マイクロモビリティ2022:さらに洗練され、成熟し、テクノロジーを満載に

2021年は、コンセプト、ソリューションそして生き方としての「マイクロモビリティ」が定着し始めた年だった。

シェア式マイクロモビリティの増加と新型コロナ禍中の公共交通機関は、人びとに小型電気車両を自分で購入する可能性を考えさせることになった。その結果、2021年は電動自転車の年となり、7月までの12カ月間で売上高は240%増加した。この新しい習慣によって、都市は10年前なら本当に信じられなかったインフラストラクチャ計画を採用することとなった(パリを見て欲しい!)。

2021年は、人びと、特に都市の人びとが、電気自動車の登場よりも間違いなく大きいマイクロモビリティの炭素排出量削減への影響について、オープンに話し始めた年でもある。

2021年、シェア式マイクロモビリティ企業たちは、このような電動スクーターや電動自転車に向かい始めた考え方の変化を受け、市場での支配的な地位を利用して、その運用効率を高め、ハードウェアをより適切なものにしようとしてきた。

では以上のような背景を踏まえて、2022年のマイクロモビリティ分野の今後の展望を見ていこう。

みんなの電動自転車

特に米国などの国々では、新しい電動自転車の購入に対して最大900ドル(約10万3000円)の補助金が出されていることから、電動自転車のトレンドは2022年も続くと予想されている。しかし、このブームは個人消費者にとどまるものではない。Segway(セグウェイ)のグローバル・ビジネス開発担当副社長のTony Ho(トニー・ホー)氏によれば、マイクロモビリティ企業からの電動自転車の需要も大きく伸びているという。Segwayは、Lime(ライム)やBird(バード)といったシェア式マイクロモビリティの巨人たちに、電動キックボードや電動自転車を供給していることで知られている。

「Limeは当初、シェア自転車の会社でしたが、キックボードを始めるまではうまく行っていませんでした。キックボードの方が安価で、導入しやすいという理由もあります」とホー氏はTechCrunchに語っている。「今では、電動自転車の人気が高まっているようで、構成比が平準化し始めているようです。それに伴いシェア向け電動自転車の注文が多くなっています。また都市にとっても、もともとシェア自転車プログラムを持っていたわけですから、問題ありません」。

新しいVCマネーは枯渇する

BirdやHelbiz(ヘルビズ)のような大手企業が上場し、Limeも2022年の上場を約束しており、業界は全体として数社の大手企業に集約されてきた。そのため、VCの資金や新規参入者が増えるのではなく、現在の市場が成熟していくことが予想される。

ホー氏は「BirdとLimeのブームの後、投資家たちは、Coco(ココ)の歩道ロボット配達員のような、別のものに移ったと思います」という。「このビジネスに参入するにはまだかなりの資金が必要ですし、個人的には、小規模な事業者にとっては、特に都市部ではライセンス料を払い保険に加入する必要があるため、より困難だと思います。実はもう、小さなスタートアップ向けのゲームではないのです。最後の波を生き延びた者が、おそらくここに留まることになるのでしょう」。

残っている企業は、コストを下げ、より効率的で持続可能なものにして、市の規制に準拠するために全力を尽くしている。

だが……ライドシェア企業が再び登場するかもしれない。

ホー氏は「私たちが得ている注文と引き合いは、多くの企業が戦いに戻ってきていることを示しています。ですから、人びとがパンデミックから抜け出す来年には、マイクロモビリティが優先課題になるでしょう」という。「ライドシェア企業のような大手企業を含め、いくつかの企業が戻ってきています」。

2020年の夏は、パンデミックによるロックダウンの影響でマイクロモビリティは不調だった。たとえばUber(ウーバー)はマイクロモビリティのJump(ジャンプ)をLimeに売却し、その後両社の統合が進んだ。2020年5月には、Lyftも手を付けていた電動キックボードプログラムの多くを終了したが、もしホー氏の観察が正しければ、UberとLyftはすべての市場シェアを失う前に、ゲームに復帰しようとするかもしれない。

