【コラム】アダルト系SNS「OnlyFans」の性的コンテンツ禁止でクリエイターは「権利章典」について語り出す

性的に露骨なコンテンツを禁止するというOnlyFansの決定に端を発して、テック企業、コンテンツガイドライン、セックスワークをめぐる重要で見過ごされがちな会話が再燃している。しかし、こうした議論の意味するところは、1つのプラットフォームと1つの周縁化されたグループだけにとどまらない。

これは、クリエイターがコンテンツを共有してフォロワーやファンと関わることを可能にする方法に対して、プラットフォームが巨大なコントロール権を有しているという、コンテンツクリエイターにとっての壊れたエコシステムを示唆している。これに対応して、クリエイターたちは分散化し、複数のプラットフォームへのリーチを広げ、オーディエンスを引き連れている。

そうすることで、クリエイターは、これらのプラットフォームにどのような権利を組み込みたいかを定義する機会も得ている。

歴史は繰り返す

クリエイターが個々のプラットフォームから締め出されるのは目新しい話ではない。OnlyFansのポリシー変更について、2018年にTumblrがアダルトコンテンツを禁止した動きと比較する向きがあるが、これはYouTubeにとっても継続的な問題であり、LGBTQユーチューバーのグループを含むいくつかのコミュニティは、プラットフォームが彼らを非収益化アルゴリズムで標的にしていると非難している。

OnlyFansを含むこれらのプラットフォームの多くは、特定の種類のコンテンツを許可する際の障壁として支払いパートナーのポリシーを挙げている。この領域における主要な論争として最も初期のものは、PayPalが2010年にWikiLeaksを禁止した時に見られた。

こうした事象はいずれもクリエイターとフォロワーの怒りを買ったが、それはエコシステム全体の問題を示唆するものであり、必ずしもプラットフォーム自体を非難するものではない。

結局のところ、これらのプラットフォームは、クリエイターがオーディエンスを構築し、ファンと関わる機会を提供してきたのである。しかし一方で、これらのプラットフォームは、規制上のリスクや評判上のリスクから自らを守るためのポリシーを整備する必要もあった。

これは、すべてのガイドラインやポリシーが悪いということではない。それらは思慮深いガイドラインの下で、ポジティブで安全なコミュニティを醸成し、管理する役割を果たしている。しかし、これらのプラットフォームをコンテンツとエンゲージメントで活性化するクリエイターに損害を与え、彼らをプラットフォームから切り離すという犠牲を払うべきではない。問題の核心は、クリエイターが個々のプラットフォームに依存しており、ポリシーの変更に対して常に脆弱で、プラットフォーム間のオーディエンスと収益化の移行という痛みをともなう作業を余儀なくされることにある。

そして最終的には、有意義なコンテンツを作成し、コミュニティと関わり、信頼できる生計を得る能力が失われてしまう。

クリエイターのプラットフォームに対するコントロール力がますます失われていく中、一部のクリエイターたちは、オーディエンスからの独立した直接的な収益化を分散した方法によって可能にする、代替的な選択肢を模索し始めている。

分散化、収益化

ファンから直接収益化するモデルは、クリエイターたちが長年頼りにしてきた従来の広告ベースのプラットフォーム主導モデルをすでに置き換えつつある。筆者はPatreonに在籍していた時、コントロールとオーナーシップをクリエイターの手に委ねることで、より持続可能で、公正で、活気のあるクリエイターエコノミーが構築される様子を目にした。Substackはライターにも同様に強力な金融ツールを提供しており、クリエイターに奉仕する企業がここ数年にわたって増え続けている。

課題は、これらの企業の多くが、過去のプラットフォームを無力にした既存のシステムに依存しながら、テイクレート(手数料などの割合)と収益配分が必要なビジネスモデルを持っていることである。多くの点で、クリエイターエコノミーは、クリエイターとファンのインタラクションの次の段階を構築するために、新しいインフラストラクチャとビジネスモデルを必要としている。

適切なアプリケーションであれば、暗号資産により、クリエイターがどのように収益化し、ファンと関わり、プラットフォームとパートナーを組むかについてのプレイブックを書き換えることができる。そのピア・ツー・ピアの構造は、ファンとの直接の関係を反映するものであり、クリエイターは、テック大手や支払いパートナーを仲介者として頼ることなく、オーディエンスとの金銭的関係を持つことができる。さらに暗号資産は、クリエイターが所有権を維持し、ブランドや知的財産を管理することを可能にする。

加えて多くの暗号資産プロジェクトでは、DAOやガバナンストークンを通じて、参加者がプロジェクトにおける価値提案、戦略的方向性、運用機能、経済構造について発言権を持つことができる。このようにして、クリエイターはプロジェクトに参加し、コミュニティとの関わり方に合わせて方向性を決めることができる。

クリエイターは、自らのコミュニティを動機づけ、関与させる能力を備えており、コミュニティ主導のプロジェクトから利益を得る立場にある。私たちは暗号資産のアダプションの初期フェーズにあり、クリエイターにはこのパラダイムシフトの未来を形作る巨大な機会がもたらされている。ソーシャルトークンを使えば、クリエイターは自分の暗号資産をマイニングすることができ、クリエイターとファンが共に成長し、異なるプラットフォーム間で直接取引するために利用できる共有エコノミーが実現する。

別のカテゴリーとしてNFTが存在するが、2021年に入って爆発的な人気を集めているものの、今のところ業界はNFTが持つであろう有用性の表面をなでているにすぎない。クリエイターたちと暗号資産プロジェクトは、NFTをコレクティブル以上のものにする方法を模索している。つまり、NFTが提供するエンゲージメントの高い機能的なデジタルツールにより、クリエイターはファンに(ビデオ通話やAMAを通じて)自分の時間を提供したり、その他の独占的なメリットをもたらすことができる。

クリエイターたちは、暗号資産がもたらす力を見出そうとしている。暗号ベースのプラットフォームのユーザーエクスペリエンスがより直感的になるにつれて、暗号資産はどこにでも存在するようになる。その前段階として、クリエイターたちは、自らが利用している分散型サービスにどのような権利が必要か(そして要求できるか)について考えるべきであろう。

クリエイターの権利章典

暗号資産の中であるかどうかにかかわらず、クリエイターたちはついに自分たちの権利を決定する力を手にした。筆者は、クリエイターこそがこの会話をリードすべきだと考えているが、ここでいくつかのポイントを挙げておこうと思う。

  • プラットフォーム間を自由に移動する能力:個々のプラットフォームへの依存は、クリエイターが直面する多くの問題の中心的なものである。クリエイターがどこへでもファンを連れて行けるようにすることで、ファンからの直接収益化においても見られてきたような、多くの問題を解決することができる。
  • クリエイターとファンの直接的な金銭的関係:OnlyFansの問題の中心にあるのは、クリエイターがファンとの金銭的関係を持つことができなくなることである。たとえ直接的な金銭的関係がすべてのプラットフォームで実現可能ではないとしても、クリエイターはそうした関係を所有し、自らの条件を決定するための選択肢を持つべきである。
  • クリエイター主導の意思決定:これまでプラットフォームは、クリエイターに対し、プラットフォーム全体の意思決定とポリシーに関する最小限のコントロールしか与えてこなかった。クリエイターは直接的なインプットを持つべきであり、プラットフォーム全体のさまざまな施策について投票することさえできるべきである。
  • 量よりも質:プラットフォームとそのアルゴリズムは、量に報いるために構造化されており、クリエイターを燃え尽きさせ、コンテンツ作成を超高速化する。クリエイターとファンの両方が、より深く、エンゲージメントの高いインタラクションを求めており、この行動を奨励することで、より活気のある、持続可能なクリエイターエコシステムが実現するだろう。
  • 低い(あるいはゼロの)テイクレート:大手テック企業は収益のほぼ100%をクリエイターから得ている。クリエイター(とそのファン)は、プラットフォーム収益の大部分を得るべきである。
  • 公正性へのアクセスや収益の分配:大手テック企業はクリエイターの労働力を利用して帝国を築いてきた。分散型プラットフォームは、クリエイターに広告収入の支払いを命じるのではなく、クリエイターがパイの一部を完全に所有したり、エコシステム全体の成長から利益を得たりすることによって、真の「skin in the game(個人的な関与 / 自らの能力や資産を投資すること)」をクリエイターが備えることを可能にするべきである。この利害関係の整合は、今日見られる資本と労働の分離からの大きな転換となるだろう。
  • 透明性とコンサルテーション:クリエイターは、自分たちに何ができるのか、何ができないのかを完全に把握し、ポリシーが策定され適応されていく中で、議論の席に座るべきである。プラットフォームのコンテンツモデレーションの決定や、非収益化の背後にあるアルゴリズムは、しばしば不透明で、広く適用され、インパクトを与えるクリエイターに相談することなく決定される。また、全体的な収益のパイの大きさとシェアを把握する必要もある。
  • 改良と再生の能力:私たちはみんな人間であり、クリエイターはプラットフォームによって設定されたガイドラインを知らず知らずのうちに逸脱することがあるかもしれない。クリエイターが自らのコンテンツを回復させるためのスペースを作ることで、クリエイターとプラットフォームの間に、より信頼性の高い協力関係が生まれる。

私たちは、クリエイターたちに自らの条件を決定することを委ねたいと思う。彼らはあまりにも長い間この会話から締め出されている。それでも、RallyをはじめとするWeb 3.0エコシステムの主要な参加者の多くは、クリエイターとそのファンのために機能する環境を作るためのこの取り組みを、オープンにサポートしてくれると筆者は確信している。

編集部注:本稿の執筆者Bremner Morris(ブレムナー・モリス)は、クリエイターやアーティストが独自のデジタル通貨を立ち上げ、ファンコミュニティとともに持続可能な独立した経済を構築することを可能にする暗号プラットフォームRallyのCMO/CRO。以前は、Patreonのグローバル・ゴー・トゥ・マーケットおよび収益部門の責任者を務めていた。

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画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Bremner Morris、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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