フィンテック企業のベンチャーキャピタルFinch Capitalが破産したWiecardのトルコ子会社を買収

ロンドンとアムステルダムに拠点を置くフィンテック企業のアーリーステージベンチャーキャピタルであるFinch Capitalは、破産したドイツのフィンテックであるWirecardの子会社Wirecard Turkeyを買収する。条件は明かされておらず、規制当局の承認を受ける必要があるが、Finchはアイルランドで登録されたNomu Payという新しい企業を設立する。

Wirecardは巨額の会計スキャンダルに直面し、自社のローンの支払いが滞ったため、2020年破産した。それ以来、同社の事業のさまざまな部分が買収されており、その中には英国のRailsbankが買収した最大の資産であるWiecard Solutionsも含まれている。

Finch CapitalのRadboud Vlaar(ラドバッド・ブラール)マネージングパートナーによると、Noma Payの大きな計画はトルコと中東地域の決済インフラに投資することだ。新会社の戦略やブランドについての詳細は、取引が正式に終了した後に説明するとしている。

ブラール氏は次のように説明している。「私達は8000万人のトルコの住民への支払いをさらに強化するため、大きな成長の機会を見出しています。当社はSerkan Yasin(セルカン・ヤシン)CEOが率いるWirecard Turkeyと提携できることをうれしく思うとともに、当社は成長と開発を加速させるため、この地域でさらなるM&Aの機会を積極的に探し続けています」。

Wirecard Turkey(Wirecard Ödeme ve Elektronik Para Hizmetleri A.Ş.)は2008年7月にトルコで設立され、翌年には同国初の「ダイレクトキャリアビリング」サービスプロバイダーとして事業を開始した。2014年にはWirecard AGの子会社であるWirecard Issuing & Acquiring Gmbhに完全に買収されている。

現在、Wirecard Turkeyはダイレクトキャリアビリング、クレジットカードアクワイヤリング、電子マネーという、さまざまな決済サービスを提供している。同社はトルコのGSM事業者3社や銀行の大半、および1200以上の加盟店と契約している。

「トルコには一流の次世代決済会社を作るすばらしい才能があります」 と、ブラール氏は付け加えている。

関連記事
ソフトバンク本体が出資の独フィンテック企業Wirecardが破産申請、不正会計で債務超過
ソフトバンクがリード出資した破産フィンテック企業Wirecardの英国事業をVisa出資のRailsbankが買収へ

カテゴリー:フィンテック
タグ:Finch CapitalWirecard買収トルコ

画像クレジット:Finch Capital

原文へ

(文:Steve O’Hear、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ソフトバンクがリード出資した破産フィンテック企業Wirecardの英国事業をVisa出資のRailsbankが買収へ

Wirecard(ワイヤーカード)に新たな一章が開かれたようだ。ドイツの不名誉なフィンテック企業は巨額の会計スキャンダルに直面し、その後15億ドル(約1580億円)の借入金の支払いが滞り今年初めに破産した。

APIを通じて金融・銀行サービスを提供する英国のスタートアップであり、Visa(ビザ)などが投資する(未訳記事)しているRailsbank(レイルズバンク)はWirecard Card Solutions(ワイヤーカードソリューションズ)の買収で合意した。英国事業にはカードテクノロジーと関連資産、既存のクライアントビジネスと従業員が含まれる。

取引条件は明らかにされていないが、Wirecardの広報担当者によると、取引は11月に完了する予定で、Wiredcardの事業の重要な部分を占めると語った。

Wirecardはドイツで上場しており、ソフトバンクなどが主導した資金調達ラウンド後に190億ドル(約2兆円)もの金額で評価(未訳記事)された。同社の衰退の物語は、「演技」が終わりを迎え数カ月経った後でも、詳細とともに注目(Financial Times記事)された。

Wirecard Card Solutions自体の事業規模も巨大であり、欧州のフィンテック業界と強いつながりがある。そのサービスには、カスタマイズされたカードプロダクト、デビットカード、プリペイドカード、クレジットカードが含まれる。欧州最大のプリペイド発行会社の1つであり、Monzo、FairFX、Revolut、Transferwise、Uaccount、Soldo、Pockitにもサービスを提供している。

興味深いことに、資料で見る限りRailsbankの方が事業規模は随分小さいようだ。Nigel Verdon(ナイジェル・バードン)氏とClive Mitchell(クリブ・ミッチェル)氏が共同で創業した同社は、PitchBookのデータによると、これまで約1700万ドル(約18億円)を調達(Pictbookデータ)し、穏当なバリュエーションを保っている。以上から推察するに、Wirecard Card Solutionsの買収対価はキャッシュではなく株式だったのではないだろうか。

注目すべきは、Wirecard Acquiring&Issuing GmbHと、ドイツの親会社であるWirecard AGグループの一部が、Wirecard Card Solutionsの一部の株式を引き続き保有する点だ。

「会社の将来を計画する上での重要な優先事項の1つは、大切な顧客が可能な限り最高の結果を得ることだ。Railsbankへの資産売却の提案を含むソルベント・ワインドダウン(リストラ計画)の実効により優先事項の主要部分を達成できると思う」とWirecard Card SolutionsのマネージングディレクターであるTom Jennings(トム・ジェニングス)氏は声明で述べた。

「プログラムマネージャーが我々の提案をサポートしてくれた。すべての関係者のためにポジティブに前進できれば良い。この移行を可能な限りシームレスに行えるように支援してくれた顧客と、MastercardとVisaの継続的なサポートに感謝する」

