追放したりすることはできない。しかしこのペースで成長し機能の構築が続くとしたら、10年後にはできるかもしれない。

現在すでに完璧でないといって対象を否定するシニシズムは、2020年のスタートアップビジネスに流れる奇妙な動きの1つだ。1人か多くて数人の起業家と少数の社員のスタートアップが、創立初日に完璧なプロダクトをリリースし、欠点が表面化する以前にそれを是正しているなどと期待するのは道理に合わない。スタートアップが提供するプロダクトが過早にもてはやされ、プロダクトの真価を理解している少数が理解しない多数の渦の中に飲み込まれているという方が実際に近いだろう。

このパターンはClubhouseの場合にもはっきりしている。幸いにしてTechCrunchでは、おおむね避けるのに成功してきたシニシズムの側面があらわになっている。Clubhouseは新しいダイナミクスを備えた新しいソーシャルプラットフォームだ。もちろん数年先にどうなっているかは誰に断言はできない。投資家、ユーザーはもちろん、(彼なりのビジョンはあるだろうが)創立したPaul Davison(ポール・デイヴィソン)でさえ確たることはいえないだろう。先週、Clubhouseが主催した「Lion King(ライオン・キング)」のライブミュージカルイベントには数千人が参加した。Clubhouseがそうした存在になるとは誰ひとり予想していなかったはずだ。

SubstackにもClubhouseにも解決すべき課題は多々ある。当然だ。しかし創立後日が浅いスタートアップとしてとしては、市場の地形を探り、プラットフォームにユーザーを引き込むために決定的となる機能を発見し、最終的には成長の方程式を見つけねばならない。コンテンツがユーザー投稿であるということは特に安全性と信頼性における問題を生む。成長の過程で問題を発見しなかったスタートアップなど、これまで設立されていない。重要な質問は「このスタートアップには問題が発見されたときにそれを即座に修正することができるリーダーシップを持っているか?」だ。私の見たところ(現実のお金を投じてはいないが、これも賭けだが)答えはイエスだ。

リーダーシップについて語るならマイアミのFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)市長を抜きにするわけにはいかない。スアレズ市長の「マイアミはスタートアップを手助けする用意がある」というツイートはシリコンバレー信者はの愛好家や根っからの悲観主義者の間に途方ないばかげた騒動を引き起こした。

Keith Rabois(キース・ラボイス)氏をはじめとする何人かのベンチャーキャピタリストや起業家はサンフランシスコから脱出してマイアミに移れというトレンドのパイオニアとなっている。地元のビジネスと連携して、それまでになかったより良いエコシステムを構築しようとしている。ここで賭けられているのは場所だ。スタートアップとテクノロジーのハブをシニシズムに覆われた既存の場所の外に明るく楽観的な場所を見つけることができるという賭けだ。

マイアミに対するシニシズムは、10年前よりもさらに正当化されにくくなっている。サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンとそれらの周辺はもちろん米国のハイテクスタートアップのメッカだ。しかしシアトルはもちろん、この10年でソルトレイク、ポートランド、シカゴ、オースティン、デンバー、フィラデルフィアなどの都市が着々と得点を挙げている。マイアミは550万人が暮らす大都市であり、米国最大の経済圏の1つだ。マイアミも成功するかもしれないと考えるのは的外れではない。改革のきっかけとしては、たとえばラボイス氏のようなベンチャーキャピタリストの移住が十分だったかもしれない。

シニシズムから意味あるものが生まれた例はない。「そんなことできっこない」という態度がスタートアップを作った試しはない。こういうシニシズムへの反発が人を起業家にするきっかけとなったことならあるかもしれない。

意味のあるもの作るには、時間がかかる。最初のプロダクトを手にしてから育て上げてるに時間が必要だ。スタートアップのエコシステムを構築し自立したものにするにももちろん時間がかかる。重要なことは、成功のためには個人の力では不十分だという点だ。人々のチーム、コミュニティとメンバーの並外れた努力が必要だ。未来というのは決定論的に固定されたものではない。努力によって変化する可塑性に富んだ存在だ。賭けの報酬は大きい。我々は後ろ向きにあれこれの問題や欠陥を指摘するのを止めて「どんな未来を作りたいのか?」と自問すべきだろう。私は何に賭けたいのかが一番重要なポイントだ。

