Appleの新しいMac Proは、思わず見とれてしまう。黒いアルミニウムの外殻、円筒形という目新しいデザイン、誰が見ても、ほかのコンピュータと間違えるはずがない。もちろんこの前のMac Proも特徴的なデザインだったが、今度のはフットボールよりもやや大きくて、上部にはジェットエンジンを思わせるへこみがある。しかしその本当の実力は内部にあり、そしてそれは、どれだけ極端なスピード狂をも満足させるだろう。
リビューのビデオ
基本性能/仕様
- 3.7 GHzクァッドコアIntel Xeon E5プロセッサ
- 16GB 1897MHz DDR3 RAM
- AMD FirePro D300デュアルグラフィクスカード, 各2GB RAM
- 256GB SSD(PCI)
- Thunderbolt 2.0ポート x 6, USB 3.0 x 4
- 802.11ac + Bluetooth 4.0
- 希望小売価格: 2999ドル
- 製品情報のページ
グッド
- Macの既存の全機種中で最速
- 工業デザイン美術館の展示品が自分の家にあるみたい
バッド
- お値段高すぎ
- ディスプレイその他全部自前
デザイン
このMac Proのデザインがユニークでないという人は、ほとんどいないだろう。初期のスターウォーズのダース・ヴェーダーのような雰囲気があり、口の悪い人は“ごみ缶Mac”と呼ぶかもしれない。間近でよく見ると、表面のアルミニウムのクールな感触、反射性はあるけどぎらぎらしない、…見る者に安定感と安心感を与える。
〔ここにスライドが表示されない場合は、原文を見てください。〕
現代のデスクトップコンピューティングの世界に蘇ったモノリスみたいだが、謎のモノリスが登場するあの映画のように未来的でもある。ここに込められているすばらしい技術的成果は、みんなのこれからの、毎日のコンピューティングニーズに応えるものだから。
デザインがこれだけきれいだと、このコンピュータが毎日、何かの実用的な仕事をしていることを、忘れてしまうかもしれない。AppleはGoogleのような場外ホームランねらいの企業ではないけど、このMac Proのデザインと性能はまさに、目の前にある未来だ。
この新しいMac Proのモジュール構造は、これまでのバージョンと同じではない。たとえば、3.5サイズのHDDは交換不可だ。一方、アンロックしてから、外殻をスライドして外すと、RAMベイへのアクセスはフリーで、最大16×4=64GBまで拡張できる。SSDも、Apple固有の規格だが拡張可、GPUも(未来のApple固有の機種に)アップグレード可能だ。外部拡張性がまたすごくて、最大スループット20Gb/sというThunderbolt 2は4Kビデオのディスプレイと伝送を同時に行えるだろう。そのポートが6つもあり、さらにUSB 3.0が4つある。
しかもApple独自のサーマルコアを内蔵しているから、これだけの性能の、プロ仕様のワークステーションにしては、サイズが小さいし、しかも静音だ。機械音は、耳をよっぽど近づけないと聞こえない。音といっても、かすかなハム音で、これに比べるとぼくのRetina MacBook Proを酷使しているときの音の方がよほどうるさい。上部からわずかに排気が出ているが、一日中Final Cut Pro漬けになってるようなときは、その蒸気を見て気が紛れるかもしれない。
性能
仕事で毎日コンピュータを使う人にとって、この新型Mac Proは思考するコンピュータのように思えるだろう。とにかく、どんなインプットに対しても即座に応答がある。Xeonプロセッサから、PCIベースの超高速なSSDから、あるいはデュアルのGPUから、それらの応答はどれも、従来のどのMac(最新のiMac, Retina MacBook Pro)より速い。Webを閲覧するとか、写真をiPhotoにインポートするなど日常的な仕事でも、一度このMac Proを経験すると、もうほかの機種に戻る気がしない。
しかしもちろん、Mac Proはプロ用のマシンだ。たとえば、映画作家が高度なグラフィクス(CG/CGI)や3Dアニメや長編映画を制作編集するために使う。写真家の非常に高度な要求にも応える。極端な高解像度でも扱えるし、巨大なファイルの集合をバッチで処理できる。そしてLogic Pro Xとハイスピードで広帯域な外部機器を使って、音楽プロデューサーは次のヒット曲を作り出す。
ぼくの場合は、Final Cut Proが必ずMacの上のトラブルメーカーだった。でもMac Proでは、FCP Xが嘘のようになめらかで速くて、レンダリングもパブリシングも瞬(まばた)きする間に終わる。2分あまりの1080pのビデオの最終エディットが10秒で終わったときには、一瞬、エラーかと思ったぐらいだ。
ものすごくオタクな読者は、今度のMac ProのGeekbenchのスコアを、あっちやこっちでご覧いただきたい。何もカスタマイズしていないベースラインだから、最低でもこれぐらいは行く、という意味だ。
機能
6つのThunderbolt Displaysを同時に使えるのは、今回のMac Proが初めてだ。ぼくは、Thunderbolt Displaysを2台、21インチのiMac、それにHDMIポートにWacom 13HDをつないだ状態で試したが、このAppleの最高級機は、なにごともないかのように動いている。作品の出力やほかのビデオなど、複数のビデオを同時に見ながら仕事をするビデオ作家のマシンは、これできまりだ。6つのサイトや6台のカメラをリアルタイムで同時に見ていたい、という情報マニアやメディアの現場も、やはり、このMac Proを欲しいだろう。MacBook ProやiMacでは、ディスプレイ2~3台がせいぜいだから。
また、一部のハードウェア(RAM、SSD、GPUなど)が交換可能であることは、この今既に未来的なマシンの未来性を、より強化する。別の言い方をすると、このMac Proは、数年後にも、古くなった感じがしないのだ。性能的に。
ささいなことのようだが、ぼく的にすごく気に入っているのは、ポートがライトアップすること。デバイスをポートに接続するとき、そして外すとき、間違える心配が少なくなる。このように、細部まで配慮が行き届いていることも、3000ドルという価格をユーザに納得させる価値の一部だね。
結論
このMac Proは、能力がずば抜けて高い。ぼくはコンピュータを使って、ある程度高度な作業をする方だが(ビデオ編集、大量のPhotoshop作業、CG/CGI、ポッドキャストの制作)、そうでなくてふつうのコンピュータユーザでも、度肝を抜かれるだろう。これらの仕事はRetina MacBook Proでも十分にできるのだが、このMac Proは、苦労の気配をまったく見せずに、ふつうに淡々と、当たり前のようにさっさとやる。
今時(いまどき)、コンピュータを買うことが仕事上の有効な投資であることは珍しい。むしろ今ではそれは、2年に一度買い換える消耗品だ。そんな時代に、このMac Proだが、iPhone 5sがそうであったように、2年よりももっと長い未来を視野に入れている。たとえば具体的には、ビデオ作家が4Kをやらなければならなくなったとき、このマシンの投資効果は生きつづけるのだ。消耗品として廃棄する必要がない。
グレイのタワー型Mac Proに古さを感じはじめた人や、高性能高機能ならどんだけ高くても買う、という人にとって、今度のMac Proは文句なく‘買い’だ。でも、われわれふつうの人間は、AppleのOS X機ならそれほど高価でなくても、十分満足できるだろう。
[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))