EV充電ステーションの稼働を支援するChargerHelp!が約3億円を調達

今後、電気自動車が普及すれば、何千台もの充電ステーションが必要になる。それらは単に設置されるだけではなく、機能していることが求められる。しかし、現在のところそれは実現されていない。

何か問題が起きて機能が果たせなくなった時、充電ステーションがエラーを発信したり、ドライバーが報告しないと、ステーションの運営会社は気がつかない可能性もある。電気自動車用充電ステーションのオンデマンド修理アプリ「ChargerHelp!(チャージヘルプ!)」を共同設立したKameale C. Terry(カミール・C・テリー)氏は、こうした問題を目の当たりにしてきた。

ある顧客の充電ステーション運営会社は、その充電ステーションの利用率が低いのは、そこの地域に電気自動車が少ないからだと思い込んでいたと、テリー氏は最近のインタビューで振り返っている。しかし、問題はそこではなかった。

Evette Ellis(エベット・エリス)氏と共同で設立した会社でCEOを務めるテリー氏は「そこには誰も乗っていないクルマが停まっていて、ステーションの周りは泥だらけでした」と語る。

ChargerHelp!のサービスに対する需要は、顧客や投資家を惹きつけている。同社はTracks VC(トラックスVC)、Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)、JFF、Energy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)、The Fund(ザ・ファンド)などの投資家から、275万ドル(約3億300万円)を調達したと発表した。今回のラウンドで、2020年1月に設立されたこのスタートアップは、ポストマネー(資金調達後)で1100万ドル(約12億1300万円)と評価されている。

この資金は、同社のプラットフォームの構築や、現在の27人を超える新たな従業員の雇用、サービスエリアの拡大に使用される予定だという。ChargerHelp!は、充電器メーカーや充電ネットワークプロバイダーと直接連携している。

「今のところ、ステーションが故障しても、トラブルシューティングのガイダンスは実際ありません」と、テリー氏はいう。具体的な問題を把握するためには、誰かが現場に出向いてステーションの診断を行う必要があると、同氏は指摘する。現場に着いたら、技術者はデータを事業者と共有し、適切な補修部品を注文する、という手順を踏むのが一般的だが、現状ではこれがしばしば行われていないという。

ChargerHelp!は、オンデマンドの修理アプリであると同時に、顧客のための予防保守サービスとしても機能する。

パワーアップ

ChargerHelp!のアイデアは、テリー氏がEV Connect(イーブイ・コネクト)でカスタマーエクスペリエンスの責任者やプログラムのディレクターなどを務めた経験から生まれた。この期間に彼女は12社の充電器メーカーと仕事をしたことで、充電器の内部構造やよくある問題点などの知識を得ることができた。

関連記事:電気自動車充電インフラの世界標準化を目指すEV Connectに三井物産などが戦略的投資

ここで彼女は、EV充電器市場のあるギャップに気づく。

「充電ステーションが故障しても、なかなか現場に人を向かわせることができないのです。というのも、問題のほとんどは通信の問題、破壊行為、ファームウェアの更新、部品交換など、電気的なものではないからです」とテリー氏は語る。

だが、充電ステーションの問題を解決するには、電気工事業者を使うのが一般的だった。テリー氏によると、これらの電気的でない問題を修理するため、電気工事業者を現場に呼ぶまでに30日もかかることがあったという。

テリー氏は、彼女が働くロサンゼルスにある充電ステーションで問題が発生した場合、自分の手で解決することもあった。

ソフトウェアや修理に関する知識はなかったが「交換しなければならない部品があれば、自分で交換していました」と、テリー氏はいう。そして次のように続けた。「私にできることなら、誰にでもできると思ったのです」。

2020年1月、テリー氏は会社を辞め、ChargerHelp!を起ち上げた。初めて起業家となった同氏は、Los Angeles Cleantech Incubator(LACI、ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)に参加し、EV充電器の修理方法を教えるカリキュラムを開発した。そこでLACIのキャリアコーチであり、ロングビーチのジョブコープセンターにも勤務していたエリス氏と出会う。エリス氏は現在、ChargerHelp!のチーフ・ワークフォース・オフィサーを務めている。

その後、テリー氏とエリス氏はElemental Excelerator(エレメンタル・エクセレレーター)のスタートアップインキュベーターに受け入れられ、約40万ドル(約4400万円)の助成金を調達。Tellus Power(テラス・パワー)と予防保守に重点を置いたパイロットプログラムを開始し、EV Connect、ABB、SparkCharge(シャークチャージ)などのEV充電ネットワークやメーカーと契約を結んだ。テリー氏によると、現在は7人の従業員からなるコアチームを雇用し、最初の技術者を育成しているという。

採用方針

画像クレジット:ChargerHelp

ChargerHelp!では、従業員を見つけるために人材育成のアプローチをとっている。同社では、コホート(グループ)単位での採用しか行っていない。

テリー氏によると、電気自動車サービス技術者の最初の募集では、1600人以上の応募があったという。そのうち20人がトレーニングを受け、18人が最終的にカリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ニューヨーク、テキサスなど6つの州でサービス契約を結ぶために採用された。トレーニングを受けた人には奨学金が支払われ、2つの安全ライセンスを取得できる。

このスタートアップ企業は、4月に第2回目の募集を開始する予定だ。すべての従業員はフルタイムで、時給30ドル(約3300円)が保証されており、会社の株式も与えられる。ChargerHelp!は、同社が技術者を必要とする地域の労働力開発センターと直接連携している。

関連記事:次世代のEV充電ネットワーク構築を目指すSparkCharge

カテゴリー:モビリティ
タグ:ChargerHelp!電気自動車充電ステーション資金調達

画像クレジット:ChargerHelp

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。