欧州の物流業界に一石を投じる貨物フォワーディング企業Sennderが約88億円調達、評価額約1100億円超えに

2020年のeコマースの大ブームに加え、新型コロナウイルスの影響から物の移動をより効率的に行うことが求められていることもあり、貨物フォワーディング(貨物利用運送事業。貨物をどのように、どこへ運ぶかを手配するプロセスであり、その作業を支える技術のこと)は物流業界の中でも特に重要な分野となっている。この分野における大手企業の1つが、現地時間6月1日、この機会を生かすための資金を調達したことを発表した。

欧州地域の貨物輸送(特にトラック運送)に特化したデジタル貨物フォワーダーであるSennder(センダー)は、8000万ドル(約88億円)の資金を調達し、評価額が10億ドル(約1100億円)を超えたと発表した。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップは、2021年に入ってから資金調達を繰り返している。2021年1月には1億6000万ドル(約176億円)の資金調達を発表しており、今回の8000万ドルでシリーズDラウンドをクローズした。今回の延長シリーズDはBaillie Gifford(ベイリー・ギフォード)が主導し、Hedosophia(ヘドソフィア)、Accel(アクセル)、Lakestar(レイクスター)、HV Capital(HVキャピタル)、Project A(プロジェクトA)、Scania(スカニア)が前回のシリーズDから参加している。

今回のラウンドによって、3億5000万ドル(約384億円)を超える資金を調達したSennderは、貨物輸送業者の中でも最も資金力のある企業の1つとなった。現在この分野は注目を浴びており、欧州のZencargo(ゼンカーゴ)も5月に4200万ドル(約46億円)を調達したばかりだ。競合企業には米国のFlexport(フレックスポート)などがある。

Sennderは有機的に成長を遂げているが、規模を拡大するためにいくつかの買収も行っている。これは、市場の活性化だけでなく、細分化が進んでいることの表れでもある。5月にはCars&Cargo(カーズ&カーゴ)を買収し、フランスとベネルクスでの存在感を強めた。2020年にはUber Freight Europe(ウーバー・フレイト・ヨーロッパ)とEveroad(エバーロード)を買収し、イタリアの郵政公社であるPoste Italiane(ポステ・イタリアーネ)との合弁会社も設立。欧州に同社は全部で8つのハブを持つことになった。

Sennderによれば、同社は今後もこの種の買収を行う計画で、現在のトラック1万2500台におよぶネットワークを拡大するために、DAX30(ドイツ株式指数)のうち10社、Euro Stoxx(ユーロ・ストックス)50のうち11社と提携し、2021年にはトラック100万台分以上の輸送量を見込んでいるという。

「2020年から2021年に向けて、すでに1件の買収と複数の戦略的パートナーシップの締結を行い、その勢いを維持できていることを喜ばしく思います」と、Sennderの共同設立者であるCEOのDavid Nothacker(デイビッド・ノーサッカー)氏は、声明の中で語っている。「私たちは欧州における事業を拡大し、より多くの運送者や荷主をSnnderのプラットフォームに取り込み、SaaSなどのデジタルサービスを拡大していきます。買収や戦略的提携もこの戦略の一環であり、今回の追加資金は適切な機会に資本投下する柔軟性を当社にもたらします。Baillie Giffordは、革新的な技術を持つ企業を次々と支援してきました。彼らの支援は、我々のチーム、技術、ビジネスモデルに対する信頼の証です」。

Baillie Gifford European Growth Trust PLCの共同マネージャーであるStephen Paice(ステファン・ペイス)氏は、次のように付け加えた。「欧州の物流業界に一石を投じるSennderチームの旅に参加できることをうれしく思います。Sennderの技術は、非効率性や不必要な二酸化炭素排出に悩まされている業界で、出資者や社会に多大な価値を生み出す可能性があると確信しています。これまでの実績に加えて、特に印象的だったのは、目的意識を持った起業家精神が同社内に浸透していることです。これが長期的な成功のための重要な要素となることは間違いありません」。

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カテゴリー:その他
タグ:Sennder物流ヨーロッパ資金調達ベルリン

画像クレジット:sennder

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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