新型コロナ不安の中、ゼロックスが3.7兆円のHP買収を断念

Xerox(ゼロックス)は、 HP敵対的買収提案を取り下げると発表した。このドラマは昨年秋、両社の怒りが増していく書面の交換と、Xeroxの対立的行動に始まり、Xeroxは買収に反対したHP取締役会を乗っ取ろうとまでした。

そのすべてが米国時間3月31日に消滅し、Xeroxは新型コロナによる世界経済の不安定性を理由に買収提案を取り下げることを正式に発表した。

「新型コロナによる現在の世界的健康危機とそれに伴うマクロ経済と市場の混乱は、XeroxがHP(NYSE:HPQ)買収を追求し続けるべきではない状況を作り出した。このため当社はHPを買収するための公開買付を取り下げ、当社が選出した極めて有能なHP取締役候補らの推薦も行わないことにした」と同社が声明で語った。

これに対してHPは、財務状況は良好であり、この結果にかかわらず今後も株主の持つ価値を上げていくつもりだと語った。

我々は今後もHP株主の価値推進に全力をつくす。HPはパーソナルシステム、プリンター、および3Dプリンティングとデジタル製造の各部門で業界をリードしている会社だ。健全な現金持ち高とバランスシートのおかげで、世界的パンデミックという予想していなかった事態に直面しても、将来への戦略選択性を維持することが可能だった。

そもそもこの提案は理解が困難だった。Xeroxは時価総額が40億ドルほどであり、250億ドル近い時価総額のHPよりずっと小さな会社だ。まさしく小物が大物を食おうという話だ。

しかしXeroxは本日も、敗北を認めながらも両社は1つになったほうがよかったと言い張った。それをHPが現実と感じたことはない。HPはXeroxにそんな大金をそろえることができるのか、仮にできたとして、このような取引をやり遂げるほど財務状況が安定しているのかと疑問を呈していたた。

関連記事:HP買収を諦めないゼロックスが提示額を1株24ドルに引き上げ

しかしつい先月にも、Xeroxは1株22ドルから24ドルへと提案金額増やし、株主を取り込もうとした。以前取締役を総入れ替えしようとする前には、取締役会を飛び越し株主と直接交渉すると脅したこともある。

HPは、この提案に内在する敵対心も、取引を強制しようとするXeroxの行動も気に入らなかった。先月HPは、株主にXeroxの提案を拒否させる努力の一環として、数十億ドル規模の配当を提示した。しかし、結局ドラマは世界規模の危機の中でたち消えることになった。

関連記事:HPがXeroxによる敵対的買収回避のために数千億円規模の配当を株主に提案

画像クレジット:Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。