ノーコードで非技術者でも使えるコンピュータービジョンを提供するMobius

ベルリンのMobius Labsが、同社のコンピュータービジョン訓練プラットフォームの需要増に応えるために、520万ユーロ(約6億8000万円)の資金調達を完了した。このシリーズAの投資ラウンドをリードしたのはVentech VCで、これにAtlantic LabsとAPEX Ventures、Space Capital、Lunar Ventures、および一部のエンジェル投資家が参加した。

ユーザーは同社が提供しているSDKにより、若干の訓練データのあるカスタムのコンピュータービジョンモデルを自分で作ることができる。一般的な類似製品として売られているソフトウェア製品には、ユーザーの特殊なユースケースに応じた細かいカスタム化ができないものが多い。

また同製品は「ノーコード」を謳っており、非技術系のユーザーでも使えるという。

Mobius LabsのプラットフォームはSDKであり、オンプレミスでもオンデバイスでもどちらでもデプロイできる。顧客がクラウドサービスに接続してAIツールを利用する、というタイプの製品ではない。

CEOでチーフサイエンティストのAppu Shaji(アップ・シャジ)氏は、次のように語る。「弊社のカスタム・トレーニング・ユーザー・インターフェースは、極めてシンプルで使いやすく、事前に何らかの技術知識を必要とすることはまったくありません。このところ私たちの目に入ってくるトレンドは、AIから最大の価値を引き出せるのは技術系の人間ではない、ということです。むしろ多いのは、報道やクリエイティブエージェンシーで仕事をしているコンテンツマネージャーや、宇宙企業のアプリケーションマネージャーなどです。日常的に、視像(ビジョン)の最も近いところにいるのが彼らであり、彼らはAIのエキスパートやデベロッパーチームが助けに来るのを待たずに仕事をしています」。

2018年に創業したMobius Labsでは、現在、30社の顧客企業がそのツールを使ってさまざまなユースケースを実装している。その用途は、カテゴリー分類やリコメンデーション、予測、そして一般的に「ユーザーやオーディエンスを彼らのニーズに合った視覚的コンテンツに接続する」ことだ。当然のことながら、報道や放送、ストックフォトなどの利用が多いが、実際には同社ユーザーの業界はもっと多様で、それぞれが同社の成長に寄与している。

ユーザー企業の規模も多彩で、スタートアップや中小企業もいる。ただしメインは、大量のコンテンツを扱うグローバルなエンタープライズだ。そのため、今でもメディアやビデオ関連の利用が最も多い。しかしながらそれでも、現在の同社は地理空間情報や地球観測といった多様な業種をターゲットとして狙っている。

現在の社員数は30名だが、過去1年半で倍増している。今度の資金で、今後1年以内にさらに倍増し、特にヨーロッパと米国を中心に地理空間情報方面の顧客を開拓したい、という。売り上げも前年比で倍増しているが、顧客をより多分野に広げることにより、さらなる増大を狙っている。

「主な対象業種はビジュアルデータの扱い量が多い業種です。ビジュアルデータの扱い量が多いという点では、地理空間情報の分野を逃すべきではありません。しかし、彼らが持つ膨大な量の生のピクセルデータは、写真などと違って他の役には立たないものだけどね」とシャジ氏はいう。

「彼らが私たちのプラットフォームを利用する例として、川に沿った地域の広がりを調べたければ、衛星からデータを集めて、それらを整列しタグづけして分析するだろう。今はそれを、手作業で行っている。私たちが開発した技術を、いわば軽量級のSDKとして使えば、それを衛星上に直接デプロイして、機械学習のアルゴリズムで分析できる。現在、実際に私たちはそのような観測画像分野の衛星企業と一緒に仕事をしています」。

シャジ氏が主な競合他社として挙げるのは、ClarifaiGoogle Cloud Vision APIだ。「どちらも大きくて強い相手ですが、彼らにできないことが私たちにはできます。彼らのソリューションと違い、私たちプラットフォームはコンピュータービジョンの専門家でない人が利用できる。機械学習のモデルの訓練を、技術者でない人が誰でもできるようになれば、コンピュータービジョンに誰もがアクセスでき、理解できます。仕事の肩書はなんでもいい」とシャジ氏はいう。

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「もう1つの重要な差別化要因は、クライアントデータの扱い方です。私たちはソリューションをSDKの形で提供するため、オンプレミスで完全にローカルにクライアントのシステム上で動作します。データが、当社に戻ってくることはありません。私たちの役割は、人々が自分でアプリケーションを構築し、自分たちのものにできるようにすることです」。

コンピュータービジョンのスタートアップはここ数年、買収のターゲットとして人気がある。一部のITサービス企業は「コンピュータービジョン・アズ・ア・サービス」を看板に掲げるスタートアップを買って自分のメニューを増やそうとしている。またAmazonやGoogleのような巨人は、自前のコンピュータービジョンサービスを提供している。しかしシャジ氏によると、この技術は今までとは異なる段階にあり、「大量採用」の準備が整っていると指摘している。

「私たちが提供しようとしているのは、技術者に力をつけるソリューションではなく、クライアント自身がアプリケーションを自分で作れるためのソリューションです」とシャジ氏は現在の競合状況についていう。「私たちのソリューションはオンプレミスで動き、私たちがクライアントデータを見ることはないため、データのプライバシーも完全です。しかも軽量級の使いやすいソリューションであるため、スマートフォンでもラップトップでも、あるいは衛星上でも、さまざまなエッジデバイスにデプロイできます」。

投資家を代表してVentech VCのパートナーStephan Wirries(ステファン・ウィリーズ)氏は次のように語っている。「Mobius LabsのAppuと彼のチームは、コンピュータービジョンの分野では他に類のないものです。そのSuperhuman Visionと呼ばれるプラットフォームは、感動的なほど革新的であり、新しいオブジェクトを見つけるための訓練が比較的簡単にできるし計算効率もいい。今後さまざまな産業がAIによって変わっていく中で、Mobius Labsはヨーロッパのディープテクノロジーの革新的なリーダー兼教育機械にもなることができるだろう。

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画像クレジット:Yuichiro Chino/Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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