RailsbankのCEOであるバードン氏は声明で、「Wirecard Card Solutionsと合意に至ったことを喜んでいる。取引の過程で積極的に協力してくれたチームにも感謝する」と述べた。「結局のところ、顧客とチームの要望に応えることが我々の優先事項だ。Railsbankチームは、顧客、プログラムマネージャー、チームメンバーが新しい家にシームレスに移動できるように誠実に取り組んでいく」

Wirecardのディストレストアセット(再生企業の株式や資産)の取得にRailsbankが関心を持っていることが初めて報じられたのは先週だ(sifted記事)。その後、同社は転落するWirecardの後援者候補として浮上した。手数料なしで現地通貨で決済できるカードをユーザーに提供する「仮想通貨フレンドリー」なWirex(ワイレックス)は今週初め、カード発行サービスをWirecardからRailsbankへ切り替えると発表した

Railsbankは、すでに英国、EU、米国、シンガポールで約50種類のカードプログラムを運営しており、Wirecardの事業引き継ぎに向けたインフラは整っていると述べた。

Railsbankがこの点を強調することに驚きはない。移行のタイミングは契約の中で重要な部分だ。今回の買収はWirecardの将来に関するこの数カ月の憶測を締めくくる。Wirecardがどん底に至る前には、フィンテックの顧客やパートナーに加え、オリンパス、Getty Images、Orange、KLMといった法人顧客を抱えていた。

しかし、WirecardにはAdyen、FirstData、WorldPay、Stripe、Railscardなど同じ分野で法人向け決済、カード発行、銀行・金融サービスを提供する多くの強力な競争相手がおり、顧客が逃げる前にどこかに買収・統合してもらうことができるかが大きな課題だった。

画像クレジット:Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンク本体が出資の独フィンテック企業Wirecardが破産申請、不正会計で債務超過

不正会計が疑われているドイツの決済サービス企業であるWirecard(ワイヤーカード)の信用は完全に失墜した。ドイツ時間6月25日、同社は「切迫した破産と債務超過」のために、ドイツ法人Wirecard AGがミュンヘン地方裁判所に破産手続きを申請すると発表(Wirecardリリース)した。6月30日が支払い期限となっている8億ユーロ(約960億円)と7月1日が期限の5億ユーロ(約600億円)の貸付金について貸し手側との協議がまとまらず、同社は「事業継続能力は保証されない」とする声明も出した(Wirecardリリース)。

同社はまた「暫定破産のもとでの再建を望む」とも述べた。一方で、Wirecard  Bank AGは申請には含まれていない。「BaFin(金融サービス監視当局)はすでにWirecard Bank AGの特別担当を指名した。今後は、Wirecard Bankの全決済の発表プロセスはグループレベルではなく同行内で行われる」。

Wirecardの破綻は、同社の債務返済期限が迫っているという状況に加えて、新型コロナウイルスのパンデミックのために全世界が不況に直面している中でのものだ。パンデミックは多くの産業に連鎖反応を引き起こした。一部の企業は繁盛していても、その他の企業は事業を完全に停止したり、事業を縮小したりしていて、これは決済手数料で稼ぐというビジネスモデルを取っている企業に直接的な影響をもたらす。

ソフトバンクからの出資を受けている上場企業のWirecardは、Wirecard Groupの子会社にも破産手続きを適用すべきか決めかねている。Wirecardはオンラインと店頭での決済サービスをドイツ国外の小売事業者に提供している。直近ではメキシコに子会社(Wirecardリリース)を設立し、そのほか28都市にオフィスを置いている。

上場しているドイツ証券取引所での同社の株価は6月25日、前日の下げに続いて77%近く急落し、時価総額は3億5000万ドル(約375億円)となった。Enron(エンロン)と同じ構図の破綻だ。ソフトバンクが昨年10億ドル(約1070億円)を出資した当時、Wirecardのバリュエーションは190億ドル(約2兆365億円)ほどだった。

破綻のニュースは残念だが驚くものではない。同社監査人のErnst & Youngが21億ドル(約2250億円)もの不明金に気付き、その後、前CEOのMarkus Braun(マークス・ブラウン)氏が詐欺容疑で逮捕されるなど、かなり激動の週となっている。

先週以前から同社に注意を払っていた人なら、ここ数カ月の動きも思い出すかもしれない。KPMGが主導し、4月に公開された別の調査(Wirecardリリース)では「バランスシートを操作したという告発を裏付ける証拠は見つからなかった」と結論づけている。

Wirecardは、大損となっているソフトバンクの数多くの投資案件の1つだ。テックと投資の日本の大企業ソフトバンクは2019年4月にWirecardに10億ドルを投じた(未訳記事)。

トラブル続きのWeWorkやUberを含め、うまくいっていない他の案件と異なり、Wirecardへの投資はビジョンファンドではなく、ソフトバンクグループからのものだった。Uberは、未公開企業だったときにソフトバンクや他の企業から期待されたバリュエーションを上場後も達成できていない。

Wirecardは損失や経営状況をオフセットすることができず、破綻することとなった。同社は数多くの顧客を抱えており、Olympus(オリンパス)、Getty Images(ゲッティ・イメージズ)、 Orange(オレンジ)、KLM(オランダ航空)などが含まれている。

画像クレジット: Christof STACHE/AFP / Getty Images

関連記事:独フィンテック企業Wirecardの前CEOが詐欺容疑で逮捕、約2240億円が不明に

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi