家具小売のWayfairのアプリに写真を利用したAR機能などが登場

家具小売のWayfairは、購入前の顧客が家具類を家に置いたらどうなるかを視覚化して確かめられるようにAR技術をいち早く取り入れてきた。米国時間11月13日、同社はARによる視覚化の機能を強化した。顧客が現実の店舗で買い物をしていて自分の部屋の写真を撮れない時でもARを利用できる。

これは「インタラクティブフォト」という機能で、買い物客は自分の部屋の写真を撮っておくと、家にいない時でもその写真の中に複数の商品を視覚化できる。この機能自体は、写真から部屋の空間の情報を把握してARのような体験を得る技術を使っている。

この機能のほかに、今回のアップデートではカメラツールがアプリのエクスペリエンスにもっと生かされるようになった。Amazonアプリで検索フィールドの横にあるカメラのアイコンをタップしたときと同じことがWayfairのアプリでもできる。カメラベースの機能であるビジュアル検索とARの「室内で表示」はスワイプ操作で切り替えることができ、このAR機能の中に前述のインタラクティブフォトも含まれる。

Wayfairのモバイルショッピングアプリには、室内デザインツールの「Room Planner 3D」も登場した。買い物客はこのツールでインタラクティブな3Dの室内を作り、レイアウトやスタイル、部屋の大きさなどを変えながら、あらゆる角度から見ることができる。

このアップデートは、Amazonが今年1月に「Showroom」というビジュアルショッピング体験の提供を開始したのに追随するものだ。AmazonのShowroomでは、オンラインやモバイルで購入するユーザーが、壁の色やフローリング、カーペットなどを設定したバーチャルルームに家具や装飾品を配置できる。

Wayfairのプロダクトマネジメント、エクスペリエンスデザイン、アナリティクス担当バイスプレジデントのMatt Zisow(マット・ジソウ)氏は発表の中で「Wayfairアプリの最新版では、高度なARと機械学習機能を反復し、革新的な空間認識技術をeコマースの体験に取り入れることで、できることの範囲をさらに広げ、想像と現実のギャップを埋めた」と述べている。

Wayfairはつい先ごろ、第三四半期の収支報告を発表したばかりだった。それによると同社の1株あたりの損失は2.33ドル(調整後。約253円)で、予想の2.10ドル(約228円)よりも大きい損失となった。ただし売上は前年同期比より35%多い23億ドル(約2500億円)で、予想の22億7000万ドル(約2470億円)を上回った。同社は損失について「関税による短期的な逆風」によるものとしている。

年末のショッピングシーズンがヒートアップする中、Wayfairは消費者がアプリをアップデートしたくなるような魅力的な機能をアピールして、買い物をしてもらわなくてはならない。何と言っても昨年のブラックフライデーに、米国でのスマートフォンからの売上は21億ドル(約2280億円)に達したのだ。

新しいWayfairアプリはiOS版とAndroid版が公開されているが、インタラクティブフォト、カメラ、Room Planner 3Dといった新機能はiOS版のみで利用できる(訳注:本稿公開時点でこのアプリは日本では配信されていない)。

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(翻訳:Kaori Koyama)

Amazon以後のeコマースでも10億ドルビジネスは作れる―家具・インテリア通販のWayfairの成功の秘密

eコマースの分野でAmazonの向こうを張ろうとうするのは無駄な試みに思える。しかしそれでもこの分野でAmazon以後に10億ドルのビジネスを作ることに成功した会社はいくつか存在する。ボストンに本拠を置く比較的無名の企業、Wayfairがその一つだ。

Wayfairは2002年に大学の同級生Niraj ShahとSteve Conineによって操業された。当初の名前はCSN Storesだったが、2011年の現在のWayfairに改められた。ShahとConineは連続起業家で、1998年に最初の会社SpinnersをXMLに売却することに成功している。

ShahとConineの会社のすごいところは家具・インテリアその他家庭用品のオンライン通販という競争の激しい分野で着実に10億ドルのビジネスを作り上げ、来年か再来年の株式上場を準備するところまで来たことだ。

Wayfairは高級品志向ではなく、ミッドレンジの商品をターゲットにしている。つまりMacy、Overstocks、Target、Bed Bath and Beyondsといった名だたるライバルがひしめく市場だ。さらにOne Kings Lane(高級インテリア用品のフラッシュセールス)、Joss & Main(高級家具)などもWayfair.comのライバルだ。

私の取材に対してShahが説明したところでは、同社は派手なマスコミ向けPRはできるだけ控えてきたという。最近では初期のTwitterへの投資で知られるSpark CapitalやBattery Ventures、HarbourVest Partners、Great Hill Partnersなどの有力な投資家がWayfairを支援しているが、それ以前の9年間はほとんど自己資金でまかなってきた。2011年にWayfairは外部資金を調達して事業拡大を加速することを決め、上記の投資家から2億ドルを集めた。

Wayfairのサイトには8000の供給会社による1万2000のブランドの700万アイテムの家庭用品と家具が登録されている。2013年の実績は注文ベースで10億ドル、売上で9億ドルを記録した。これは2012年の6億ドルからの大幅なアップだ。

Wayfairはユーザーが関心を持ったアイテムPinterest風に貼り付けられるクリップボードなどユーザーの購買意欲をかきたてるような仕組みを数多く用意している。実際、Wayfairは300人のデータサイエンティストとエンジニアを雇ってユーザーデータを解析し、サイトをそれぞれのユーザーにマッチさたカスタマイズを行っている。TargetやWalmartなどの伝統的企業も最近、ユーザー別カスタマイズのテクノロジーの重要性にやっと気づいて模索を始めているようだ。

アメリカの家具、インテリアその他の家庭用品市場は2000億ドルで、そのうちオンラインでの売上はわずか5%に過ぎない。他の分野同様にオンライン化が進めばWayfairのビジネスもそれにつれて拡大されるだろう。ShahによればWayfairはオンラインの家具、家庭用品市場の約1%のシェアを握っているという。AmazonもQuidsiの買収などによってこの分野に力を入れ始めているが、Shahは十分に競争していけると自信を見せた。

Shahはeコマースにおいて、家具インテリア、宝飾、ファッションといった分野では1社の一人勝ちが不可能だと考えている。本や家電、エレクトロニクス製品、生鮮食品などの分野と違い、家具や宝飾、ファッション分野ではユーザーはそれぞれに独自性を求めているからだ。

Shahは株式上場を計画していることを明言しており、最近Warner Music Groupの会長、Michael FleisherをCFOとしてスカウトした。

この分野の数多くのライバルもテクノロジーの積極的な利用などによってシェアの拡大を図るだろうから、2014年には競争は一層激化するだろう。Wayfairの今後には引き続き注目していきたい。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+