州の中絶禁止法に対する解決策を提供、バーチャルクリニックのHey Janeが約2.4億円調達

より多くの州が人工妊娠中絶を禁止するある種の法案を可決する中、遠隔医療による妊娠中絶ケアを提供するバーチャルクリニックのスタートアップHey Janeは米国時間8月26日、220万ドル(約2億4000万円)の資金調達を発表した。オーバーサブスクライブとなったこのラウンドには、Koa Lab、Gaingels、Foursight Capital Partnersを含む投資家グループが参加した。

リモートファーストを目指すHey Janeのアイデアは、2019年に同社の創業者でCEOのKiki Freedman(キキ・フリードマン)氏が数人の友人と交わした、ミズーリ州は妊娠中絶クリニックが残り1つとなっている6つの州のうちの1つだという会話から生まれた。中絶医療提供者への攻撃を避けるために仮名を使うフリードマン氏は、実際にはこのクリニックはその夏に閉鎖が予定されており、それはミズーリ州が中絶ケアをまったく持たない最初の州になることを意味していたと説明する。同クリニックは最終的には開業を続けることができた

「当時、私が目にした新興の遠隔医療クリニックの多くは男性のウェルネスに焦点を当てており、女性の健康については語られていませんでした」とフリードマン氏はTechCrunchに述べている。「このバーチャルモデルは、安全かつ慎重な中絶ケアに使えると考えました」。

匿名を希望するHey Janeの投資家の1人は「フリードマン氏とHey Janeに投資することに大いに期待を抱いた」のは、女性の健康が十分なサービス提供を受けていないカテゴリーであることに同意したからだと話す。男性の医療とは異なり、女性の医療では中絶ケアが分離されている。これは、レーガン大統領が中絶ケアを病院と切り離すよう義務付けたことに端を発している。

Planned Parenthoodによると、女性の4人に1人が45歳までに中絶するという。しかし、米国では2021年だけで90件以上の中絶に関する規制が制定されており、その数は総計1320件にのぼることが、Guttmacher Institute(性と生殖に関する健康と権利の向上に取り組む非営利の研究・政策組織)により明らかにされている。アーカンソー州とオクラホマ州では現在、患者の生命が危険にさらされている場合を除いて、中絶をほぼ全面的に禁止している。一方、アイダホ州、サウスカロライナ州、テキサス州では、妊娠6週以降、あるいはごく限られた例外を設けて中絶を禁止している。

2020年7月、連邦判事は女性が医師の診察を受けずに妊娠中絶薬を入手することを認めた。このことは、Hey Janeやその他の企業が妊娠10週未満の人々に「非接触」サービスの提供を開始する道を開いた。

249ドル(約2万7000円)の同社の治療には、医師によるスクリーニング、FDAが承認した薬の処方と患者の自宅への翌日配送、フォローアップのためのバーチャル訪問、そしてプロセス全体における医師とのチャットが含まれる。Hey Janeのチームも、テキストメッセージを通じて患者を頻繁にチェックする。

同社によると、金銭的な障壁を取り除くことは「Hey Janeにとって極めて重要な優先事項」であるという。同社はまだ保険を受け付けていないが、非営利の妊娠中絶基金パートナーReprocareを通じて経済的援助を行っている。この組織は、患者の負担が139ドル(約1万5000円)に抑えられるよう、249ドルの治療費のうち最大110ドル(約1万2000円)を助成している。

今回の資金調達により、Hey Janeは新たな州への展開を図り、7人のチームを増強してプロダクトおよび自動化プロセスの構築と法的調査を進めて、各州における遠隔医療の法制と遠隔医療の妊娠中絶に関する法制の動向を常に把握し、対応できるようにしていく。

Hey Janeが従うべき規制要件は州ごとに複数あり、その中には、臨床医が診療を行うのはライセンスを受けている州の患者に限定されることなどが含まれている。このため、同社は事業を展開する各州でライセンスを取得した臨床医を擁しており、適切な時期に薬を処方する準備ができている。また、必要に応じて精神的な苦痛を和らげる専門家も待機している。

Hey Janeは8月下旬からカリフォルニア全域で活動を開始し、ニューヨークとワシントンでもサービスを展開している。つまり、Hey Janeのサービスエリアは現在、米国で年間に行われる人工中絶の34%をカバーしているとフリードマン氏はいう。「カリフォルニア州とニューヨーク州では年間の中絶件数が最も多いため、これらの州が最初に選ばれました」と同氏は言い添えた。

「これらの州の人々はクリニックへのアクセスが比較的容易になっているかもしれませんが、Hey Janeによるケアは安全で効果的であり、クリニックでのケアの半分の費用で済むため、彼らはHey Janeの治療からより大きな恩恵を受けることができるでしょう」とフリードマン氏。「移動や育児のための費用や時間を必要とせず、プライバシーと裁量を確保し、精神的なサポートを追加することができます」。

フリードマン氏は、2021年末までに10州への進出を果たし、今後数年のうちに50州すべてで治療を提供できるようになることを期待している。しかしながら、19の州で遠隔医療による中絶へのアクセスを制限する規制上の障壁が存在する。Hey Janeは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAdvancing New Standards in Reproductive Healthの研究グループと組んで、そのための情報を集めている。

「私たちは一流の研究者と協力して、この治療法が安全かつ効果的で、患者に好まれていることを示す、豊富にある既存の証拠の拡充に努めています」と同氏は続けた。「この研究が規制の厳しい州での議論をさらに前進させ、最終的には古い規制に対する、より必要とされる患者中心のアップデートにつながることを願っています。遠隔医療による中絶の安全性と有効性に関する既存のデータは、これが中絶医療の未来であることを明確に示しています」。

Hey Janeは現在、同サービスを利用する患者数を四半期ごとに250%増やしている。同社は成長に伴い、連携したケアや新プロダクトのための追加ツールに力を入れている。

妊娠中絶は、審判的な扱いや差別の心配から秘密にされることが多い。患者が慎重を期して自分の経験や感情を共有できるような、切望されていた手段をHey Janeは提供していくとフリードマン氏は語っている。

「私たちは利便性とプライバシーを重視しています。3分の2の女性が自分の経験について話すことを望んでいないため、私たちはそうした女性たちのためのスペースを提供したいと考えています」。

女性の健康問題は、極めて個人的なものである。あなたやあなたの知人が女性の健康に関する個人的な問題に悩んでいる場合は、主治医やかかりつけの地域医療クリニックに詳細を問い合わせて欲しい。

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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