旅先の体験もAIが提案、「AVA Travel」が楽天グループの「Voyagin」と連携

AI旅行提案サービス「AVA Travel(アバトラベル)」を運営するAVA Intelligence(アバインテリジェンス)は2月18日、楽天グループのVoyagin(ボヤジン)が運営する現地アクティビティの予約サービス「Voyagin」との連携を開始した。

AVA Travelは2019年8月にベータ版としてリリースされた、AIを活用した旅行サービスだ。ユーザーへの質問をもとに、性格や旅行に求めることを判断し、おすすめの旅行先を提案する。2019年12月には、ホテル・航空券の予約サービス「エクスペディア」と連携。AVA Travel内で航空券やホテルの検索・閲覧が可能となったほか、AIがユーザーに合わせて、ホテルをおすすめ順で表示する機能も搭載した。

一方のVoyaginは、アジアを中心に、世界200都市以上のツアー、チケット、レストランなどの旅行体験を予約することができるサービスだ。2012年末にスタートしたこのサービスは、2015年7月、買収により楽天グループに参入している。今回の連携により、AVA Travelでは、旅行の行き先やホテルだけでなく、現地でユーザーが楽しめそうなアクティビティについても、AIが提案できるようになった。

旅行先でのアクティビティをホテル・航空券の情報とあわせて提供し、予約できるサービスとしては、老舗の「TripAdvisor」などもある。AVA Travelの場合は、自分が旅行で重視するポイントが買い物なのか、食事なのか、はたまた歴史的建造物の見学なのか、といったところを勘案して、行き先候補も含めてプランが提案され、予約できる点が面白いところだろう。

ズボラ旅 by こころから」なども、旅行先での体験を重視し、行先の提案から宿泊先、交通手段まで案内してくれるところは、AVA Travelと似ている。ズボラ旅では、チャットを通じた相談で旅行にまつわる面倒さを解決しようとしているが、AVA Travelでは最初のステップはAIが担い、行き先候補や体験すべきアクティビティをある程度絞り込んだ上で、後半はユーザーが選ぶ形を採っている。

現在、AVA Travelが対応している旅行先は海外のみだが、AVA Intelligence代表取締役の宮崎祐一氏は、今春にも国内旅行の提案サービスを展開していく予定だと述べている。また国内のアクティビティ予約サービスとの連携についても検討を進めているということだった。地域の歴史ガイドや、文化を体験するツアーなど、同じ国内でも普段なかなか知ることのできない日本を、改めて知る機会になるなら楽しみだ。

「資金も溶かした、美しいだけじゃ食えない」アクティビティ予約のVoyaginが楽天に買収されるまで

楽天は7月2日、CtoC型のアクティビティー(旅行体験)予約サイト「Voyagin(ボヤジン)」を運営するVoyagin Pte. Ltd.の株式の過半数を取得したと発表した。株式取得の価格は非公開。買収に関してはすでに翻訳記事も出ているが、Voyaginのリリースから間もない頃から話を聞いている高橋氏に、今の心境を語ってもらった。

「インバウンド対応を強化」を狙う楽天

Voyaginは現地の魅力を紹介したい個人(ホスト)がアクティビティーを
企画してサイトに登録。それを旅行者(ゲスト)に販売できるCtoC型のアクティビティー予約サービスだ。

サービスは現在、日本語のほか、英語、中国語(簡体字・繁体字)で展開。日本のほか、インドネシアやインド、ベトナムなどアジアを中心に50以上の国と地域で約1700のアクティビティーを提供している。現地の個人ならではの文化体験や隠れスポットへのツアーなど、多種多少なアクティビティが並ぶ。

楽天では今回の買収の理由について、旅行予約サービス「楽天トラベル」との連携、LCCを中心にした国際線の増便や東南アジアから日本へのビザ要件の緩和、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなどでの訪日旅行者の増加を期待。訪日外国人向け事業(インバウンド)を強化する狙いがあると説明する。

Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏

Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏

Voyagin(当時の社名はエンターテイメント・キック)では、2011年8月にVoyaginの前身となるインバウンド特化のアクティビティー予約サイト「Find JPN(ファインドジャパン)」をスタート。2012年12月からはVoyaginとしてサービスを展開している。

デジタルガレージグループのOpen Network Labが展開する起業家育成プログラムの「Seed Accelerator Program」の3期生(Find JPNとして)、6期生(Voyaginとして)にも選ばれている。

