遅ればせながらYouTubeもトランプ大統領への措置を決定、公式チャンネルへの新規投稿を1週間禁止

米国時間1月6日の米国議事堂乱入をきっかけに、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領が暴動を煽るためのメガホンとしてプラットフォームを使い続けるという脅威に大手ソーシャルメディアが一斉に対応しているが、そうした中でYouTube(ユーチューブ)は最も対応が遅いソーシャルメディアプラットフォームだった。しかし今、同プラットフォームは一時的に新規投稿を禁止する措置を取る。

短いTwitter(ツイッター)スレッドの中で、Google(グーグル)傘下のYouTubeは「現在も続く暴力の可能性の懸念があることから」トランプ大統領のYouTubeチャンネルにアップロードされた新しいコンテンツを削除したと述べた。

YouTubeはまた、少なくとも7日間アップロードを禁止するという1つめのストラク措置を適用したたとも述べた。

この記事執筆時点で、トランプ大統領のYouTubeチャンネルは278万人の登録者を抱えている。

「現在も続く暴力に関する懸念を考えたとき、コメントセクションに安全上の懸念が見つかった他のチャンネルに対して取ってきた措置と同様、当社はトランプ大統領のチャンネルでのコメントを無期限に不可とするかもしれません」とも付け加えた。

削除されたコンテンツについて、そして7日間経った後にトランプ大統領の同プラットフォームへの投稿の禁止を延長するかどうかをどのように決定するのか、TechCrunchはYouTubeに確認している。

YouTubeの広報担当は直近の出来事、そしてこれまでのトランプ大統領の発言に照らして暴力のリスクが増していると判断したと述べ、1月12日にトランプ大統領のチャンネルにアップロードされたコンテンツについて、暴力の扇動に関する同プラットフォームの規約に違反したために削除したことを認めた。

広報担当者はどのビデオコンテンツがコンテンツ削除と1つめのストライクにつながったのかは明らかにしなかった。

YouTubeによると、同プラットフォームは標準の「3ストライク」ポリシーを適用している。このポリシーでは、90日の間にストライク3つとなったらそのチャンネルは永久停止となる。1つめのストライクでは1週間の停止、ストライク2つで2週間の停止、そして3つめのストライクでチャンネルは永久に使用不可となる。

記事執筆時点でトランプ大統領の公式YouTubeチャンネルはこのところ一連のアップロードがあった。ここには、トランプ大統領が2016年の選挙キャンペーン中に約束した「壁建設」が「成功的に完了した」と賛美したメキシコとの国境壁での演説からのクリップ5つが含まれる。

こうした最近アップロードされたなかの1つで「トランプ大統領が先週の出来事を語る」というタイトルの動画では、トランプ大統領は米議事堂を攻撃したサポーターを「暴徒」と呼んでいる。そしてパンデミックやワクチンの展開についてのだらだらと続くコメントに移る前に、自身の政権は「暴力や暴動ではなく、法の支配を信じる」と主張している。

そしてトランプ大統領は法執行機関で働く人々は「MAGA(アメリカを再び偉大な国に)アジェンダ」を支える存在だと主張し、ビデオクリップは「癒し」「平和と冷静さ」「法の執行の尊重」の懇願で終わっている。

国境へ移動する前に記者たちにトランプ大統領が話すクリップはまだチャンネルで閲覧できる。

そのクリップの中でトランプ大統領は、「政治史上最大の魔女狩りが続いている」と自身に対する2度目の弾劾のプロセスを攻撃した。ここではトランプ大統領は米下院議長Nancy Pelosi(ナンシー・ペロシ)氏と米民主党の上院議員Chuck Schumer(チャック・シューマー)氏に言及した。ベールをかけているように聞こえるが標的型の攻撃だ。

トランプ大統領は「私は暴力を望んでいない」と報道陣に最後の警告を投げる前に、「(彼らが)その手続きを進めることで、我々の国にとてつもない危険と怒りを生み出す」と述べた。

YouTubeがトランプ大統領のメガホンを一時停止することを選んだ一方で、Twitterはあまりにも多くの違反をしたとして先週大統領のアカウントを永久停止した。

Facebook(フェイスブック)もまた「無期限」停止という措置を取った。ただ、将来トランプ大統領が大騒動を起こすためにFacebookを使うことができる可能性を残している。

トランプ大統領に行動規範の特例を認め、そして乱用、いじめ、嘘、(直近の)暴動のためにプラットフォームを提供したとして人々の怒りはソーシャルメディアプラットフォームに向けられているが、YouTubeはこれまでのところ、そうした怒りの主要ターゲットとなることをなんとか逃れてきた。

しかしながらトランプ大統領のアカウントの一時凍結は、公民権運動グループがYouTubeへの広告ボイコットを組織すると脅したことを受けてのものだ。

ロイターによると、2020年夏のFacebookに対する主要広告主ボイコットにつながったStop Hate for Profit (利益のためのヘイトをやめろ、SHP)キャンペーンは、YouTubeがトランプ大統領の認証済みチャンネルを停止することを要求した。

「もしYouTubeが我々に同意せず、トランプ大統領禁止で他のプラットフォームの仲間に加わなければ、我々は広告主に訴えます」と、SHP組織者の1人であるJim Steyer(ジム・ステイラー)氏はロイターに述べている。

トランプ大統領に対する措置についての公式コメントの中で、YouTubeは広告主からの予期しない影響についての懸念には言及していない。ただ近年、憎悪に満ち、攻撃的なコンテンツをめぐって広告主からのボイコットに直面してきた。

報道陣へのコメントで、YouTubeは誰がチャンネルを所有しているかにかかわらず常にポリシーを適用してきたと主張し、公的人物にも特例は認めていないと話している。しかしYouTubeは3つのストライクによる使用停止をひっくり返してきたことで知られている。たとえば英国の全国ラジオ局TalkRadio(トークラジオ)は最近、新型コロナウイルス誤情報に関連してストライク3つとなったのちに復活した

TalkRadioの場合、チャンネルの復活はTalkRadioのオーナー、News CorpのRupert Murdoch(ルパート・マードック)会長による介入を受けてのものだったと報じられた。英国の大臣もまた政府の政策のメリットを議論するチャンネルの権利を擁護した。

トランプ大統領の場合、ワシントンでの衝撃的な事件、さらには大統領のサポーターによるオンライン上の暴力的な脅しが続いていることもあって大統領の主張に喜んで乗る政治家の数は減りつつある。

ただ、テックプラットフォームの巨大なマーケットパワーについての懸念はかなり広がっている。プラットフォームは一方的な行動を取って米国の大統領の何百万という人々に配信する力を封じることができる立場にある。

今週初め、ドイツのAngela Merkel(アンジェラ・メルケル)首相はトランプ大統領のアカウントの停止について「問題がある」と述べた。その一方で欧州各国の議員たちはテック大企業に対する規制につながると述べた。

なのでトランプ大統領のレガシー(遺産)が何であれ、ミュートにされたことで激しく罵るのに忙しい大統領は当然のことながら、対象のテック大企業に影響を及ぼす永続的な政策の導入に目を向けているはずだ。

関連記事
Twitterがトランプ大統領のアカウントを永久停止(米議会議事堂暴動から追放までの経緯まとめ)
YouTubeが新型コロナポリシーに違反した英TalkRadioの追放処分を撤回

カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTubeドナルド・トランプアメリカソーシャルメディア

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。