デルタ航空が生体認証による手荷物預けを開始、TSA PreCheckと提携で

米国時間10月27日、デルタ航空は、TSA(米国運輸保安庁)PreCheck(プレチェック)との提携によって、バイオメトリクス(生体認証)の利用を拡大し、乗客が顔を見せるだけで手荷物を預け、保安検査を通り、飛行機に乗ることができるようにすることを発表した。最も新しいサービスであるPreCheckのバッグドロップ(手荷物預け)が行われているのは、現段階ではアトランタ空港のみで、デルタ航空のマイレージプログラム「スカイマイル」の会員でTSA PreCheckにも登録している利用客を対象とした試験的なものだ。


このプロジェクトは、デルタ航空がハブ空港であるデトロイトやアトランタ空港の国際線で行ってきた作業をベースに、さらに発展させたものだ。そこに、顔認証を利用したバッグドロップも可能にしたのが今回の取り組みだ。

デルタ航空とTSAがこの試験を実施しているアトランタでは、デルタ航空のマイレージプログラム「スカイマイル」の会員で、TSA PreCheck会員でもある乗客は、セルフサービスのPreCheckバッグドロップエリアを利用できるようになった。このプログラムを利用する乗客は(フライトにチェックインするたびに、デルタ航空のアプリで利用指定を行う必要がある)、新しい手荷物預け入れ機の前に行き、顔をスキャンする。するとTSAのデータベースを通じて本人であることが確認され、手荷物ラベルが印刷される。ラベルを貼り付けた後、スーツケースをコンベア上に置くと、新しい自動手荷物預け入れ機がスーツケースの重量を量り、カメラがサイズを確認する。

画像クレジット:デルタ航空

デルタ航空のエアポートエクスペリエンス担当マネージングディレクターであるGreg Forbes(グレッグ・フォーブス)氏は、正式公開に先立つプレスイベントで「目標は30秒です」と語った。「これを実現するために、私たちは技術開発を行うだけではなく、アプリを立ち上げたり運転免許証を探したりといった特定の振舞を行わないだけでもなく、似たようなスタイルで移動する乗客を集めることにしました」。

フォーブス誌は、このサービスは通常のローラーバッグ、スーツケース、ダッフルバッグにしか使えないと指摘している。これは基本的に、自分が何をしているかを知っているフリークエント・フライヤーのためのバッグドロップエリアなのだ。

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フォーブス誌は「サーフボードやゴルフクラブをご持参のお客様には、建物の外で車寄せがあるチェックインカウンター(カーブサイド)のSkycap(スカイキャップ)の方がお勧めです。またもし2年生の遠足で子どもが30人いて、それぞれチケットにひと悶着ある場合にも、おすすめできません」という。

現在、アトランタを起点とするデルタ航空の利用者の約4分の1が、この方法で荷物を預ける資格をすでに得ている。この体験はスカイマイルのアカウントと連動しているため、デルタ航空のマイレージプログラムへの登録を促すことにもなり、その結果、デルタ航空はマイレージプログラムの利用者に向けた新たなマーケティング手段を得ることになる。

実際に体験してみたところ「30秒でバッグドロップ完了」という約束は、十分実現可能なものに思えた。マスクをちょっとずらして行う顔認証は数秒で完了する。ラゲッジタグを手で貼り付ける方がよほど時間がかかる。

現段階では、デルタ航空はこのために機械が4台だけが置かれた小さなスペースを設けているが、フォーブス誌によると、処理能力が問題になった場合には、空港内の別の場所に2つ目のバッグドロップエリアを設ける計画がすでにあるとのことだ。

また、目の不自由な乗客のための設備や、本人確認に問題が起きた場合の搭乗券読み取り装置も設置されている。

バッグドロップした後は、PreCheckの列に並び、そこでまた顔面スキャンを受け、さらに搭乗口でも再び顔面スキャンを受ける。すべてが順調にいけば、搭乗券や身分証明書を出す必要はない(もちろん身分証明書は持っていくべきだが)。

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一般的には、バイオメトリクスを使用すると、プライバシーに関する問題が発生する。デルタ航空は、画像は本人認証のためにTSAに送るだけだということを強調している。そもそも、乗客がPreCheckやGlobal Entry(グローバル・エントリー)を選択した段階で、TSAはすでに乗客の顔と旅行スケジュールを把握しているのだ。フォーブス誌はまた、デルタ航空自身は生体データには一切触れず、その技術を提供するパートナーに任せているとも述べている。彼らの技術の安全性は政府によって検証されているが、100%安全であると保証されたシステムは存在しないことはご存知の通りだ。

個人的には、2021年に入ってから何度も米国境を越えていて、そのほとんどはGlobal Entryを利用している。Global Entryも現時点では完全に顔認証に依存している。最初は少し奇妙な感じもしたが、国土安全保障省はすでに私の情報をすべて把握しているので実際には問題ということはなく、単に接続までの時間を短縮することができた。またデルタ航空のシステムを使った、上述のカーブサイド経由の搭乗も、かなり似ていると感じた(何も触らなくていいというのは、コロナの時代にはありがたい特典だ)。

しかし、すべての人がこのようなトレードオフを望んでいるわけではない。そうした人たちにとっては何も変わらないままだ。結局これらはオプトインであることに変わりはない。

今のところ、少なくとも現在のパイロットプログラムでは、これはデルタ航空とTSAとの間の独占的なパートナーシップで運営されている。もちろん他の航空会社もすでに同様の取り組みを行っていることだろう(ユナイテッド航空の場合はCLEARとの提携だが、次に導入する可能性が高い)。デルタ航空が空港内のさまざまな顧客接点でこれを展開し、他の企業もすぐに追随することを期待している。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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