長期的な医学研究を念頭に置いて設計されたStudy Watchは、ふつうのスマートウォッチとはまったく異なる要求に応えている。このデバイスを設計したVerilyはGoogleの持株会社Alphabetの傘下で、多発性硬化症の観察やグルコースレベルをモニタするコンタクトレンズなど、本格的な医学研究をターゲットにしている。
Study Watchも重要な研究を支えることが目的で、Personalized Parkinson’s Projectなど、今同社が抱えているプロジェクトのために生命徴候(体温、脈拍などの基本的測度)を集める。ちなみにPersonalized Parkinson’s Projectは、疾病(この場合はパーキンソン病)の進行のパターンを調べて、治療法の手がかりを見つけるプロジェクトだ。
この一見して平凡なウェアラブルは、今後Baselineプロジェクトにも使われる。これは2014年に発表されたプロジェクトで、175名の生命徴候を長期にわたって調べ、“健康な人間”をこれらの測度で定義しようとする試みだ。
Googleはそのプロジェクトを、自動運転車や気球によるインターネット接続サービスなどと並ぶ“ムーンショット”(moonshot, 月へのロケット打ち上げ, 夢のような超未来的プロジェクト)と呼び、批判を浴びたこともある。でも、自動運転車ほどの派手さはないものの、Verilyの大風呂敷的なミッション声明には合っている: “健康データを集めて整理し、それらの健康データから得られたインサイトをよりホリスティックな診療に用いる介入やプラットホームを作る”。 〔この場合は、医学用語としての‘介入’〕
だからStudy Watchには、Googleの消費者向け電子製品の華やかさはないが、でも同社の説明からは、主力製品であることが伺える。ごくふつうの腕時計としても使えるこの地味なデザインは、毎日のデータ収集を気にならないものにする狙いもある。しかも、それほどまずいデザインでもない。
このデバイスは、特殊な設計により、リアルタイムの計算処理にもデータを供給できる。それにセンサーの数がとても多くて、そこらの心拍計つきスマートウォッチとは一線を画している。
“複数の生理的センサーや環境センサーを用いて、心血管疾患や運動失調などさまざまな分野の研究に使えるデータを測定する”、とVerilyの発表声明は言っている。“集めるデータは、心電図、心拍、皮膚電気の変化、慣性運動などだ”。
長期的な使用に耐えるためには、電池寿命が長いことが重要だが、このデータ収集ウォッチは常時onのeインクふうディスプレイを使って、1週間の寿命を実現している。内蔵ストレージも大容量だから、頻繁にシンクしなくてもよい。そのことも、このデバイスの‘気にならなさ’に貢献している。
このデバイスの発表は、タイミングも良い。一日前には、Appleが糖尿病患者のグルコースレベルをモニタする秘密プロジェクトが、うわさで広まったばかりだ。