Appleは、自社ユーザーに関して様々な知識を持っており、サービスや製品の改善に利用している。名前、住所、位置情報。購入履歴等だ。しかし、それを広告主が自由に使えるようにはしていない。そのことが広告業界をひどく怒らせている、とAdAgeの最新記事は書いている。記事は、なぜAppleとAmazon(似たような運営方針をとっている)が、広告ビジネスの構築に苦労しているかを詳しく解説している。
Appleはデータに関してライバルに先行できる ― 共有さえすれば。
これは記事中の強いメッセージだ。Appleの持つ情報の質は「最上級に属する」と、元Appleのソフトウェア技術者でiAdのデータ測定プラットフォームの中心設計者だった人物は言っている。しかし、広告パートナーに提供しているものは、ゼロに等しい。クッキーベースの広告追跡やターゲティング機構を提供するのではなく、事実上広告パートナーは、どんな種類のユーザーにリーチしたいかを告げるだけで、あとはAppleのすることを信じるしかない、とAdAgeは言う。そして、ここで指摘しおくべきなのは、Appleが、広告売上を増やす可能性よりも、顧客のプライバシーを優先していることだ。
Apple自身が公式広告ページに書いているように、広告パートナーは分析・効果レポートをアクセスできる他、自動あるいは手動のターゲットオプションを使ってキャンペーンをカスタマイズできる。ターゲット項目には、地域、性別、年齢、具体的なユーザーの好み等がある。しかし、広告主がこれらのデータを直接アクセスして自身のデータマイニングツールやターゲティングシステムを使うことを、Appleは許していない。これは広告業界の標準ではなく、おそらくマジソンアベニューの広告関係者たちを苛立たせている理由だろう。
もちろん、Appleのやり方は同社の顧客満足度維持という全体方針と一致している。顧客の満足とは、大切な個人情報が責任をもって保護され使用されると知っていることだ。iAdの論理は明快だ。Appleはエンゲージメント向上を提案し、詳細なレポートや投資効果を高めるためにキャンペーンを簡単に微調整できるツールを提供するが、そのために必要な舞台裏は見せない(見せる必要がないとAppleは言うかもしれない)。
Appleは以前にも、ユーザーとの関係を巡って既存業界を不快にさせたことがある。同社がiPhoneを発売した時、キャリアーは電話機メーカーとエンドユーザーとの橋渡し役を放棄せざるを得なかった。長年に渡りキャリアーの収入源となっていた余計な機能やサービスポータルの類を、Appleが認めなかったからだ。今回も似たような既存ビジネスの再考察と言えるが、一般消費者にとっても利益になるはずだ。
広告主たちも、Appleのシステムの価値を認める意志はあるようだ。多くの有力広告主が結局iAdに参加しており、開始時から利用しているところもある。同プラットフォームは全世界で6億人以上のユーザーに到達可能であり、ユーザーの区分化に関して独自の優位性を持っている。携帯キャリアーと同じく、捨てるには大きすぎるメリットであり、最終的に業界のシフトを後押しすることになるだろう。
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi / facebook)