Y Combinatorを卒業したばかりのPaperspaceは仮想デスクトップという成熟市場にどうやって食い込むか

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PaperspaceのファウンダーDaniel KobranとDillon Erbは、ふつうのスタートアップなら避けて通りそうな難しい問題に挑戦している。彼らは、成熟市場である仮想デスクトップ市場をディスラプトしたいのだ。そこは、VMware, Citrix, Amazonなど、名の知れた巨人が支配する市場だ。しかしPaperspaceは今日(米国時間10/4)、シード資金にしては大きい400万ドルを獲得して、今後もその夢を追うつもりだ。なお今日は、彼らのプロダクトの一般公開も発表された。

このシードラウンドの投資家は、Ludlow Ventures, Data Collective, Initialized Capitalの三社。ほかに、Digital Oceanの協同ファウンダーJeff Carrなど、数名の個人投資家も参加した。

確立した市場への参入は、容易ではない。しかも仮想デスクトップは、Paperspaceの場合もそうだが、自前のデータセンターを持たなければならない場合が多い。しかしY Combinator2015冬季出身のKobranとErbは、そんなことではめげない。既存の競合製品をたくさん試した結果彼らは、どれもインストールとメンテナンスが難しすぎる、そして遅すぎて大きな仕事はできない、と結論した。

仮想デスクトップはユーザー企業の社員たちに、彼らが必要とするすべてのツールを、机上専有面積の小さなマシンから提供する。それらのデスクトップのコントロールとセキュリティと管理は、企業のIT部門が担当する。デスクトップのそういう一元管理は、金融、保健医療、教育など、規制の厳しい業界ではとくに重要だ。

Paperspaceは、そんな仮想デスクトップの概念をさらに一歩進めて、ブラウザー上で動き、どんなデバイスにもコンテンツをストリームするサービスを作り上げた。しかも、十分なセキュリティと管理性がありながら、それまでの仮想デスクトップ製品と違って、導入したらすぐに使える、簡単な製品に仕立てた。マシンをクローンしたり、既存のVPNにそれらを統合したり、既存のActive Directoryを使う、といったセットアップ作業も、簡易なサービスとして提供されるのでITの負担は少ない。大企業のユーザーは、ワンクリックバックアップ、モニタリング、カスタムテンプレート、共有ドライブ、などの周辺サービスも利用できるが、いずれもボタン一つで使える簡便さだ。

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アニメーション提供: Paperspace

これらのサービスやツールはすべて、クラウドから提供される。AWSにもクラウド仮想デスクトップの時間貸しサービスがあるが、しかしPaperspaceの連中に言わせると、それらのサービスですら技術的に難しくて、しかもAWSの使用という別の負担も生じる。Paperspaceなら、社内に技術に詳しい社員がいなくても、誰もがすぐに、自分の机上で仮想デスクトップを使えるようになる、と彼らは主張する。

しかしPaperspaceのように仮想デスクトップをブラウザー上で提供するということは、いわばブラウザーの中で仮想マシン(VM)が動くことだ。そこで、導入の単純性とともに必要なのが、スピードだ。そこで、ブラウザー上の各VMに(クラウド上で)専用のGPUを割り当ててスピードを確保する。それによりユーザーは、相当複雑なタスクでも快調にこなせるようになる。

二人のファウンダーは前職がシステム設計のアーキテクチャ担当で、その職場で仮想デスクトップの重要性を十分に認識した。しかしそういうローカルな仮想デスクトップシステムは、大きなファイルや複雑なプログラムを扱うには非力だった。

しかしPaperspaceは、彼らの前の会社がやっていた複雑なCADだけがターゲットではなく、金融サービスや教育、法律、保健医療など、どんな分野の企業や組織でも仮想デスクトップを利用できる。お望みなら、ゲームもOKだ。

クラウドサービスを提供するのに自前のデータセンターを必要とするスタートアップは、いまどき珍しい。しかし彼らが望む仮想デスクトップのパフォーマンスは、既存のクラウドプラットホームのVMインスタンスでは無理だった。そこで彼らは、カリフォルニアとニューヨークの二箇所にデータセンターを立ち上げた。それが通常のやり方ではないことを十分に承知している彼らは、その道の経験者である、クラウドIaaSのベンダーDigital OceanのJeff Carrなどに助言を仰いだ。自前のデータセンターを必要とするビジネスについて、いろいろ教えてくれる経験者たちだ。

そしてKobranとErbによると、Carrらのアドバイスも非常に助かったけれども、Y Combinatorでの経験も大きい。“Y Combinatorがなければ、できなかっただろう。あそこには、とても強力なお助けネットワークがあるからね”、とKorbanは述べる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

VMwareが仮想デスクトップ製品の現代化のために多様なアップデート、低コスト化と顧客の自由度向上

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VMwareが今日(米国時間8/29)、ラスベガスで行われたVMworldで、同社の仮想デスクトップ(virtual desktop, VDI)製品群の一連のアップデートを発表した。

