著名投資家のケビン・ライアン氏、「ビッグマネーはヘルスケアに」

Kevin Ryan(ケビン・ライアン)氏は、適切なタイミングで適切な場所に居合わせ、大いに裕福になった。オンライン広告ネットワークのDoubleClick(ダブルクリック)に12番目の社員として入社し、最終的にはCEOとして経営した(その後、2度にわたって買収された)。また、ソフトウェア会社のMongoDBをはじめとする数多くの企業を共同で創業した。同社は現在、上場企業として約300億ドル(約3兆3600億円)の価値がついている(ライアン氏は、いまだに「自分の株式の半分以上」を同社の株式として保有しているそうだ)。

先日、TechCrunchは、同氏の最大かつ最新の賭けであるヘルスケアテックについて話を聞いた。先日お伝えしたように、同氏の投資会社であるAlleyCorpは、同氏の資金を中心に1億ドル(約112億円)を、この分野の企業の立ち上げや資金調達に投じている。加えて、すでに約20件の関連投資を行った。TechCrunchは、同氏がなぜこれほどまでにこの分野に関わるようになったのか疑問に思った。以前に携わっていたプロジェクトはほとんど関連性がなかったからだ。ここでその対談を聞くことができるが、以下にその一部を紹介するので一読してほしい。

TC:注意を払ってこなかった人にとって、あなたがヘルスケアテックに極めて力を入れていることは驚きだと思います。最初に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

KR: 私がAlleyCorpの立場でいつも行っていることの一つは、5〜10年後のトレンドに賭けるということです。ある領域は過密状態で、そこにはもうチャンスがなく、あらゆることが既に着手されていると思うことがあります。一方で、大きなチャンスがあると思うこともあります。2、3年前から、ニューヨークのヘルスケア全般で、大きなチャンスがあると感じていました。というのも、医療システムにはうまく機能していない部分がたくさんあるからです。コストは非常に高く、電子記録は優れているとは言えず、極めて非効率的です。私たちの多くが、医療制度全体に不満を持っていますが、これはチャンスでもあります。

TC:あなたがここで管理しているのは、ほとんどご自身の資金です。なぜ何十億ドル(何千億円)といった規模で外部資本を投資のために受け入れないのでしょうか。現在の市場なら、実績のある起業家や投資家として、それが可能なのではないでしょうか。

KR:エコシステムの中で、私が好きで、だいたいにおいてストレスがなく、最もよく知っている分野がアーリーステージだということもあります。私が30億ドル(約3360億円)の企業に投資して、それが100億ドル(約1兆1200億円)になることを期待していると思われますか。そういう風には動きません。最もリスクの高いアーリーステージにいたいと思っています。今年初めに6300万ドル(約70億5300万円)の資金を調達したNomad Healthや、9月に1800万ドル(約20億1600万円)の資金を調達したPearl Healthなど、AlleyCorp社内で多くの企業をインキュベートしています。

新しい会社を立ち上げるときには、150万〜200万ドル(1億6800万円〜2億2400万円)の資金を投入します。その後、外部から資金を調達し、多額の資金が必要な場合は多額の資金を調達し、投資を続けます。1社あたりの投資額の上限は1000万ドル(約11億2000万円)程度としています。とはいえ、チャンスはいくらでもあります。だからこそ、私はこの分野で勝負したいのです。

TC:そのモデルは、1億ドル(約112億円)のシードラウンドが行われるようになった世界でも通用するのでしょうか。

KR:その変化した環境が私たちを助けてくれます。例えば、Pearl Health。同社には150万ドル(1億6800万円)ほどの資金を投入して、大きな株式ポジションからスタートしました。会社にもよりますが、だいたい30〜60%を出資します。経営陣の持ち分が大きければ私たちが小さな割合を持つことになりますし、共同創業者を私たちが派遣するなら大きなポジションになります。

そして、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のような会社が、大きなバリュエーション、大きなステップアップで入ってくれば、私たちはそのラウンドにさらに300万ドル(約3億3600万円)か400万ドル(約4億4800万円)を投入しますが、誰が入ってくるかを選ぶのは私たちです。ところで、もし4億ドル(約448億円)規模のラウンドがあったとしたら、その時点で私たちは投資をやめるでしょう。シードファンドではそうなります。他の大規模なファンドが入ってくれば、私たちの持ち分は希薄化してしまいますが、それは問題ではありません。私たちの資金は、投資した金額の10倍になると思ったときに最も良く働きます。

TC:では、後のステージで参加することには興味がないのですね。

KR:そんなことはありません。追加投資をすることもあります。Nomadに大量の資金を投入したばかりです。バリュエーションはおよそ2億5000万ドル(約280億円)でした。私は20億ドル(約2240億円)規模の会社になると思っていますので、多額の投資をしたことに今でも満足していますが、おそらくこれが最後のラウンドになるでしょう。資金を投入して2倍、3倍のリターンを得ようと考えている人たちもいます。彼らのファンドにとっては素晴らしいことです。彼らはもっと後のステージから入り、投資するのは5年だけです。私たちは、資金を投入して9年間はとどまり、100倍にしたいと思っています。

TC:あなたの同世代の人たちの多くは、ベンチャー業界から、あるいは少なくとも自分の会社から、退出し始めています。このことについて、あなたはどのように考えているのでしょうか。AlleyCorpには右腕のような人がいるのでしょうか。また、いずれ身を引くことになった場合はどうしますか。

KR:まず、すぐにそうなるとは思っていません。でも、ヘルスケア分野を担当しているのはBrenton Fargnoli(ブレントン・ファーニョーリ)で、非ヘルスケア分野を担当しているのはWendy Tsu(ウェンディ・ツウ)ですよね。そして、1年後には他に2、3人のパートナーがいて、私は実質的に会社のマネージング・パートナーになっていると思います。でも、私はあと10年はいますよ。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Photo by Joe Corrigan/Getty Images for AOL

[原文へ]

(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。