機械学習のデベロッパーの不足が産業界の足かせになっている今、スタートアップも大手テクノロジー企業も人工知能を商用化するために必要なツールの民主化に取り組もうとしている。その方面の最新のスタートアップPetuumは今朝(米国時間10/10)、Softbankおよび Advantech Capitalからの、9300万ドルのシリーズBを発表した。
昨年カーネギーメロン大学の機械学習の教授Dr. Eric XingとDr. Qirong Ho、そしてDr. Ning Liが立ち上げたPetuuは、機械学習の開発を支える二つの部位のためのソフトウェアを作っている。ひとつは、データの準備と機械学習のモデルの選択を自動化することだ。機械学習の初心者である一般企業は、このようなツールの助けがなければ、TensorFlowやCaffeのような、広く使われている機械学習のフレームワークすら、使いこなすことができない。
そしてモデルが決まったら、今度はPetuumは、ユーザーが使用するハードウェアの特性や制約に合わせた最適化を、デベロッパーをアシストしながら行う。こちらが、二つめ。その主な工程は、ハードウェアを仮想化して障害を取り除き、分散GPUクラスターの管理という余計なステップをなくすことだ。
Dr. Xingはこう語る: “私たちのAIの扱い方は、職人芸ではない。私たちはきわめて標準化されたビルディングブロックを作って、それらをLegoのように組み立てたり、組み立てなおしたりする”。
つまり同社のサービスは、さまざまな機械学習の問題を解くことではなく、ユーザー企業とそのデベロッパーたちが、0の段階から1の段階へ踏み出せるために、そのプロセスを自動化することだ。ただしPetuumはそれと同時に、エキスパートたちが十分に使えるシステムも目指している。この両立が、かなり難しい。
Dr. Xingは曰く、“Excelの使い方は誰でも知ってる。一般社員はExcelを使って表を作るだろう。それと同時に、高度な技能を持ってる統計家が何かの現象のモデルを作るときも、Excelを使うことがある”。
また、市場戦略も難しい。テクノロジー業界がいくら大金を投じてAIを称揚しても、投資家たちの多くはヒューリスティックスで不確実性を管理する方向へ向かおうとする。そこでは、AIが得意とする水平的な〔業種業態の違いを問わない〕プラットホームが、役に立たない。
それに、機能の開発と支出の均衡が必要なスタートアップが、MLaaSやMLプラットホームでGoogleやAmazonに対抗するのは難しい。Dr. Xingは自分のチームのスキルを高く評価しているが、Softbankらからの資金はありがたいはずだ。H2O.aiやAlgorithmiaなどの競合他社にはまだ、これほどの資金源はないだろう。
なお、同社はヘルスケアやフィンテック分野の顧客を開拓中だ。しかし長期的には、あらゆる業種業態に対応する気はない。ベータテストにはさまざまな業界から参加しているが、しかし今後は、他の業種業界に対して、このプラットホームをベースとするソリューションを同社以外のスタートアップが構築できるだろう。
今日の投資はSoftbank本体からで、930億ドルのSoftbank Vision Fundからではない。将来このファンドから投資されるのかは、不明だ。Petuumの現在の社員は70名で、今後は製品開発と営業とマーケティングを同時に増員したい、と言っている。