Atlantic Labsが「気候」と「健康」に取り組む約130億円規模のフードテックファンドFoodLabsを設立

FoodLabsのクリストフ・F・メア氏とパトリック・フーバー氏(画像クレジット:Viktor Strasse)

テック業界が気候と持続可能性に軸足を移しつつあることを示す最新の兆候として、長年のテック投資家であるChristophe F. Maire(クリストフ・F・メア)氏が率いるベルリンのファンドAtlantic Labs(アトランティック・ラボ)の分社であるAtlantic Food Labs(アトランティック・フード・ラボ)が、食品、健康、持続可能性に関わるスタートアップに投資する1億ユーロ(約130億円)規模のフードテック専用ファンド「FoodLabs(フードラボ)」として再出発することとなった。

2016年に設立されたAtlantic Food Labsは、Infarm.com(インファーム.com)、SanityGroup.com(サニティグループ.com)、Formo.bio(フォルモド.bio)、Mushlabs.com(マッシュラボ.com)、Mitte.co(ミッテ.co)、Choco.com(チョコ.com)、Stenon.io(ステノン.io)、Gorillas.io(ゴリラ.io)などのスタートアップへの投資を行ってきた。FoodLabsは、この新しいファンドで、この分野にさらに力を入れていく。

知的財産と「農業、生産、流通、人の健康から廃棄物ゼロの分野まで、地球から地球へ、より効率的で持続可能な食品産業に向けたスケーラブルなデジタルビジネスモデル」に焦点を当てている。

メア氏は「食品産業は世界最大の産業であり、世界の温室効果ガス排出量の4分の1以上を占めています。食品の生産と消費の方法を、より効率的で持続可能なものへと変革することは、地球と人々に大きな影響を与えます。私たちは、テクノロジーと起業家精神が、現代の重要な課題に取り組むための鍵を握っていると強く信じています。フードファンドでは、より健康的な栄養価、持続可能な農業、食料へのアクセス改善への道を切り開く革新的な企業を作る最も野心的な創業者を支援します」と述べている。

私との電話で、彼はこう語っている。「5年前にFoodLabsを立ち上げたのは、食品産業は人間の健康に最も関連する産業の1つである一方、気候に最も無関係な産業の1つでもあると感じたからです。私は、今日の重要な問題を解決するために、起業家が力を貸してくれると信じています。当初の投資額は約1500万ドル(約16億9300万円)と比較的小規模なものでしたが、その過程で、私が想像していたよりもはるかに大きな可能性を秘めていることがわかりました。そこで今回、1億ユーロ(約130億円)のファンドを立ち上げました。私にはすばらしいチームと、このミッションに本気で取り組んでいる人たちがいます。これは、私のキャリアの中でも最高の活動だと思っています。ここはすばらしい空間で、とても魅力的です」。

新ファンドの最初の出資企業は以下の通りだ。

  • Foodji(ドイツ):新鮮で健康的な食品の持ち帰りを可能にするデジタルソリューション
  • Habitual(英国): デジタルヘルス関連のスタートアップで、糖尿病の改善を消費者に直接提供する
  • Kitch (ポルトガル):デリバリーサービスのためのソフトウェアを提供する
  • Klim (ドイツ):炭素農法で農業をより持続可能なものにすることを使命とする
  • getVoila(ドイツ): ヨーロッパのベストレストランの高級料理を我々のリビングルームに届ける
  • Microharvest(ドイツ)持続的に生産される栄養素やタンパク質へのアクセスを提供する
  • Myota(スイス):男性の健康に対する新たなアプローチを提供
  • Yababa(ドイツ):東洋料理のファストデリバリー企業
  • The Plate:料理創作プラットフォーム
  • Airfarm(ドイツ):農家向けにデジタルプラットフォームを提供するアグリテック企業

また、科学者を対象とした現地起業家プログラムの立ち上げも発表している。

メア氏は「私たちは、ヨーロッパがフードテック&アグテックのイノベーションの中心地になると強く信じています。ヨーロッパは、科学研究やエンジニアリングの専門知識では常に強みを持っていますが、起業家支援システムでは遅れをとっています。私たちの使命は、起業家精神、大学や研究機関の科学的ノウハウ、そして業界の主要企業を結集し、食品業界におけるイノベーションと持続可能性のための国際的なプラットフォームを構築することです」と述べている。

FoodLabsのゼネラルパートナーであるPatrick Huber(パトリック・フーバー)氏は次のように述べている。「ここ数年、私たちは、優れた企業を作るために参加してくれた科学者たちに感銘を受けてきました。科学者と起業家のコラボレーションが、フードバリューチェーンに抜本的なイノベーションをもたらす鍵になると強く信じています」。

メア氏は「私たちはまず、より多くの炭素を回収できる農業や農法から始めます。例えば、パーマカルチャーに力を入れている会社がありますが、これは一般に想像されているよりもはるかに大きなことだと思います。また、水産養殖、新たなタンパク質、新たな生産方法、新たな流通方法にも注目しています。その他クイックコマース、現地調達、新しい消費者行動など、食と健康についてです。というのも、この分野の魅力は、起業家側からの働きかけだけではなく、消費者側からの働きかけが非常に大きいからです」。と語ってくれた。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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