当面は主要な暗号資産(仮想通貨)の多くが史上最高値付近で安定しているように見えるため、もう少し変動の大きいトークンに投機したいと考えているユーザーは、取引所を横断しながら良い情報を探している。
アムステルダムを拠点とするスタートアップ企業のTabTrader(タブトレーダー)は、このユーザーの動きに便乗し、数十にわたる取引所の価格とトークンの入手状況を集約したプラットフォームを提供している。ユーザーが取引所間のトークン価格を横並びに見ることができるプラットフォームは他にもあるが、その多くはデスクトップ用に最適化されたものだ。一方、TabTraderは、iOSとAndroid向けのモバイルアプリが大きな存在感を放っている。
新しいトークンの導入については取引所ごとにアプローチが異なるため、暗号資産トレーダーは複数の取引所のアカウントに登録して、複数のアプリで価格を追跡し、それぞれに複数の通知を設定しているケースが増えている。TabTraderが多くのユーザーに利用されているのは、特定のトークンが一定の値を超えたときや下回ったときにユーザーに通知する、取引所間を横断した価格アラート機能があるためだ。多くの取引所が独自のアプリ内でこの機能を提供しているものの、これらのプッシュ通知の信頼性やカスタマイズ性には一貫性がなかった。
CEOのKirill Suslov(キリル・スースロフ)氏がTechCrunchに語ったところによると、TabTraderアプリには40万人以上のアクティブユーザーがいて、特に欧州とアジアで強い存在感を示しているという。
このスタートアップ企業では、トークンの価格を集計して、ユーザーがアプリで購入する際に取引所からリベート手数料を受け取るという、旅行検索・料金比較アプリのKayak(カヤック)と同じようなモデルを採用している。ユーザーは自分のウォレット情報をアプリに入力しておくことで、接続された取引所で簡単に購入することができるが、スースロフ氏によると、TabTraderがユーザーの資金にアクセスすることはないそうだ。
これらのリベートの他に、TabTraderは、有料版の月額12ドル(約1370円)のサブスクリプションや、広告によっても収益を得ている。スースロフ氏によれば、同社の20人のチームは、有料のマーケティングを一切行わずに、現在の利用者を獲得するまでに成長したという。
何千万人ものユーザーがCoinbase(コインベース)やBinance(バイナンス)のような中央集権的な取引所にアカウントを作っている一方で、TabTraderの最大の好機は、ユーザーが他のユーザーとトークンを迅速に交換できるUniswap(ユニスワップ)のようないわゆる分散型取引所を受け入れることかもしれないと、スースロフ氏は語っている。
スースロフ氏の話によると、各取引所はバックエンドで優れた技術を構築しているものの、フロントエンドのインターフェースはユーザーにとってあまり使いやすくないため、TabTraderのようなアグリゲーターがユーザー体験を合理化することで、ユーザーが初めて分散型取引所を探索できるようにする余地があるとのこと。TabTraderでは、Serum(セラム)、Raydium(レイディアム)、Orca(オルカ)などのSolana(ソラナ)基盤の取引所から始めているという。
「(分散型取引所は)2021年の最もホットな話題です」と、スースロフ氏はいう。「我々はこのロケット船に乗るために賭け金を上げました」。
スースロフ氏はTechCrunchに、TabTraderが100X Ventures(100xベンチャーズ)、Hashkey Capital(ハッシュキー・キャピタル)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、SGH Capital(SGHキャピタル)、SOSV、Artesian Venture Partners(アーテシャン・ベンチャーズ・パートナーズ)から、シリーズA資金として580万ドル(約6億6000万円)を調達したと語った。
画像クレジット:TabTrader
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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)