“普通”のショップの越境ECを支援するジグザグが3億円調達、米欧のAmazon Payにも対応

日本のECサイトを対象に、越境ECの支援サービス「WorldShopping BIZ(ワールドショッピングビズ)」を提供するジグザグは7月13日、モバイル・インターネットキャピタルを引受先とした第三者割当増資および、みずほ銀行、日本政策金融公庫からの借入により、総額約3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズAラウンドに当たる。

カートから決済・配送まで越境ECを支援

ジグザグの越境EC支援サービスWorldShopping BIZは、国内ECサイトに専用タグを1行挿入するだけで、多言語対応・海外決済・海外配送が可能になる、というものだ。

実は日本で運営されているECサイトのアクセスは、2〜8%が海外からのものだという。ジグザグ代表取締役の仲里一義氏はこれを「ウェブインバウンド」と呼び、「リアルではインバウンド客をもてなしているのに、ネットのインバウンド客に対しては日本は冷たい」と語る。

「課題は、サイトの翻訳ではない。海外からアクセスしたユーザーも、Google翻訳などを使って翻訳はできるので、商品ページの翻訳はそれほど重要ではない。問題はカートから先。カートで、かな入力欄や住所の都道府県プルダウン、形式や桁の違う郵便番号欄などによって海外ユーザーは弾かれて、買い物ができないのがこれまでの状況だった」(仲里氏)

そこで、ジグザグでは「日本のサイトで買いたい」というユーザーに、サイトの「海外にも売りたい」を届ける仕組みとしてWorldShopping BIZを開発。カートだけでなく、購入者からの問い合わせ対応や、海外配送のための書類作成、便の手配、梱包など、物流・言語・決済の一連の対応をすべて、ショップに代わって担う。

WorldShopping BIZを利用するショップがサイトにJavascriptタグを設置すると、海外からのアクセスに対しては、自動で購入代行サービス「WorldShopping」の案内がポップアップで表示される。表示は国の判別だけでなく、ブラウザの使用言語に合わせて言語を判定。例えばアメリカから中国語設定のブラウザでアクセスすれば、中国語が表示される。

商品ページでは、海外ユーザー専用のカートをフロート表示。ユーザーが多言語対応の入力フォームにより住所入力を行い、購入を確定すると、WorldShoppingにリダイレクト遷移して決済が完了できる。

決済はクレジットカード、PaypalやAlipay、銀聯カードなどに対応。7月13日からは、米国と欧州のAmazonアカウントを持つユーザーがAmazon Payを利用することも可能になったばかりだ。ユーザーは購入代金と配送料のほか、購入代行の手数料として10%をWorldShopping(ジグザグ)に支払う。

ジグザグが決済を確認してサイトでの購入を代行するので、ショップ側はジグザグが持つ国内の物流センターへ商品を発送するだけ。商品の検品や海外向けの再梱包、配送などはすべてジグザグが行う。ショップ側から見れば、国内販売と同じ手続きをすればよい。タグを設置するだけで、手早く海外販売ができ、後の対応も不要。初期費用3万円、月額5000円の固定額でサービスを利用することができる。

海外からの購入データでマーケティング支援も視野に

ジグザグ代表取締役 仲里一義氏

ジグザグは2015年6月の設立。仲里氏はもともと広告畑を歩んできたが、2004年に入社したオプトで新規事業を担当することになり、2010年には韓国groowbits(グロービッツ)の日本法人設立に参画。国際物流を軸とした越境EC事業に携わった。「国際物流については対応できるようになった。あとは言語と決済でイノベーションが必要」として、起業したジグザグではWorldShopping BIZを中心とした越境EC事業を手がける。

WorldShopping BIZは現在、国内約480のショップが利用。「コロナ禍で店舗営業が壊滅的打撃を受けており、導入が増えている」と仲里氏は話している。オーダーは90カ国以上から入っているとのこと。クレジットカードも使えなかったローカルな釣具屋サイトにロシアを含めた世界36カ国からオーダーが来たり、326万円もするサプリのECサイトに香港、中国からオーダーが入ったりという例もあるそうだ。

「一度WorldShoppingのカートを見たことがあるユーザーは、別のサイトでも同じカートが表示されるので、ショップが増えれば増えるほど安心感が生まれる。また僕らがロジスティクスを担っているので、違うショップで買ったものを1つにまとめて配送することもできる。ネットワーク効果が出てくれば、ついで買いによる利用も増える」(仲里氏)

ジグザグとしては海外からのEC購買のビッグデータを蓄積することで、今後ショップをまたいだ関連商品の紹介とショップへの送客など、マーケティングへの活用も計画しているそうだ。

ジグザグは、ショップの獲得やユーザー獲得を図ったうえで、プロダクトの強化やマーケティング強化に乗り出す予定。特にプロダクトについてはインターフェイス改善や対応言語追加のほか、「1年以内でEC事業者向けのマーケティングダッシュボードを提供したい」と仲里氏は述べている。

「これから、ショップはこれまで気づいていなかったウェブインバウンドを意識し始める。僕らが代行購入していることで海外からのニーズがあることは分かるが、どの地域からの購入かは分からないので、海外マーケティングを意識し始めると、データを欲しがるはず。そのデータをダッシュボードで提供しようとしている」(仲里氏)

ジグザグは「Amazon Pay」との協業も7月13日に発表。米国と欧州のAmazonアカウントで決済できるAmazon PayをWorldShopping BIZに実装した。これまで日本のアカウントのAmazon Payしか使えなかったショップでも、これにより、米欧アカウントでの買い物ができるようになった。

3月から25サイトで実施したクローズドβテストでは、北米・ヨーロッパだけでなく、南米やオセアニア、アジアなど20カ国から、Amazon Payでの利用があったそうだ。ジグザグでは今回のAmazon Pay協業をはじめ、決済パートナーやそのほかの提携パートナーも増やしていくとしている。

「言語や情報のハードルは下がっているが、ECの場合、モノが存在する点でハードルが残っていて、売り手の課題になっている。将来的には日本から世界各国への越境ECだけでなく、海外から別の海外の各国への越境EC支援も実現して行きたい」(仲里氏)

海外対応では、これまでの購入代行、配送対応といったサービスに加え、季節物アパレルで、在庫が余っているものを南北逆半球の顧客へプッシュするなど、マーケティング支援も充実させたいと仲里氏は話している。

「2年前の統計で、BtoCのEコマース市場が9.3兆円と言われていて、仮にそのうちの4%が『買えていない』体験だとすると、4000億円弱がロスしている計算になる。これはもったいないことだ。コロナ禍で巣ごもり消費が海外からもあるようだが、インバウンド消費のニーズがこの市場にさらに加わり、今後ユーザーが『日本のものが簡単に買えるようになった』と分かれば、さらに増えていくはず。僕らは、そこを加速させようと思っている。真っ当に正しい情報をユーザーに伝えてあげて、正しいショップでオーダーできるようにすることが僕らの使命だ」(仲里氏)

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TechCrunch Japan

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