その発表は、同社の仮想デスクトップの現代化のために、顧客にクラウドやオンプレミスやハイブリッドの環境で、さまざまなオプションを提供することをねらっている。また、HPやDell、それに超低コストのRaspberry Piさえも含めた、さまざまなハードウェアベンダとのパートナーシップによって、費用を下げようとしている。さらにIBMとのパートナーシップにより、仮想デスクトップのクラウドバージョンをIBMのインフラストラクチャサービスSoftlayerからも提供する。

同社によると、今回のアップデートでデプロイのスピードの問題が解決し、そのためにより効率的なリソースプールを仮想デスクトップに供給できることになった。これによりデプロイメントがより迅速になり、安定感のあるデスクトップが提供され、朝の最初のタスクのようなピーク時にも安定的な利用ができるようになった。

VMwareはさらに、システムをタブレットでも十分使えるようにチューンナップした。これにより社員たちは、iPadなどから仮想シェル上の自分の仕事にアクセスできる。

仮想デスクトップは前から、容易な管理と強力なセキュリティが売りだったが、その謳い文句に対する市場の乗りは、未だにいまいちである。それは、社員たちにリソース満載のPCを与えることをやめて、安価なダムターミナルを与え、仕事に必要なツールとリソースだけをそこに載せる、という考え方だ。

それはメインフレームとダムターミナルという構造の再来だが、ただし高価なメインフレームではなく、一般市販の安価な、そして使いやすい、PCのネットワークにリソースのプールを設ける。

しかしこの方式では、朝の8時半に全社員がコンピューターの電源を入れると、ネットワークとリソースプールの負荷が急増する。身軽なPCをエンドユーザーが使うという点ではクラウドも仮想デスクトップの同じ利点を提供するが、クラウドの方がVDIsのコントロールとセキュリティが強化される、という説がある。デスクトップはシフトが替わる夜になると空になり、社員はもはやオープンなインターネット上にいない(会社のクラウドにアクセスしていない)からだ。

仮想デスクトップはエンタープライズのPCデプロイメントの8%に達している、という数字がある。5年前に言われた30%より、ずっと低い。今仮想デスクトップは、金融や教育など、コンピューティング環境に対するより堅固なコントロールを求める分野で、ニッチ的に利用されている。

この市場に最初に参入したのが、VMwareとCitrix(およびその他)だ。ほかに、Microsoft, HP, Dell, Red Hatや、そのほかの伝統的なエンタープライズコンピューティング企業も主要な選手たちだ。AWSもネイティブのクラウドバージョンAmazon WorkSpacesを提供しており、最近はその、時間制の課金方式を発表した

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GoogleのクラウドプラットホームはプリエンプティブルVMの料金を最大33%値下げ

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これまでGoogle, AmazonそしてMicrosoftの三社は、クラウドコンピューティングの値下げ競争に邁進してきたが、このところようやく、沈静化したようだ。しかし今日(米国時間8/9)は、Googleがまた新たな爆弾を投げ込み、同社のプリエンプティブル仮想マシン(preemptible virtual machines)の料金を最大で33%値下げした。

プリエンプティブルVMは、AWSのスポットインスタンスのGoogle版で(Microsoft Azureにはまだ相当タイプがない)、Googleに先買権のあるリソース、言い換えるとGoogleにとってそれが遊休リソースである間はユーザーに安く使わせてあげるよ、というVMだ。GoogleやAmazonは、このやり方でリソースの利用率を常時高めたいのだが、彼らのシステムサイドの需要が混み合ってくるとユーザーは、通常のプールのユーザーへと自動的に‘格上げ’され、料金も上がる。

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Amazonはこれらの遊休VMをオークション方式でユーザーに提供するが、Googleの方式では定価制だ。それでも、同社の通常のVM提供物に比べると最大で80%ぐらい安くなる。

Googleのプラットホーム上では、これらのVMは最大で24時間しか使えないから、どんなワークロードにも使えるわけではない(AWSではスポットの入札価格が上がるまで使える)。でも柔軟性のあるワークロードなら、このタイプのVMを使ってかなりの節約ができる。

GoogleのプロダクトマネージャーMichael Basilyanが、今日の発表声明で書いている: “顧客はプリエンプティブルVMを使って、データの分析やムービーのレンダリング、衛星画像の処理、遺伝子データの分析、金融市場の理解、メディアのコード変換、さまざまなビジネスやエンジニアリングタスクの完遂、などを行っている。プリエンプティブルVMの値下げによって、コンピューティングの機会がさらに広がり、科学やビジネスの分野における興味深い問題への挑戦が可能になる、と信じている”。

運が良ければ、Googleの今日の値下げに刺激されて、Amazonも値下げを行うかもしれない。

ところで、プリエンプティブルマシンに向かないワークロードを抱えている方は、Googleが新しく設けた“VM Rightsizing Recommendations”(VM適正サイズ推奨)を検討してみてはいかがだろうか。このツールはユーザーのVM利用状況を分析して、ニーズに合った最適のスケールアップやダウンを推奨する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))