4000万円を溶かして得た気付き

「今だから語れるが、全然運営がうまくいかなかった。調達した4000万円を溶かしても成果が出なかった」——Voyagin代表取締役CEOの高橋理志氏は、こう過去を振り返る。同社は2012年3月にデジタルガレージから資金を調達。Voyaginのサービスを開発してきたが、サービスは鳴かず飛ばずという状況だった。

「失敗は一気にアジア8カ国に展開したこと。自分たちでは『こうやればうまくいく』という思い込みだけがあって焦りがなかった。自分だけじゃなくてみんな苦しいから創業期より『地獄』だった」(高橋氏)——3人いる役員の報酬は10カ月ストップした。さらに資金が尽きる前にブリッジの調達(次の調達ラウンドの手前に「つなぎ」の資金を調達すること)を行おうとするも、そんな状況の同社に出資するベンチャーキャピタルはいなかった。

そんなとき、シンガポール政府が関わるベンチャー支援プログラムが発表される。高橋氏は英語が話せることから、資金を調達してサービスを継続できるならと、支援の条件に合わせて法人をシンガポールに移した(これが現在のVoyagin Pte. Ltd.)。

全部自前の商品でなくていい

無事シンガポールで資金を調達したVoyagin。「最初はCtoCをやりたかった」と語る高橋氏だが、その方向を転換。「売れるものを売る」と考え、BtoCでさまざまなアクティビティを仕入れはじめる。例えば東京・新宿にあるアミューズメント施設「ロボットレストラン」もその1つだ。実は現在、オンライン予約の10%はVoyagin経由なのだという。

「言ってみれば個人の購入代行だが、『外国人が来るときに必要なモノを全部提供する』という方向に転換すると、サービスが当たりだした」——高橋氏は振り返る。「訪日旅行者ならロボットレストランくらいは知っているもの。VoyaginはSEO強いので、旅行者が検索してサイトにやってくる。そのページにランディングさせれば、他のアクティビティも買ってくれる」(高橋氏)。Voyaginの売上は非公開だが、予約は月間数千件程度だという。

高橋氏はVoyaginを「セブン-イレブンでいい」と例えて語る。サプライヤーの商品もあればプライベートブランドの商品もある。どちらがいいかではなく、その2つでユーザーのニーズをすべてかなえるのが大事だと。

「BtoCをやらなかったのはくだらないプライドだった。もともとやりたかったのは『Airbnb』だから、法人のセールスを手伝う必要はないと思っていた。でも会社がバリューを出すことで、旅行者に貢献しているのであればそんなプライドは必要なかった。当たり前の話だけど、自分が作りたいモノだではなくて、お客が欲しいモノを提供しないといけない。美しいだけじゃ食えません(笑)」(高橋氏)

実はこのあたり、いろいろ考えることがある。僕は「CtoCでアクティビティを提供する」とうたうサービスをこれまでいくつか見てきたが、なかなか苦戦しているように見えるところが多いからだ。

中にはサービスを売却した事例もあるが、それは金額や条件面でハッピーだったというよりは「手放さざるをえなかった」というような起業家もいる。また一方では競合サービスとしてVoyaginを名指しして、「彼らはBtoCに走ったが我々は違う」と語る起業家もいる。前者は現在新しい環境で活躍していると聞くし、後者は自分たちで魅力ある商品を提供して欲しいと思って応援しているが、アクティビティ予約は送客して1割2割の金額を手数料として得るビジネスだ。いかに成約件数を増やすかというのが大事なので、高橋氏の言う「美しいだけじゃ食えない」という言葉は重い。

東京オリンピックに向けてサービスを拡充

同社が勝負をかけるのはもちろん東京オリンピックの開催される2020年だ。「今後は楽天グループとして、そこに向けて最速でいいプロダクトを作るのが重要。すでに楽天トラベルは多言語対応もやっており、連携はいろいろと考えられる」(高橋氏)。インバウンド対応に関しては、アクティビティにかかわらず、交通やホテル、スキー場の予約など幅広くサービス展開したいと語る。

今後も高橋氏はVoyaginのメンバーを牽引していくという。「プライドを捨ててまで伸ばしてここまで来た。乗りかかった船なので最後までやりたい」(高橋氏)

楽天、東京の一風変わった旅行サイト、Voyaginを買収

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楽天は、日本最大のEコマースサイトを運営するだけでなく、同国最大級のオンライン旅行代理店として、毎月380万件の宿泊を取扱っている。

