将棋で磨いたAI技術をFintechへ応用、HEROZが1億円を追加調達

将棋AIをビジネス化して実績を伸ばしているHEROZが今日、創業6年目にして追加で1億円の資金調達を行ったと発表した。これまで取り組んきたでボードゲームAIによるビジネスの国際展開に加えて、金融やヘルスケア領域にもAIを適用していくという。第三者割当の引受先は一二三(ひふみ)インキュベートファンド。

shogi

HEROZの「将棋ウォーズ」については以前TechCrunch Japanでも取り上げた。将棋なら羽生名人ということになるが、人間のチャンピオンを凌駕する実力を持つに至ったAI技術を活かし、HEROZは人間同士のオンライン対戦のコミュニティーを作ってきた。一般プレイヤーからすると、AIはすでにあまりにも強いので、AIが「コーチ役」を果たしていて、これにユーザーは課金するという仕組みが回り始めている。月商は非公開だが原価率が低く済む割にユーザーの熱量が高いのが特徴といい、強力なAIを呼び出して自分に代わってAIに指してもらうのが5手で100円。それから1日3局という対局数制限が解除できる月額500円の有料課金ユーザーが全体の1割程度。提供開始から3年、現在1日20万局以上の対戦が行われているという。

将棋ウォーズで培ったマネタイズモデルを国際展開しようというのが「バックギャモンエース」、「チェスヒーローズ」だ。将棋人口は約1270万人。これに対してバックギャモンは約3億人、チェス約7億人と、市場はより大きい。チェスやバックギャモンは、欧米では高級指向の文化として受け入れられていてプレイヤーの贅沢品の購買傾向が高いことから、HEROZではメディアとしての価値もあると見ているという。例えば、世帯収入が12万ドル以上ある人のうち21%が日常的なチェスプレイヤーなのだそうだ。

金融やヘルスケアでも応用が効く

将棋AIで培った機械学習やディープラーニングのノウハウは、「そのままではないものの並列化や機械学習のテクニックなど応用が効く」(HEROZ共同創業者で代表取締役の高橋知裕氏)ことから、まずは金融分野に進出する。具体的には市場のアービトラージを取るようなもので、過去データから将来を予測するようなもの。これはすでに証券会社に提供してて、「証券会社が持っている分析よりも良い結果を出している」(高橋氏)という。また、まだ実証段階の取り組みであるもののヘルスケア領域でもAIの適用を試みる。こちらの分野では、医療系ベンチャーの日本医療機器開発機構と協業に向けて模索を開始した段階という。

HEROZは2009年4月創業で、創業時にビッグローブキャピタルなどから1億円の資金調達をしたあと、モバイルゲーム関連で収益を上げてビジネスを回してきた。会社として「AI x モバイル」を掲げていて、将棋AIで最高峰の強さであるPonanzaの開発者の山本一成氏など過去3人の将棋電脳戦出場者がいるなどトップエンジニアを抱えているのが強み。社員数は現在約70名。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。