米Wall Street Journal紙によれば、AT&TによるTime Warner買収の交渉がいよいよ大詰めを迎えたようだ。この買収が完了すれば、通信キャリアであるAT&Tが非常に高いコンテンツ製作能力をもつことになる。TechCrunchの親会社であるVerizonを含む他の通信キャリアたちもまた、ネットワークを届けるという役割だけでなく、コンテンツと顧客をつなげる役割を持とうとしている。
WSJが伝えたところによれば、今週末にも今回の交渉がまとまる見込みだ。ただし、それでもまだ最終決定というわけではなく、後になって交渉が決裂したり遅延される可能性は残っている。Time Warnerは子会社にTNT、CNN、TBS(Turner Broadcasting System)、HBOといった放送局を抱えており、同社の衛星放送やブロードバンド・サービスを支えてきたプレミアム・コンテンツの所有権のうちいくつかはAT&Tに渡ることになるだろう。
通信キャリアであるAT&TによるTime Warner買収は、アメリカ市場では特殊なことのように思われるかもしれない。しかし、その他の国々を見てみると通信キャリアやTVサービスのプロバイダーが顧客に届けるコンテンツも所有している例は多い。例えば、カナダの通信業者であるRogersやBellは国内のスポーツチームや放送局をもつだけでなく、HBOなどのアメリカの放送局が製作したコンテンツの放映権なども所有している。
もちろん、今回の買収案に対して消費者が特別な関心を持つことはないだろう。なぜなら、今回の買収が成立したとしても、それは通信キャリアが彼らのバーチャルなネットワーク配線を通して、誰に、何を、そしていくらで届けるかということに関してさらに大きな決定権を持つだけに過ぎないからだ。しかしながら、今回のような買収は通信キャリアにとっては重要なことだ。他の利益のあがるサービスに比べて彼らの通信事業が陳腐化してしまうのを避けるだけでなく、GoogleやFacebookが将来的に無料で提供する可能性のある通信事業だけでビジネスを続けるのはリスクであると考え、各通信キャリアは彼らが提供するサービスの多様化を図ろうとしているのだ。それらの理由に加え、インターネットへのアクセスが当たり前のものとなりつつある今、それに対する規制によってインターネット通信事業から得られるマージンが地に堕ちる可能性もある。
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