スタートから5年を数えるOpen Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」。4月に開催された第10期のデモデイで最優秀賞に輝いたKUFUのサービス「SmartHR」がクローズドベータ版のサービスを開始した。事前に募集をしていた約300社に対して順次アカウントを提供している。あわせて、SmartHRのサイト上で、新規のクローズドベータ版ユーザーも追加募集している。
SmartHRは「入退社の書類作成」「社会保険の手続き」といった労務手続きをサポートするサービスだ。例えば入社時の書類作成の場合、新入社員の氏名や住所などを入力すると、印刷すればそのまま利用できる役所提出書類などを自動で作成。さらに画面上にToDoリストを表示し、必要な作業を指示してくれる。今秋をめどに政府が提供する電子申請システム「e-Gov」と連携し、オンライン上での書類申請も可能になるという。ビズグラウンドの「Bizer」のほか、freeeやマネーフォワードが提供するクラウド会計サービスの機能の一部が競合にあたるだろうか。
自身の病気、妻の産休がサービスのきっかけに
KUFUの設立は2013年1月。代表取締役の宮田昇始氏は、かつてスタートアップで勤務していたが、数万人に1人発症するかどうかという難病にかかって顔面左半分麻痺、聴覚障害、視覚障害という経験をしたのだという。しばらく休職して病気から回復したが、自分の生き方や働き方を考えた上で独立しようとなったのだそう。そこでフリーランスで活躍していたデザイナーやエンジニアと作ったチームが同社の母体となった。
受託を受けながらいくつかサービスを企画。その1つを持ってonlabの門を叩き、見事にプログラムに採択されるも、「スタートして1カ月くらい『本当にそこにユーザーの課題があるのか』とヒアリングを続けていた。深掘りして考えて行くと課題があるのか分からず、数えるだけでも9回のピボットをした」(宮田氏)のだという。
そんなタイミングで思い出したのが前職での休職経験。その際、休職時の手当の申請などで社会保険労務士(社労士)にはお世話になったのだそう。また時を同じくして宮田氏の妻が産休をすることになったが、会社で手続きをしてもらえなかったために宮田氏が代行。その面倒さを痛感したという。
「ここにユーザーのニーズがないかと思ってヒアリングしたところ、特に10人程度の会社だと、労務の専任者がおらず代表が労務手続きをしているというケースが多かった。コストが合わないため、労務は面倒だが社労士を雇えないのだという。そういった課題を解決できるサービスを考えた」(宮田氏)
デモが動くようになって各所に話をしたところ、反応が良かったのは小規模の会社だけではなかった。「実は30〜50人規模の会社の反応が一番いい。その規模でも労務専任の人材がおらず、経理や人事が兼任している状況」(宮田氏)。現在はベータ版でサービスを提供しているため、利用は無料。今後は月額課金を中心にしてサービスを提供する予定だが、詳細については現在検討中だという。
同社はOnlabのほか、DGインキュベーションおよび非公開の1社からシードマネーを調達している。金額については非公開となっている。
なお同社は、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のイベント「TechCrunch Tokyo 2015」の目玉企画「スタートアップバトル」に応募頂いている。
スタートアップバトルは2日目の11月18日午後に予定している企画で、100社以上の応募の中から書類審査を勝ち残った約10社が投資家や起業家、経営者、スタートアップ関係者、大手ネット企業の事業担当者などを含む観客の前でプロダクトのお披露目をするコンテストとなっている。
もちろんSmartHRが登壇するかどうかは審査が終わるまで分からないが、早く正式版のサービスをお披露目してもらいたいと期待している。
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