より多くAIが利用され、よりスマートな自動車の登場が期待される

都市は、キックボードが歩道に乗り入れたり、駐車したりするのをとても嫌がる。あまりに嫌がられるので、多くの企業が技術革新を行い、非常にスマートなスクーターを生み出している。Spin(スピン)、Helbiz、Voi(ボイ)などの企業は、カメラを使ったシステムをすでにテストしており、ライダーが歩道を走っていたり、歩行者にぶつかりそうになっているのを検知し、リアルタイムで走行を停止する機能まで備えている。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)やBirdのように、高精度な位置情報を利用したアプローチを利用して、同様の高度なライダーアシスタンスシステムを実現しているところもある。企業がコストを抑える方法を見つけ、世界中の都市がこの楽しさを奪うテクノロジーの匂いを嗅ぎつけるようになれば、このトレンドはますます一般的になるだろう。

マイクロモビリティのADAS(先進運転支援システム)は、シェア市場を超えて広がっていくだろう。すでにStreetlogic(ストリートロジック)やTerranet(テラネット)などが、一般消費者市場で電動自転車ライダーがより安全に走行できるようにするために、潜在的な危険性を検知して衝突警告を出す機能持つコンピュータービジョンベースのシステムの製造に取り組んでいる。こうしたシステムは、自動車での移動を電動自転車での移動に置き換えたいと考えている一般的な人びとに、安心感と安全性を提供する。

「マイクロモビリティ」という言葉を生み出した業界アナリストHorace Dediu(ホレス・デディウ)氏は、マイクロモビリティの車両にセンサーを追加することが、企業にとってデータの収益化への道を開くことにもなるという。

デディウ氏は、TechCrunchの取材に対し「今後は、より多くのセンシングが行われるようになるでしょう。それは基本的にドライブレコーダーで行われ、多くのイメージングが行われることになるでしょう」と語った。「これが自動車の世界にやってくることは明らかですが、自動車の世界で起こることはすべてマイクロの世界でも起こりますし、多大な投資をしなくても1億台の車両に展開できるので、より早く起こることが多いのです」。

マイクロモビリティの車両の前後にカメラを設置することで、現在のドライブレコーダーのように全周囲を撮影することができます」とデディウ氏はいう。もしこれらのシステムがすでに歩道や歩行者専用道路を検知できているなら、路面状況を検知して、道路のメンテナンス問題に関する共有データベースを通じて都市行政側に知らせることができるだろう。あるいは、マイクロモビリティ企業がその情報をGoogleのような地図会社に売って、世界をもう少し良く映像化できるようにするかもしれない。

ユーザーからの動きを計測するトルクセンサなど、現在のマイクロモビリティができる他の機能を考えると、企業はウェアラブルデバイスに連携する「Peloton(ペロトン、オンラインフィットネス)のようなサービス」を提供できる可能性があるとデディウ氏は予測している。

マイクロモビリティとメタバース

「Meta(メタ)つまりFacebook(フェイスブック)や、Microsoft(マイクロソフト)やApple(アップル)は、頭に何かを装着している人とどうやって対話するかを探究するために、何十億ドル(何千億円)もの投資をしてきました」とデディウ氏は述べている。「私は、この2つの考えを単純に組み合わせて、どうせヘルメットをかぶるなら、スマートなヘルメットにしたらどうだろう?と言いたいのです。そして、せっかくスマートヘルメットをかぶるのであれば、そうしたくなるような刺激的でおもしろいものにしたいですよね?」。

街を移動する際に現実を拡張してくれるスマートバイザー付きのヘルメットは、ライダーが周囲の環境をより意識して安全を高められる可能性があるだけではなく、さまざまな体験を解放して人びとが外に出て動きたくなるようにすることができると、デディウ氏はいう。

