「アニメとコミックとゲーム」好きのためのバーチャルソーシャルアプリ「MEW」が米国でコミックファンを魅了

MEWの北京のオフィス。社員たちはアニメとコミックとゲーム(ACG)のファン

Raven Gao(レイヴン・ガオ)氏は、メタバースの波に乗るために「MEW」というバーチャルのソーシャルプラットフォームをつくったのではなかった。彼はTencentにいた人と一緒に、2019年半ばにMEWを作り始めたが、それは彼自身のような、人付き合いがヘタで内向的な者のための、バーチャルな安息所を作りたかったからだ。

MEWのインターフェースを初めて見た人は、戸惑うかもしれない。しかしこのアプリ独特の言葉遣いやグラフィクスは、「アニメと漫画とゲーム(ACG)」好きたちのサブカルチャーに明確にアピールするものだ、とガオ氏はいう。キュートなアニメ風の画像と柔らかい色遣いがアプリを飾り、コマンドボタンの言葉はACGファンにとっておなじみの用語だ。たとえば「signup」(ユーザー登録をする)ではなくて「create your traveling file(あなたの旅のファイルを作る)」となっている。ユーザーは、他のユーザーが管理しているDiscordに似たデザインの「本拠地」と呼ばれる関心別のハブで対話をする。MEWという名称は「Members of the Excellent World(すばらしい世界の仲間たち)」の略だが、ファンタジー好きたちの仲間意識が溢れている。

MEWの最初のバージョンは2020年の半ばにローンチされ、その広がりは今でも大きくはない。毎日のアクティブユーザーは数万人だが、滞在時間は平均100分間と長い。ゲームや映画やアニメなど、自分の関心のハブに住み着くことになるが、自己改善やフットボールなど、作品の固有名詞ではなく普遍的な話題もある。

シリコンバレーのMakers Fundが2020年初めにガオ氏に関心を示したが、当時中国の投資家たちの多くは、この創業者のことをTencentのような大手がすでに支配する業界で新たなソーシャルネットワークを作ろうとしている「変人」だと考えていた。2021年にはメタバースが米国でも中国でもブームになり、MEWの親会社であるTrophにも、突然自国の投資家たちが殺到した。

Trophは2021年末に、中国の5Y CapitalとZoo Capitalから資金を調達し、資金の調達総額が1000万ドル(約11億7000万円)ほどになったが、同社はこれまで資金の額を発表していない。

MEWアプリのスクリーンショット

現在、バーチャルな世界とメタバースを作るというスタートアップが氾濫している。しかしながら、それらの一部はリアル世界を模倣する、バターを使ったソーシャルプラットフォームであるにすぎない。そして、それら以外は少しソーシャルな部分があるゲームにすぎないとガオ氏はいう。

対照的にMEWでは、自分のオンラインにおける分身を誠実、正直かつ快適に生きることが求められる。

共同創業者のQiang Li(チャン・リ)氏は、中国のPC時代に最も人気のあったソーシャルネットワークであるTencentのQQに5年間在籍し、メッセンジャーのiPad版のフロントエンドチームを率いていた。現在でもQQは、ゲーム化された機能を多く持ち、中国の若者の間で大きな人気を誇っている。

MEWはまだマネタイズを始めていないが、ガオ氏は、広告やサブスクリプションや寄付といった従来のソーシャルネットワークにおける一般的な収益化のではない方法をとりたいと考えている。ユーザーを巻き込み、収入を共有するような方法が彼の狙いだ。

「ユーザーが私たちのプロダクトに貢献できて、報酬をシェアできる方式を探求したい」とガオ氏いう。

そのようなインセンティブの仕組みとして、当然ブロックチェーンがその候補として思い浮かぶが、ガオ氏によると、短期的にはコインの発行やブロックチェーンの採用はしないという。

Trophの2022年における目標は米国進出で、中国と同じく、ゲームやアニメのファンの心を捉えたいとのこと。現在、中国に約30名のスタッフがいるが、米国のスタッフは現地で精力的に雇いたいという。

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。