自社プロダクトの資料ダウンロードが起こった瞬間に、その資料を閲覧している企業担当者のすぐ近くにいる営業マンに「○○ビル5階に訪問してご説明すべき」とスマホの地図で示せたら良くないだろうか?
最近横浜から東京・日本橋へオフィスを移転するとともに社名も変更したUPWARDがやっているのは、まさにこのCRMと位置情報の統合だ。マーケティング・オートメーションツールやCRMといったツールには、今のところ地図・位置情報を扱うレイヤーが欠けている。
2002年創業で受託中心の開発会社だった「オークニー」は社名を「UPWARD」へ変更し、改めて自社プロダクトで勝負する。受託開発中心だった横浜時代に区切りを付け、Draper Nexus Venture Partnersと日本ベンチャーキャピタル(NVCC)から総額2億円の資金調達を行ったことを今日発表した。
UPWARDはCRMと地図・位置情報の連携で実現したフィールドセールス向けのクラウドサービス。ツールとしては、iOSアプリがあるほかモバイルブラウザで動くHTML5版がある(次期プロダクトではReact Nativeの採用を検討しているそうだ)。すでに大手メーカーやサービス業を中心に、約140社でUPWARDは導入されている。グリコ、ダスキン、アサンテなどが顧客企業の例だ。直近での導入事例としても大手機械メーカーに全国で約1600人いるフィールドセールスマンが利用する行動支援サービスとして採用された。この機械メーカーでは一人の営業マンの担当エリアが大きいためUPWARDの採用は効率化のメリットが大きいという。
UPWARDの金木竜介CEOは、「都内で動く人のナビゲーションが提供されてない。いまは住所で検索して地図を見てるだけ。それで訪問している」と現状の非効率を指摘する。UPWARDではエリアごとの集計や営業計画の立案、効率的な訪問ルートの計算といったことができる。移動時間も考慮して直帰の設定も可能だ。「顧客とのアポ設定やターゲットリストの絞り込みは時間がかかっていて、これをマネージャーがやってたりするのが現状です。ここをオートメーション化していく」(金木CEO)。UPWARDは、もともとオークニーの受託時代から主にオープンソースを使ったサーバーサイドの地図情報システムに取り組んでいて「ある区画の顧客情報だけを引っ張ってくる」というような処理が得意という。
UPWARDは2011年から動作しているプロダクトで、2013年にはセールスフォースと資本提携して3000万円の投資を受けた。その後、シリーズAでみずほキャピタルから3000万円、2014年のシリーズBでサイバーエージェント・ベンチャーズとSMBCから8000万円、2016年に入って4月と6月にDraper NexusとNVCCからそれぞれ1.5億円、5000万円の合計2億円を調達した形だ。ピーク時30人だったときよりも社員数は12人と減ったが「筋肉質となった」と金木CEO。受託開発から急速な成長を目指すスタートアップへの脱皮には、変化に伴う「成長痛」もあったようだが、CRMへの位置情報レイヤーの統合は興味深い領域。セールスフォースから出資を受けていることもあるし、日本市場にとどまらず、新社名どおりUPWARDが上向きにスケールできるか注目だ。