「マイクロモビリティとメタバースは、お互いのために作られているのです」と彼はいう。「それは『見上げること』です。一方、車の体験の拡張は、下を向いて孤立していくことに他なりません。では、上を見るのと下を見るのとどちらがいいでしょうか?」。

注意:この組み合わせは2022年には起こらないかもしれないが、デディウ氏は今後数年の間に何らかの形で起こることを確信している。

新しく、より頑丈なフォームファクター

毎日キックボードや電動自転車、電動バイクに乗って仕事に向かう上で唯一の問題は、雨が降ったらどうなるかということだ。戦略アドバイザーでエンジェル投資家でもあり、ディウ氏と「Micromobility Podcast」(マイクロモビリティポッドキャスト)を共同ホストとして提供しているOliver Bruce(オリバー・ブルース)氏は、この問題を解決し、さまざまなユースケースに対応するために、消費者市場とシェア市場の両方で、新しい、よりヘビーデューティーで、閉じた屋根のある形状が登場する可能性があると述べている。

ブルース氏は、最近Tilting Motor Works(ティルティングモーターワークス)を買収したArcimoto(アーキモト)やNimbus(ニンバス)のような企業が、傾斜電気三輪車(方向転換の際に車体が傾く三輪車)の開発に取り組んでおり、2022年には市場に投入される予定だと語っている。

ブルース氏は、TechCrunchの取材に対し「COP26で話し合った気候変動に関する目標を真剣に達成するためには、新しい電気自動車が登場し、急速に普及する必要があります」と語った。「しかし、現在の状況で電気自動車を普及させようとすると、本当に大変なことになります。私たちにはその余裕がないのです」。

交通システムに組み込まれたマイクロモビリティ

ブルース氏は「2022年には、公共交通機関の一部にマイクロモビリティが組み込まれるようになり始めると思っています」という。「例えば地下鉄を降りて電動自転車に乗るようにすれば、お互いにメリットのある移動となります」。

ブルース氏によると、これは、世界中の都市(主にヨーロッパ)で私たちが目にしている、より多くの自転車専用道路を建設するインフラ事業の副次的影響の一部になるという。しかし、それはマイクロモビリティ企業が車両1マイルあたりのサービスコストを大幅に削減することにもつながる。

「マイクロモビリティ事業者が輸送機関に大量に移動距離を販売することで、その経済性はますます大きなものとなっていきます。そうした輸送機関は、地下鉄カードやアプリを使ってキックボードのロックを解除することができるのです。世界の都市の中には、これを公共交通機関に組み込むところも出てくるでしょう」。

マップとの連携強化

「おそらく2022年から先は、ソフトウェアの年になるかもしれません」とデディウ氏はいう。

今日、GoogleマップやMoovit(ムービット)のような移動計画や地図アプリは、ユーザーに提供する目的地までの複数の方法の中に、マイクロモビリティのオプションを統合し始めていている。このような統合により、マップが検索エンジンの役割を果たし、移動手段の上位ヒットを数秒で確認できるようになるはずだ。

「現在は、AからBに行きたいと指定すれば3つか4つの選択肢が出てきます、しかしそこに乗車に対する入札結果は提示されません」とデディウ氏はいう。「わたしはそこに15件の入札結果を見たいと思っています。乗車依頼をするたびにオークションが開催されるようになって、Google検索の結果のよう表示されて欲しいですね。こんな当たり前の話にもかかわらず、2022年を目の前にしてまだ実現されていないことにショックを受けています」。

「でもその主たる原因は仲介するプラットフォームがないからです。適切なAPIが欠けているのが原因なので、もしそれが実現すれば、シェアオペレーターがGoogleマップ上で入札する機会が爆発的に増えるはずです。そうなればマイクロモビリティから莫大な収益が発生するでしょう。こうして、マイクロモビリティの収益化は、発見を通して行われるようになるのです」。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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