このたび同社は、東京拠点のツアー計画スタートアップ、Voyaginを買収し、その視野をホテルとフライトからさらに広げようとしている。

契約の金銭条件は公表されていないが、Voyaginの共同ファウンダー、高橋理志氏とTushar Khandelwalは、楽天はキャッシュで支払い、現在50%以上の株式を保有していると語った。本誌は、同社が2012年末にスタートした数ヵ月後にVoyaginを紹介した。旅行者に、地元住民主催の一風変わった旅を提供するサービスだ。

現在同サイトには、1800以上のアクティビティーが掲載され、この一年間で3万人以上の旅行者にサービスを提供した。主な市場は東京、京都、沖縄,およびバリだが、Voyaginは、その他の東南アジアおよび中国にも拡大する計画だ。

Voyaginは、楽天の旅行カタログを増やし、現在国内が殆どのユーザーを海外からも多く呼び寄せる手助けをする。Voyaginの従業員は13名だが、今回の資金でエンジニリング、セールス、および運営チームの強化を行う計画だ。

Voyagin

日本への旅行は、最近の円安および中国、タイ、マレーシア、イントネシア、ベトナムに対するのザ政策緩和によってブームとなっている。去る4月、約180万人の外国旅行者が日本を訪れ、これは対前年比43.3%増だった。この数字は、さらに速く成長することが見込まれる。日本が2020年に東京オリンピックを控えているためだ。

サイトは今後も別ブランドとして運営されるが、Khandelwalは、楽天の他の旅行部門との統合に取り組んでいると話した。

「楽天は既に日本最大のOTA[オンライン旅行代理店]だが、OTAとしてあらゆる分野をカバーしたいと考えている。既にフライトとホテルを提供しており、Voyaginによってこの分野の最後の1マイルをカバーすることが可能になる」とKhandelwalは言った。「楽天はアジアでもOTAの拡大に興味を持っている。われわれは既に旅行とアクティビティーのアジア拠点プラットフォームへの旅をスタートしているので、楽天の拡大に役立つことができる」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

東京の旅行サイトVoyaginはアジア各国の‘常軌を逸した旅’をご提供する

海外旅行をする人たちの多くは、言葉の問題さえなければもっと意外性のある旅をしたいなぁ、なんて思う。しかし、旅先でのちょっと変わった行動メニューを取りそろえている旅行サイトVoyaginは、アジアの5つの国、日本、インド、インドネシア、タイ、ベトナムを、もっと親密感を伴って見てもらおうという企画を温めている。東京で去年の12月に立ち上がったばかりのスタートアップだが、今年はこの企画の対象になる国をもっと増やすつもりでいる。

以前はFindJPNという名前だった同社は、これまで45万ドルの資金を調達している。日本のインキュベータOpen Network Labで育ち、Digital Garageなどからシード資金を獲得した。

このWebサイトは、25歳から50歳までの旅行者で、バックパッカー派あるいはぜいたく旅行派を対象とし、中でもとくに、パッケージツアーはつまらない、という人たちをねらっている。

“そういう方たちは、食べ物と文化と、ふつうの観光旅行とは違うメニューを求めておられます”、同社のマーケティングとコミュニティ担当Tushar Khandelwalはそう言う。

各日の行動メニューのことを同社は‘体験’と呼んでいるが、それらはツアーガイドではなく地元の住民たちが仕切る。たとえば東京では、派手なコスプレ衣裳の女性に耳掃除をしてもらう、という不可思議な体験をする。チェンマイでは銀細工によるアクセサリの作り方という美術工芸技術を学ぶ。その国の庶民の生活を体験する企画としては、日本の都市の横町ナイトライフとか、ムンバイで洗濯男と弁当運び屋男に会うといった企画がある(弁当運び屋)。

地元住民が自分の企画をVoyaginに持ち込むこともできる。登録は無料で、Voyaginが自慢して語るところによると、これらのホストたちの90%には実際に面接をしている。今およそ400の企画が載っており、利用客が現れたら同社が15%のマージンと3ドルのサービス料を取る。

それぞれの体験企画の詳細が、英語で提供されている(所要時間と料金も)。 Khandelwalによると、同社の目標は、こういう風変わりな提供メニューをもっともっと増やすことだ。現在の月間ユニークビジター数は約8000で、一日に数件の予約がある。今月は客数が倍増したそうだ。好調である。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))