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タグ:SubstackClubhouseマイアミ

画像クレジット:John Coletti / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

「無干渉」アプローチでコンテンツ監視を行うニュースプラットフォームのSubstack

コンテンツ監視は2020年の厄介な問題の1つだ。そして私が「厄介な」というのは、その問題に関して議会聴聞会が複数回開かれるという意味だ。中でもTwitter(ツイッター)とFacebook(フェイスブック)はこの件を巡る問題から抜け出すことができていない。問題のあるコンテンツを十分に取り除かなかったという苦情を受ける一方で、会社は検閲をよしとして投稿を削除する表現の自由の敵だと指摘されている。

後者は、右翼指向のTwitter競合サービスであるParlerが存在する唯一の理由と思われる。

ニュースレタープラットフォームのSubstackは、その人気が高まるにつれ、コンテンツ監視に関わる途方もなく困難な問題に直面しつつある。米国時間12月22日、同社は長文のブログ記事を公開し、少しでもそうした懸念の芽を摘めることを願っている。文章には多少の穴もあるが、プラットフォームの表現の自由に対する意気込みの大部分が説明されている。

ほとんどの場合、コンテンツの閲覧に意味はなく、実際、逆効果になることもあると私たちは考えます。厳しい検閲はコンテンツに本来以上の注目を呼び集めることにもなり、同時にコンテンツの作者には、将来の利益と引き換えられる殉教者コンプレックスを与えることもあります。私たちはアイデアの競争を望みます。反対意見と議論は重要だと信じています。私たちは非同調を称賛します。

このスタンスは、Substackがサブスクリプションベースのビジネスモデルにこだわり、現在、TwitterやFacebookなどのサービスを支えている広告モデルとは異なることを反映している。Substackは、ライターの購読売上の10%を手数料として受け取る。これでスポンサー圧力の問題をある程度避けられることは間違いない。サブスクリプションモデルは、ユーザーが個別の記事を自ら選択する必要がある、という意味で、コンテンツ間の境界がはるかに流動的なTwitterやFacebookのようなプラットフォームと大きく異る。

「私たちは『もっと言論コントロールされたSubstack』や『広告のあるSubstack』と喜んで競争します」と同社は書いている。

もちろんそこには経済的事情がある。常にある。Substackは、FacebookとTwitterのやり方を非難してきた右翼と保守の声を支援することに偏った興味を持っている。中でもThe Dispatchは、同サービスの政治関連ランキングのトップにいる。2020年のTechCrunchでのインタビューで編集者のStephen Hayes(スティーブン・ヘイズ)氏は同サービスを「誰はばかることない中道右派」と評し、一方で現在のキャッチコピーは「保守的」だ。

「中立的な意見はありません」とSubstackはいう。「多くのシリコンバレーテック企業は自分のプラットフォームを政治と無縁にしようと努力していますが、そんな目標は達成不可能だと私たちは考えます」。これになんらかの真実があることは間違いない。どんな立場であれ、コンテンツ監視はある程度政治的なものであると見ることができる。そしてどんな検閲であれ、全員を、いやほとんどの人でさえ、100%幸せにすることはできない。

しかし、Substackの人気が高まるにつれ、その無干渉アプローチが大きな試練を迎えることも容易に想像できる。同サービスのアプローチには、消費者の前に自らの名前を出すことが入っているので、個人パブリッシングプラットフォームとしては見られないことになる。

Substackは、それでも一線を越えるコンテンツは当然存在するといい添えた。「もちろん、限界はあります。たとえばSubstackはポルノを許していません。スパムも。私たちは晒し行為やハラスメントを許しません」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Substack

画像クレジット:Substack

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook