ジャック・ドーシー氏が「最初のツイート」をNFTとして売るために使った「Cent」が約3.3億円調達

Centは、ユーザーが良い投稿やコメントに対し報酬を暗号資産で提供し合うことができる広告なしのクリエイターネットワークとして2017年に設立された。これはRedditの表彰に似ているが、イーサリアムを使ったものだ。しかし2020年後半、Centのサンフランシスコを拠点とする小規模なチームは、ツイートのNFT市場であるValuablesを作成し、3月には、この小さなブロックチェーンスタートアップ企業に思いがけずツキが回ってきた。

CEOのCameron Hejazi(キャメロン・ヘジャジ)氏は「ちょうどその日の仕事を終えて、夕食を食べようとしていたら、たくさんの人がメールを送ってきたんです」と振り返る。それから彼は、TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が、CentのValuablesアプリを使ったTwitter史上初のツイートをしたことに気づいた。「私はその夜、ずっと震えていました。チームのみんなで、『よし、戦いに向かおう、やってやるぞ!』と話していました」。

ドーシー氏は結局、290万ドル(約3億1960万円)でNFTを売却し、その収益をGive Directlyによるアフリカの新型コロナウイルス感染症救援対策基金に寄付した。しかしCentにとっては、小さな会社が無料のマーケティングキャンペーンを受け取ったようなものだった。それから約5カ月経った現在、CentはGalaxy Interactive(ギャラクシー・インタラクティブ)、元ディズニー会長のJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)、will.i.am(ウィル・アイ・アム)、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンクス)などの投資家から300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を調達することを発表している。

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Valuablesでは、インターネット上の誰もがすべてのツイートにオファーを出すことができ、それに対し他の人が対抗オファーを出すことが可能だ。ツイートをした人がオファーを受け入れると(Valuablesにログインするには、Twitterアカウントの認証が必要だ)、Centはそのツイートをブロックチェーン上に鋳造し、1対1のNFTを作成する。

NFT自体には、ツイートの文章、作成者のユーザー名、鋳造された時間、作成者のデジタル署名が含まれている。またNFTには、ツイートへのリンクも含まれているが、リンク先のコンテンツはブロックチェーンの範囲外だ。

画像クレジット:Cent

ツイートをNFTとして鋳造することに独自性はなく、Centと同じことを他社が行うことも可能だ。Twitterでも、最近、NFTアートの無料配布を始めたが、Centのように実際のツイートをNFTとして販売しようとはしていない。ヘジャジ氏は、ドーシー氏がセントを起用したことを賛同ととらえている — ドーシー氏自身がTwitterで290万ドル(約3億1960万円)を稼いでいることから、Twitterがセントを締め出すことは難しいと考えている。何と言っても、ドーシー氏はCentを選んだのだ(最初のツイートのスクリーンショットを撮って、その.JPGをNFTとして鋳造し、OpenSeaのようなより大きなNFTプラットフォームに投稿するのではなく)。

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「Twitterの人々と話をしました。私たちは健全な関係を築いていると確信しています」とヘジャジ氏は述べている(Twitter社は、それが事実かどうかについてのコメントや確認を拒否した)。「このアプローチをInstagramやTikTokなどの他のSNSプラットフォームに適用することも考えましたが、特にTwitterに適しているという仮説を立てました。なぜなら、Twitterは会話のプラットフォームであり、暗号資産を扱う人々が実際に生活している場所だからです」。

ヘジャジ氏はCentのシード資金を使い、プラットフォームの構築を続けていきたいと考えている。同社の目標は、クリエイティブな人なら誰でもNFTを使って収入を得られるようにすることだ。そのためには、ユーザーがNFTを簡単に作成できるツールを開発するだけでなく、クリエイターに特化した既存のSNSを充実させることも必要だ。Centに投稿されるコンテンツは、短い投稿ではなく、アートや文章などのクリエイティブな作品が多く、RedditというよりもDeviantArtに近いものがある。これらは、300万ドルのシードラウンドでは高い目標だが、Centのベータ版プラットフォームには、将来性を感じさせる側面がある。

「私たちがSNSに投稿するものには、すでに価値があります。それが広告費に取って代わっているだけで、単一の団体に多くの富が集中しなければならないというようなことはありません。その富を分散させるシステムを目指すことができるのです」とヘジャジ氏はいう。「これらのネットワークは、その存在によって配信を独占しているのです。TwitterのユーザーをCSV形式でダウンロードして、全員にメールを送信するというようなことはできません」。

CentのSNSプラットフォームのスクリーンショット

ヘジャジ氏は、独立した配信リストに加えて、広告付きのインターネットからの脱却を目指している。彼はSubstackの例に言及している。Substackでは、クリエイターが自分のリストを管理することができ、同時にプラットフォームの運営資金は、ニュースレターを購読するためにお金を払ってくれるユーザーから得ているため、広告なしの状態を維持することができる(また、ベンチャーキャピタルのサポートもある)。

しかしCentは、ユーザーが、原則自分の使っているプラットフォームで飛躍する可能性があると思うクリエイターに投資できるという点で、他とは異なる。

ユーザーは投稿を「シード」することができる。シードとは、Centのプラットフォームでクリエイターとして参加しているクリエイターを購読する方法のことだ。シードする側は、月々1ドル(110円)以上の定額料金を支払う。新進気鋭のクリエイターの支援には報酬があり、シードする人は、クリエイターの将来の利益の一部を得ることができる。これは、クリエイターが将来もすばらしいコンテンツを作り続けることに賭けるようなものだ。利益の5%はCentに寄付されるが、残りの95%はクリエイターと過去のシーダー全員で50対50で分配される。このプラットフォームに参加することで、クリエイター同士のネットワークやサポートが可能になるが、Patreonのような他のクリエイター向けプラットフォームでより直接的な収益を得ることもできる。

ユーザーは、投稿をシードするだけでなく、他の人の投稿を「スポット」することもできる。Cent版「いいね!」ボタンだ。「スポット」1つにつき、ユーザーの暗号資産から1セント(約1.1円)に相当する金額が支払われる。Centによれば、他のプラットフォームでは、投稿が1000の「いいね!」を獲得しても、名声獲得の漠然とした感覚しか得られない。しかし、Centでは、ユーザーが1000の「スポット」を獲得すれば、それだけで10ドル(約1100円)になる。しかし、このようなプロジェクトは、十分な数の人々がこのプラットフォームを利用しなければ機能しない。

「Centを立ち上げたときに暗号資産を選んだのは、創造力と暗号資産のアドレスだけでお金を稼げるというアイデアが気に入ったからです」とヘジャジ氏はいう。「時間が経つにつれ、暗号資産を実際に所有し、すぐに使えるようにしている人はほとんどおらず、決済手段としては限りがあることがわかりました。私たちは、Centを使ったクリエイターへの支払いをより簡単にする方法に取り組んでおり、暗号資産を使ったものとそうでないものの両方を検討しています」。

この考え方は、Yatのような他のNFTスタートアップにも通じるものがある。Yatでは「革新的な分散化」モデルの一環として、クレジットカードによる支払いが可能だ。これらの企業が成功するかどうかは、最終的に分散化されたブロックチェーンベースのインターネットに対する一般の人々の支持にかかっている。しかしそれまでは、Centのような企業が、クリエーターがオンラインで報酬を得る方法を再構築するための実験を続けていくことになるだろう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:ジャック・ドーシーTwitterNFTCentValuables資金調達暗号資産SNS

画像クレジット:Cent

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

TwitterのCEOが約3億円でサービス初ツイートを売ったツイートNFTマーケットプレイス「Valuables」とは

米国時間の2021年3月22日、Twitterの共同創設者でCEOを務めるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は最初のツイートのNFTをおよそ291万ドル(約3億1500万円)で販売した。ドーシー氏のツイートによると、その後、販売で得た資金は非営利団体Give Directlyに寄付したという。

このニュースを見て、ツイートのNFTを売買できるマーケットプレイスに興味を持った人もいるのではないだろうか。NFTとは「非代替性トークン」のことで、ツイートをNFTにすることにより、ツイートに固有の価値を与え、売買できるようになる技術のことだ。

ツイートをNFTにすることで、自分のこれまでのツイートを、3億円とはいわずとも、いくらかで売ったり、好きなツイートを買ってコレクションにしたりできるようになる。なので今回、ドーシー氏がツイートの販売に使った、Cent運営のツイートNFTマーケットプレイス「Valuables」について紹介したい。

Valuablesを使うには、まずMetamaskという暗号資産を扱うためのウォレットを設定し、サービスと連携する必要がある。もう少し詳しく説明すると、Metamaskはブラウザの拡張機能として使えるイーサリアムとERC20準拠のトークンを保管するウォレットのことだ。対応ブラウザはGoogle Chrome、Mozilla Firefox、Brave、 Microsoft Edgeで、スマートフォン向けにはiOSとAndroidアプリを提供している。

Metamaskをブラウザにインストールし、ウォレットの設定ができたら、Valuablesのサイトにアクセスし、サービスと連携する。後はTwitterアカウントを連携することでValuablesが利用できるようになる。

ジャック・ドーシー氏のツイートの入札画面

Valuablesのユーザーは、オークション形式で買いたいツイートに入札することができる。入札の締め切りは特になく、ツイートの保有者が入札を承認した時点でツイートのNFTが発行され、売買が成立する仕組みだ。購入したツイートはプロフィールページの「Collected」の一覧に表示される。購入ツイートは再販することも可能だ。

Valuablesユーザーではない人のツイートにも入札することはでき、入札したことはTwitterでツイートすることで保有者に知らせる。入札する際、入札額がValuablesによりエスクローされるため、少なくとも入札額分のイーサリアムをあらかじめウォレットに入れておく必要がある。ツイートの保有者が入札を承認しない場合は、入札後24時間以降からキャンセルできる。キャンセル時にエスクローされた額がウォレットに戻る。

落札額の5%がValuablesの手数料となる。再販の場合は、販売額の87.5%が販売者、10%がツイートの製作者、2.5%がValuablesに分配される。Valuablesの仕組みや使い方はそう複雑ではないものの、残念ながら、今のところ日本語対応はしていない。

2020年12月9日にローンチしたValuables。ローンチ直後から人気を集め、12月19日のCentのブログでは、24時間内の入札数が100以上、入札額は4500ドル(約48万円)を超えたと伝えている。NBAがバスケットボールの試合の1場面をNFTで販売するサイト「TOPSHOT」を立ち上げたり、NFTアートが約75億円で落札されたり、NFTは今最も注目を集めているトピックだ。今回紹介したツイートの売買のように、今後もっと身近なNFTのユースケースも登場してくるかもしれない。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTジャック・ドーシーValuables