2040年の完全ゼロエミッションを約束するUberが車両の電動化に850億円を投入

ライドシェアサービスの最大手Uber(ウーバー)は、2040年までに完全なゼロエミッションを実現すると約束し、2025年までに契約ドライバーの車を電気自動車に切り替えさせるための専用の予算として8億ドル(約850億円)を確保する計画だ。

Uberによると、事業展開している米国、カナダ、ヨーロッパの各都市での移動を100パーセント電動化する目標を定め、マイクロモビリティー事業の電動化にもさらなる投資を行う予定だという。さらに、企業活動全体から排出される二酸化炭素も含め、2030年までには完全にゼロエミッションにするとUberは話している。

予定通りに進めば、Uberの事業は、パリ協定が目標に定めた2050年より10年前倒しで必要な条件を満たすことになる。

その鍵となるのは、新規と既存事業の拡大を含む4つの取り組みだと同社は声明で説明した。

第1のステップは、米国とカナダの15の都市で開始するUber Green(ウーバー・グリーン)だ。客は、追加料金を支払うことで、電気自動車またはハイブリッド自動車を選んで呼べるようになる。2020年末までには、世界の65の都市で同サービスが導入される。Uber Greenで乗車した利用者は、Uber Rewards(ウーバー・リワード)の獲得ポイントが、通常のUberX(ウーバーエックス)を利用した場合の3倍になると同社は話している。

世界をよりグリーンにするためのUberの第2のステップは、車両を電気自動車に切り替えるための予算8億ドルの確保だ。この切り替えには、グリーンな車両を選択した利用者が支払うサーチャージ1ドル(約106円)と、ロンドンとフランスのクリーンエアー計画のために同社が料金から徴収する資金も活用される。ヨーロッパの都市で営業するドライバーの車の電動化を目的とした15セント(約16円)のサーチャージは、すでに2019年1月から徴収されている。

2018年2月22日木曜日、ニューデリーで開かれたイベントで語るUber Technologies Inc.(ウーバー・テクノロジーズ)のCEO、Dara Khosrowshahi(ダラ・カスロウシャヒ)氏。日本を訪れた間、カスロウシャヒ氏は撤退するとの憶測に反して、特定のアジア市場においても野心は縮小しないと明言した。画像クレジット: Anindito Mukherjee/Bloomberg via Getty Images

米国とカナダのドライバーの意欲を高めるために、Uberは、Uber Greenの利用客が支払いを完了した乗車1回につき50セント(約53円)の手当てをドライバーに支払うことにしている。電気自動車を使っているドライバーには、Uberから直接、別の報酬ももらえる。電気自動車での乗車が完了するごとに、1ドル50セント(約159円)の手当てが上乗せされるのだ。

また、米国とカナダではGMと、ヨーロッパではルノー・日産との提携により、Uberのドライバーは電気自動車を割り引き価格で購入できるという優待制度もある。Avis(エイビス)とも協力して、米国のより多くのドライバーが電気自動車をレンタルできるようにする計画もある。同時にBP(ビーピー)、EVgo(イーブイゴー)、Enel X(エネル・エックス)、EDF(フランス電力)が運営するIzivia(イズビア)、PowerDot(パワードット)といった企業と協力して新しい充電ステーションを増やす予定だと同社は話している。

Uberはまた、ロボットによるバッテリー自動交換のアイデアを復活させ、新しい車両への充電に関する不安を取り除く取り組みも進めている。現在は、独自のバッテリー交換技術を開発するサンフランシスコの若いスタートアップであるAmple(アンプル)と、インドの電気自動車運用企業であるLithium Urban Technologies(リチウム・アーバン・テクノロジーズ)と協力している。

さらに、Uberの既存のマイクロモビリティーネットワークをベースに、Lime(ライム)が提供するバイクとキックスクーターの、このネットワークへの統合を深め、安全性の確認が取れ次第、シェアリング事業を拡大する考えだ。加えて、Journey Planning(旅行プラン)プログラムの機能を拡大して、料金帯、スケジュール、鉄道の駅から、または駅までの経路などが調べられるようにする。アプリで公共交通機関のチケットが買えるサービスは、10の都市で始まっている。さらにUberは、シカゴとシドニーで、行きたい場所までの車と公共交通機関を使った旅行プランが立てられる新機能を公開した。

最後にUberは、2017年から2019年までの米国とカナダでの同社の事業による二酸化炭素排出量を分析した初の気候評価と業績報告を発表した。1人乗車の場合よりも効率が高いという同社が得た結果は当然のものと思える。しかし、平均的な乗車人数の場合よりも排出原単位は高いことも同社は公表している。つまり、自家用車に2人が乗った場合よりも、Uberのドライバーが客を探して走っているときのほうがカーボンフットプリントが多いことを意味している。

電気自動車への移行の勘定を乗客に押しつけるのは、あまりいいやり方とは思えない面もあるが、これらの取り組みはすべて、カーボンフットプリントを減らすための、まだまだ長い道のりを進もうとするUberの前向きな一歩だ。

カテゴリー:モビリティ

タグ:ライドシェア Uber 二酸化炭素 電気自動車

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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