アメリカのAmazonが、プライム会員向けに新たなサービスをアナウンスした。ファッション関連のサービスで、興味を引いたものをなんでもオーダーし、届いたものの中で気に入ったもののみを購入することができるというものだ。この新たなサービスの名前はプライム・ワードローブ(Amazon Prime Wardrobe)という。現在のところはベータ段階ではあるが、登録しておけば、サービス開始時に通知を受けることができる。
利用する際には、大人向けないし子供向けの、洋服・靴・アクセサリーなどの「ファッション」カテゴリーから3ないし15のアイテムを選択する。選択したアイテムは「ワードローブボックス」(Prime Wardrobe box)として送付される。まとめて送るにあたっての追加料金(ボックス費用など)はかからない。カルバンクライン、リーバイス、アディダス、セオリー、タイメックス、ラコステなどなど、ブランドも自由に選ぶことができる。
ワードローブボックスが届けば、7日間のうちに試着してみることができる。合わなかったり、気に入らなかったものは、送られてきたボックスに入れて送り返すことになる。返却用のボックスには、近くのUPSが発行したプリペイドラベルがついていて、集荷してもらったり、あるいは営業所に持ち込むことができる。ワードローブボックスで送られた商品の3ないし4つを購入すれば、購入金額は10%割引となり、5つ以上を購入するならば20%オフになる特典もついている。支払額はもちろん購入した商品についてのみで、追加の手数料などは一切かからない。プライムメンバーは追加料金なしで利用することができるのだ。
なお、これらの情報は「本日、Amazon Fashionはプライム・ワードローブをアナウンスしました。Amazonでのファッション商品購入に新たな魅力をもたらすものです。購入前に試してみることができるようになったのです」という、Amazonからの簡単なメールによりもたらされたものだ。
ファッション関連の商品が思った様子と違ったり、購入を後悔してしまうようなことはありがちなことだ。ZapposはAmazonが買収する前から返品システムを特徴のひとつとしてアピールしていた。Amazonは自らが揃える幅広いファッションアイテムについて返品システムを充実させることにより、より気軽に買い物を楽しめるようにしようとしているわけだ。送られた商品の多くを購入すれば、割り引くというサービスもおもしろい。利用者としては、少数のアイテムしか選ばない場合でも、UPSとのやり取り時間が増えるだけだ。comScoreのデータによれば、Amazonのファッションジャンルでの売上割合は、2013年の15.4%から2016年の17%に拡大中だとのことで、新たなサービスが大きな収益源として成長する可能性はある。
プライム・ワードローブと同様の返品サービスは、Stitch Fixなど多くのサービスが行なっていることだ。ただ、これまでの類似サービスに比べると、Amazonは(多くの男性がそうであるように)買い物に出かけるのがあまり好きでないという人をターゲットとして重視しているようだ。「おすすめアイテム」などを送って興味をもってもらうのではなく実際に関心をもったものを送るようになっている。ただ、プライム・ワードローブがうまくいくようならば、Stitch FixやTrunkClubなどのファンション関連アイテムのデリバリーサービスを買収して、サービス拡大に乗り出そうとするかもしれない。
とりあえずのところは、プライム・ワードローブの一番のウリはその簡単さにあるといえるかもしれない。手持ちのアイテムとちょっと違ったものが必要になった場合にも、Amazonの商品層の厚さや迅速な配達により、気になるものをすぐにオーダーしてみることができるようになる。気になったものの、結局気に入らなかったというような場合でも失うものは何もない。通販でファッションアイテムを購入することのリスクや面倒をできる限り減らそうとするサービスなわけだ。
「試着」が気軽ができるようになり、あるいはリアル店舗の魅力を薄めることにもなるかもしれない。自分に合わないものをオーダーしてしまっても気軽に返品できるわけで、Alexaを活用する幅も広がるかもしれない。
さらにいえば、プライム・ワードローブはAmazon Echo Lookとの親和性も高いものだといえる。全身写真で洋服の様子をチェックすることができるし、似合うかどうかをAIに判断してもらうStyleCheckアプリケーションなどを使って、購入判断をすることもできるだろう。すなわち、プライム・ワードローブはAmazonが扱うファッション関連サービスの拡大に大いに寄与するものとなる可能性もあるわけだ。
10年ほど前に、ジェフ・ベゾスは「2000億ドル企業になるためには、ファッションや食料品を充実させていく必要がある」と述べていた。すでに金額的には目標を上回っているわけではあるが、ファッション関連サービスを充実させることで、Amazonはさらなる成長を成し遂げようとしているわけだ。さらに、買収したWhole Foodsを活用して、ファッション関連アイテムの実店舗展開に乗り出すということもあるのかもしれない。
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(翻訳:Maeda, H)