Supershipの「Sunnychat」は5秒動画を軸にしたコミュニケーションアプリ

Supership取締役の古川健介氏(左)、Supership代表取締役の森岡康一氏(右)

Supership取締役の古川健介氏(左)、Supership代表取締役の森岡康一氏(右)

コミュニケーションアプリと言えば、テキストやスタンプでのやり取りを思い浮かべるが、Supershipが8月1日にリリースした「Sunnychat」(iOSAndroidでそれぞれ提供)は、1つの動画(もしくは写真)を友人間で共有するところからコミュニケーションをスタートさせるアプリになっている。

アプリを起動してホーム画面にあるムービーアイコンをタップし、動画や写真を撮影し、アプリ上の友人と共有。共有した友人間でテキストチャットやスタンプによるコミュニケーションができるサービス。動画は最大5秒まで撮影可能。友人の追加はFacebookやQRコード、電話帳連携が可能(Androidのみ。iOSでは現状QRコードでしか友人を追加できないようだ)。今後はTwitter連携にも対応する予定だ。

Sunnychatの画面イメージ

Sunnychatの画面イメージ

サービスを担当するのはSupership取締役の古川健介氏。Supershipは2015年9月にKDDIグループ(厳密にはKDDIの子会社であるSyn.ホールディングスの傘下)のスケールアウト、nanapi、ビットセラーの3社が合併して生まれた。古川氏はnanapiの創業者で元代表取締役だ。

ちなみにSyn.ホールディングスでは、「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」というテーマのもと、スマートフォン時代の新ポータル構想「Syn.」を掲げてサービス群のアライアンスを組んでいる。Syn.ホールディングス代表取締役副社長でSupership代表取締役の森岡康一氏は、Sunnychatもこの「繋がり」のテーマに沿った新規事業だと説明する。

古川氏は「テキスト、つまり言語を中心にしたコミュニケーションはネガティブな感情に振れやすい。逆に非言語、動画や写真を軸にしたコミュニケーションはポジティブな感情に振れやすい」と語る(古川氏はチームラボ代表取締役である猪子寿之氏の話としてこれを数年前に語っていた)。

ではポジティブなコミュニケーションを生むにはどうしたらいいか? Sunnychatではまずは動画や画像を投稿することで、それらについてのポジティブなリアクションができるような仕様にしたのだそう。今後はSnapChatSNOWのような顔認識を使ったエフェクト、さらにはARを使ったエフェクトなども導入を検討している。なおKDDIグループのサービスと連携することは現時点では予定しておらず、ユーザーベースを独自に作っていくことを目指すという。また目標ユーザー数などは公開しておらず、マネタイズに関してはまずはユーザーを拡大してから…とのこと。

8月1日にSupership内で開催された会見の質疑では、前述のSnapChatやSNOWのほか、LINEやTwitterなど先行するコミュニケーションサービスとの差別化に関する質問があったが、「いろいろ参考にさせてもらっているが、競合というのは実はあまり考えていない」(古川氏)という。とは言え、ダウンロードして1日、まだ僕の環境(iOS版)では友人招待の方法が限られていることもあって友人があまり居ないので、他のコミュニケーションサービスとの決定的な違いについてはまだちょっとはっきりしていないところもある(例えば動画が自動再生されるので、LINEのように都度ダウンロードして再生するといった手間がない、とかはあるのだけど)。

ところで古川氏といえば、学生時代に受験生向けの電子掲示板「ミルクカフェ」を立ち上げ、また総合電子掲示板「したらば掲示板」を運営(その後ライブドアに売却)した後にリクルートに入社。いくつかのコミュニティサービスを立ち上げた後にnanapi(当時の社名はロケットスタート)を起業。ハウツーメディアの「nanapi」などを提供してきた。会見後、メディアやコミュニティを運営してきた古川氏がどうしてこのサービスを開発したのか尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

「コミュニケーションをメディア化したものがコミュニティだと思う。そしてコミュニティはいろいろと、『キツい』ことがある。知らない人とのコミュニケーションを許容できる人は、実はそういない。オープンなもの(コミュニティ)も考えたが、それよりも多くの人がコミュニケーションできるようなサービスを作りたかった」(古川氏)

Supership、SSP事業「Ad Generation」でスマホネイティブ広告を強化

Facebookオーディエンスネットワークを含むAd Generationのイメージ図

Facebookオーディエンスネットワークを含むAd Generationのイメージ図

2014年10月にKDDIが中心となって立ち上げたモバイルインターネットの新ポータル構想「Syn.」。このSyn.のプロジェクトに参画するKDDI傘下のスケールアウト、nanapi、ビットセラーが合併して立ち上がったのがSupershipだ。

同社ではこれまで3社で展開してきた事業に加えて、新事業の立ち上げを進めている。Syn.のアライアンス拡大も着々と進めているが、サイト上にあるプレスリリースを見ると広告ビジネスの会社の印象が強い。中でも旧・スケールアウトが展開するSSP「Ad Generation」が好調なのだそう。月間広告リクエスト数は160億インプレッション。2015年11月にはFacebookとのパートナー提携も発表。Facebookのオーディエンスネットワークによる広告配信も可能になった。

「サービスの開始は年半前。すでに競合がおり、最後発のサービスだった。だがまだアプリに強いSSPはウェブに比較すると少ない状況。SSPとして自由に使え、透明性の高いモノを無料で提供できるように考えた」—Ad Generationの事業を統括するSupership ジ・アドジェネの池田寛氏はこう語る。

あまりTechCrunchは広告の話題を取り扱ってきていないので改めて説明すると、SSPとはSupply-Side Platformの略称。複数のDSP(Demand-Side Platform:広告在庫の買い付けから配信までを管理する広告主側のツール)やアドネットワークから、メディア(アプリなどの「面」を持つサービスを含めてのメディアという意味だ)にとって最も収益性の高くなる広告を自動で選択・配信するツールを指す。

中の人が「最後発のサービス」と語るとおりで、配信規模で同社を上回る国内SSPはあるが(例えばジーニーの「Geniee SSP」で月間500億インプレッション、VOYAGE GROUPの「Fluct」は月間250億インプレッションをうたっている)、Ad Generationはスマートフォンアプリで導入が盛んだという。時期の詳細は明かされたなかったが、App Storeのランキング上位100アプリの40%がAd Generationを導入しているというケースもあるそうだ。

そんなAd Generationだが、今後はネイティブ広告の配信を強化したいと語る。

「comScoreが発表したレポートによると、84%のユーザーは1カ月に一度もバナーをクリックしないという話があった。またGoogleの発表では、モバイル広告の半数は意図しないクリックだという話もある。スマートフォンユーザーにとって、結局バナー広告は無駄で邪魔なモノでしかない」(池田氏)

とは言え、まだまだすべてのネイティブ広告が洗練されているかというとまた別の話。「記事だと思って読んだら広告だった」ということで媒体価値を落とす可能性もある。そのため、「文字の色を変え、通常の記事とは数ピクセル空けるなど、広告だと一目で分かるレイアウトを用意する。間違えて広告を押してくれるほうが儲かるかも知れないが、真面目にやっていく。広告でも有益な情報であればユーザーは広告を押すし、クライアントの商材価値も上がる。『バナー広告を捨てる』は言い過ぎだが、それくらいの気持ち」(池田氏)

池田氏はこういった取り組みの結果がFacebookとのパートナーシップにも結びついたと語る(なおSupership代表取締役社長の森岡康一氏はFacebook Japanの元副代表だ)。Facebook広告の売り上げは2015年通期で前年比44%増の179億ドル。これは2015年通期で674億ドルのGoogleに次ぐ世界第2位の数字で、急速に売り上げを拡大している。

実際オーディエンスネットワークによる広告は、CTR(クリック率)で国内のアドネットワークと比較して約1.2〜2倍、eCPM(1000ページビューあたりの収益)で約1.5倍程度になるのだという。「オーディエンスターゲティングによってユーザーに最適な広告が配信されているほか、世界約300万社の広告主が配信するため、国内のアドネットワークと比較して広告への興味が摩耗しにくい。またネイティブデザインのため、ユーザーの抵抗が少ない。またオーディエンスターゲティングに基づいた配信のため、広告効果も高い」(Supership)

モバイルポータル「Syn.」参画のスケールアウト・nanapi・ビットセラーが合併、新会社は「Supership」に

supership2014年10月にKDDIが主導して立ち上げたモバイルインターネット向けの新ポータル構想「Syn.」。昨年11月には僕らのイベント「TechCrunch Tokyo 2014」でもその詳細を聞くことができたし、参画企業のサイト・アプリにはSyn.の独自メニューが付くなどしていたのだけれども、発表から1年が経過して1つ大きな動きがあったようだ。

Syn.に参画し、KDDI傘下となっているスケールアウト、nanapi、ビットセラーの3社は、11月1日(予定)を効力発生日として合併することを明らかにした。新会社名は「Supership株式会社」となる。新会社の代表には、KDDIにおけるSyn.構想の立役者であり、Syn.ホールディングスおよびビットセラーの代表取締役を務める森岡康一氏が就任する。

今後は各社で展開していた広告、インターネットサービス、プラットフォーム事業等の事業基盤を活用。「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもとで新サービスを提供するとしている。具体的なサービスについては現時点では明らかにされていない。また、各社で提供するサービスについては、引き続き利用できる。

またSyn.ホールディングスでは同日、あわせてアップベイダー、Socketを子会社化したことも明らかにしている。