遺伝子組み換え作物ではない遺伝子“編集”作物は農務省が規制しないので将来性あり

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遺伝子組み換え作物(GMO)は今、遺伝子編集という新しい技術のおかげで、変わろうとしている。

その最新の例は、CRISPR(クリスパー)を利用して遺伝子を編集した白いボタンマシュルームだ。‘編集’とはこの場合、生物のDNAのパーツを切って並べ替えることだ。

合衆国農務省によると、そのマシュルームは、別の、有害かもしれない、バクテリアのDNAを使っているGMO植物のような危険性がないと思われるので、規制の対象としない。

ペンシルヴェニア州立大学の植物病理学者Yinong Yang博士は、マシュルームのDNAを変えて、酸素に触れても褐変しないようにした。そのコード中の二つの文字を入れ替えただけで、キノコは褐変しにくくなった。

しかし昨年10月に初めて組み換え種を作ったときには、その、遺伝子を変えたマシュルームが農務省の認可を必要とするのではないか、とYang博士は危惧した。

農務省の動植物健康検査サービス(Animal and Plant Health Inspection Service, APHIS)は、アメリカの農業環境を問題のある植物から守る機関で、検査の対象には、バクテリアやウィルスからのドナーDNAを使って植物の病虫害耐性を強化した作物も含まれる。

しかしCRISPRには、従来のGMOにない抜け穴がある。Yang博士はマシュルームに他の生物のDNAをいっさい加えていない。むしろその小変化は、マシュルーム自身の遺伝子で起きている。

CRISPRはかなり新しい技術だが、バイオテクノロジーの分野に新しい生命(いのち)を与え、明らかに規制をめぐる疑問を喚起している。USDAは、自分のDNAを改変した作物を問題視するのだろうか?

過去5年間で30件の、何らかの形で遺伝子編集技術が関わった作物が登場したが、マシュルームはその一つにすぎない。しかしこれまでのところ、答はノーである。

APHISはペンシルヴェニア州立大学宛の4月13日付けの書簡で、マシュルームは確実に規制検討の対象外だ、と確認した。

USDAは次のように声明している: “APHISにはCRISPR/Cas9ホワイトボタンマシュルームが有害植物であると信ずべき理由がない。したがって、同様の質問状に対する前回の応答と同じく、APHISはCRISPR/Cas9により編集されたホワイトボタンマシュルームが、2015年10月30日の貴書簡に記述されているように、連邦規則集第340部により規制されるべきとは見なさない”。

Yang博士は今、彼のマシュルームの企業化の可能性を、思いめぐらしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

全米卵協議会、無卵マヨネーズ代替品 “Just Mayo” のHampton Creekに陰謀を企てた疑い

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American Egg Board[全米卵協議会(AEB)]は、連邦法に反して公的資金を使い、Hampton Creekの卵不使用マヨネーズ代替品 “Just Mayo” の販売を阻止しようとした疑いがある。USDA[米農務省]が調査を開始した。

Hampton CreekはAEBを、Whole Foods食料品チェーンでの販売行為を妨害しようと企てたとして訴え、情報公開法(FOIA)に基づきAEB幹部間で交わされた決定的証拠となる一連のメールを入手した。AEBのCEO Joanne Ivyは、同スタートアップについて「危機的状態であり重大な脅威」と指摘するメールを、AEBのPR会社であるEdelmanに送った。メールには、AEBが危機と認識する状況への対応についてPR会社の協力を求めていることも書かれていた。

やりとりは数年の期間にわたっており、Hampton Creekが最初の製品を発売する前にも遡る。AEBは独立請負人を通じてWhole Foodsと接触し、Hampton Creekの製品を発売前から販売しないよう工作したと見られている。

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「Whole Foodsがわれわれの側についた場合のPR効果を想像してほしい」、とマーケティングディレクターのElisa Malobertiは、2013年12月に他の役員へのメールに嬉々として書いた。結局Whole Foodsは “Just Mayo” を販売した。

このところHampton Creekに好意的に報道はなく、ここで一種の「ダビデ対ゴリアテ」的物語が必要になったように思われる。TechCrunchを含め、多くの人々がこのスタートアップ内のデータとプロセスに疑問を呈している。FDAは最近Hampton Creekに対して、同社が “Just Mayo” 製品を心臓に良くコレステロールを含まないという事実と異なるブランディングを行ったと指摘した。

しかしきな臭い話もある ― AEBはFDAに密告し、定義上マヨネーズではない製品に “myao” と名付けているとHampton Creekを訴えた(そして負けた)Unileverとも手を組んでいた可能性がある。AEBが送ったメールの一通は、Hampton Creekの “Just Mayo” のラベルについてFDAに異議を申し立てており、別の一通にはAEBがUnileverを助ける隠謀について書かれている。

Hampton Creekのファウンダー、Josh TetrickはこれらのメールをThe Guardianに持ち込み、AEBを監督するUSDAに調査を要求した。ユタ州選出のMike Lee上院議院も、報告書を見てUSDAのTom Vilsak長官に調査を依頼した。

「全米卵協議会が、シリコンバレー拠点の食品会社、Hampton Creekの人気菜食主義者向けマヨネーズ代替製品、’Just Mayo’ の市場需要を減少させるキャンペーンを取りまとめるという反競争的行為を犯し、連邦法に違反している疑いがあることがわかった」とLeeはVilsack宛に書いた。

USDAはこれらの申し立ての調査に着手した。同省は、AEBのメールとは距離を置いてきたことをTechCrunch宛のレターで語った。

法律に基づき、USDAはあらゆる研究推進プログラムを監督し、全米卵協議会もその一つだ。USDAの農業マーケティングサービス(AMS)は各団体を日々監視し、会計説明責任、プログラムの完全性、および利害関係者の公正な扱いの保全に務めている。AMSは協議会の大量の資料および議事録を承認しているが、協議会員あるいは事務員、その他USDA職員の全Eメールの内容を事前に承認することはない。

AMSは全米卵協議会に関わる問題について綿密な不服審査を遂行している。そこには大量の資料が関与しているため、AMSは迅速に審査を完了する予定ではあるが、完全な審査にはしばらく時間がかかるだろう。AMSは協議会の人事問題についてはコメントしない。

USDAは農業を強く支援しており、適切な規則の範囲内で製品の宣伝も行い、あらゆる適切な農業活動を保護、推進する公平な環境を確立することに尽力している。AMSは、商業的製品の競争を限定するいかなる行為も許容しない。 ― UADA広報官

一連のメールが一部の怒りを買ったのは間違いない。Josh Tetrickを「消せ」というジョークまで飛びだしたほどだ。

卵協議会のCEOは調査後に辞任した。Ivyは今年末に離職す予定だが、USDAは彼女が早期退職を選んだと説明している。それはUSDA監査が理由なのか? AEBはコメントしていない。質問はすべてUSDAに振り向けられた。

USDAのSam Jones広報官は、Joanne Ivyが早期退職したことしか認めていないが、「理由はよくわからない」と語った。Jonesはさらに、USDAは協議会の人事問題にはコメントしない、と付け加えた。

Hampton Creekの規定違反を指摘しようとするあまり、AEBは自らの規則を踏み外したのかもしれない ― 公的資金についても。卵協議会の設立を認めた法律には、「卵協議会が収集した資金は、いかなる形であれ、政府の方策あるいは行動に影響を与える目的で使ってはならない」と書かれている。

AEBのメールは現在USDAが審査中であり、後日追加情報が得られるはずだとJonesは言っている。情報公開法によって入手されたメール全文はここをクリックすれば読める。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook