「宇宙のガソリンスタンド」を目指すスタートアップOrbit Fabがシードラウンドで6.2億円を調達

TC Disrupt 2019にて衛星カップリングシステムを披露するOrbit Fabの最高開発責任者Jeremy Schiel (ジェレミー・シール)氏

「宇宙のガソリンステーション」の構築に特化した企業を自称する、軌道上でのサービス提供を目指すスタートアップOrbit Fab(オービット・ファブ)は、シード投資ラウンドに新たな投資者を迎えた。この追加拡張投資は、Munich Re Ventures(ミューニック・リー・ベンチャーズ、世界最大クラスの保険会社ミュンヘン再保険グループのコーポレートベンチャー投資部門)によるものだ。Munich Reグループは、特に衛星運用者には非常に重要な保険会社であり、打ち上げ前、打ち上げ時、軌道上の運用をカバーする保険商品を提供している。

2019年TechCrunch Disruptバトルフィールドの最終選考まで勝ち残った経験のあるOrbit Fabのシステムは、基本的には、宇宙船を軌道上の給油所まで誘導する宇宙タグボートで成り立つ。給油所には、同社が注文に応じて製作するインターフェイスを使って接続できる。新しく衛星を設計する際に、比較的簡単に組み込めるようデザインされており、キャプチャーやドッキングのための特別なロボットシステムなどを必要とせず、宇宙空間で簡単に燃料補給ができる。

このスタートアップの目標は、宇宙船の寿命を延ばして宇宙デブリを減らし、運用者の経費を削減することで、持続可能な軌道上の商用運用環境の構築を助けることだ。Munich Re Venturesの参加は、衛星運用者の打ち上げと運用のリスクモデルに持続可能性が高く運用期間が長い宇宙船を組み込めるという点で、極めて大きな前進となるずだ。

「推進剤のサプライチェーンの立ち上げを見てみると、その大部分は財務モデルです」と、Orbit Fabの共同創設者でCEOのDaniel Faber(ダニエル・ファーバー)氏はインタビューで私に話した。「顧客のリスクを移動し、設備投資を運営費用に確実に移動し、それでいて新たなリスクを招かないようにするには、これをどう使えばよいのか。そのすべてを、Munich Reの財務商品、保険とリスクの評価に任せることができます。なのでこれは、大変に意味深いパートナーシップなのです」。

ファーバー氏は続けて、Munich Re Ventures のTimur Davis(ティムア・デイビス)氏が宇宙関連のカンファレンスによく顔を出すようになり、そうしたイベントでファーバー氏は彼と言葉を交わすようになったと話した。それがやがて、宇宙でのサービスと基盤整備を見すえたMunich Re Venturesの投資計画に発展し、Orbit Fabはその新計画を背景とした最初の投資先となったわけだ。

この新規投資によって、Orbit Fabのシード投資ラウンドの総額は600万ドル(約6億2000万円)に達した。この中には、ベンチャー投資企業からのものに加えて、米国政府からの200万〜300万ドル(約2億6000万〜3億9000万円)の資金援助も含まれている。同社はまた、新たにドッキングのための「自動運転衛星」キットを着想し研究を行っている。これには、米国立科学財団から予備的な要求開発のための資金を獲得し、現在、その設計製造に着手できる段階に至っている。2021年は、宇宙産業の新企業にとっては大きな年となる。持続可能で規模の拡張が可能な衛星運用というアプローチを掲げるOrbit Fabも、間違いなくその中の1つだ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Orbit Fab人工衛星保険持続可能性

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)