音楽動画をコラボ制作できるFacebook(フェイスブック)の実験的なアプリCollab(コラブ)が米国時間12月14日、ベータテストを経てApp Storeで正式リリースされた。このアプリは同社のR&DグループであるNPEチームが手がける数多くのアプリの1つだ。同チームはフェイスブックのソーシャルメディアにおける次の策に最終的に影響を及ぼし得る新しいアイデアの試験を専門としている。Collabそのものは、パンデミックによりユーザーが在宅を余儀なくされ、オンラインで楽しむ新しい方法を探さなければならなくなった2020年5月下旬に登場した。
ミュージシャンにとって、パンデミックはファンとつながる主要な方法だったライブコンサートの消失を意味した。ミュージシャンたちもまた、そうしたつながりを維持するためにコンサートやジャムセッションをライブストリームするという実験を行うためにオンラインプラットフォームに目を向けた。と同時に、TikTok(ティックトック)を中心にショート動画の提供も盛んになった。TikTokにはduetやStitchといったコラボ機能があり、これを使って面識のないユーザーたちは互いのコンテンツで協力することができる。
Collabはショート動画と現代のソーシャルメディアのコラボという要素とともにこの分野に参入したが、主に音楽にフォーカスしている。
アプリでは「collab」は長さ15秒の3つの動画を選んだもので、互いにシンクする。たとえばそれぞれの動画の中で演奏したり歌ったりするギタリスト、ドラマー、そしてシンガーで構成されるcollabがある。ユーザーは誰かの動画に合わせて演奏してcollabを制作することができる。もし音楽の経験がなければ、利用可能なものの中から異なる動画を選ぶのに3列のうちの1つをスワイプすればいい。
Collabを立ち上げると、こうした「collab」の終わりなきスクローリングフィードが表示される。ジョインしたりミックスしたりしたいものが見つかるまでスワイプできる。もし一緒に演奏したいミュージシャンが見つかったら、そうしたミュージシャンが新しいクリップを投稿したときに通知を受け取れるようお気に入りに加えることが可能だ。こうしてメインフィードをパーソナライズする。
インディーポップのアーティストであるmorgxnは2020年初めに展開されたベータ版Collabに参加したミュージシャンの1人だ。
「今年、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)が彼女の曲『Bad Guy』は私の曲『Home』にインスパイアされたと投稿した(Pop Crave記事)その日に、私はレコード会社に契約を打ち切られました。隔離生活に入るときにその惨事が起こりましたが、その一方でインターネットは私に自信を与えてくれました」。
morgxnはCollabで曲「Wonder」をリリースすることを決め、ファンに一緒に演奏して動画を制作しようと呼びかけた。この曲はいまでは4300万回再生されている。Collabのおかげでスペイン語版すらある。
「あらゆるものが崩壊した今年に得たことといえば、すべてのことを行う新しい方法を見つけるようインスパイアされたことです」と同氏は話す。「ジャンプすればとんでもなくエキサイティングで目新しいものを見つけるかもしれません。それがCollabで学んだことであり、興奮しています」。
ベータ版の間、フェイスブックはアプリのオーディオシンク能力やテクニカル面を改善した。
Collabアプリは、ユーザーのクリップを列に入れ込むことができるようにするツールをアプリ内で提供することでオーディオや動画のシンクの複雑な部分を引き受ける。結果としてCollabは完全にシンクする。フェイスブックはまた、さまざまな状況でCollabを最適化するために何十ものヘッドセットやコンフィギュレーションをテストした。いまユーザーはキーボードやギター、ドラムキットといった電子楽器の音楽をレコーディングに取り込むのに外部のオーディオインターフェースを使うこともできる。
このアプリは、直接フェイスブックに統合されていない。しかしミュージシャンは、フェイスブックやInstagramのプロフィールやページを含む自身のソーシャルメディアアカウントページへのリンクを案内するのにプロフィールを使っていると話す。ただ、Collabで制作する動画はiOSシェアを通じて他の場所にエクスポートできる。つまりInstagram Storiesや、ライバルのTikTokで公開することも可能だ。動画が幅広く配信される場合、エクスポートされたものには誰のものかがわかるように透かしが入る。
Collabのシステムでは将来、さまざまな種類の合成動画が可能になるかもしれない。ダンスやユーモアなどの動画がベータ版でもみられた。しかし差し当たってはフェイスブックは音楽にフォーカスしているとCollabの開発を率いたBrittany Mennuti(ブリタニー・メヌッティ)氏は話す。
大学で芸術とビジネスの両方を学んだメヌッティ氏はアーティストやミュージシャンを含むクリエイティブな人々と作ったで小さなグループをフェイスブックで率いている。
「このプロダクトを構築するためにミュージシャンや音楽愛好家のコミュニティに本当に入り込まなければならないことはわかっていました。そして実行しました。ベータテスターのためにフェイスブックグループをつくり、毎日そのグループ内でコミュニケーションを取りました、とメヌッティ氏は話す。グループではミュージシャンは質問や提案をし、自身の音楽を共有しました。彼らのニーズを理解するのに役立ったことは別として、このグループでの美点は実際互いにコネクトしたことです。一緒に音楽をつくることはなかったかもしれない人々によって本当のコミュニティが生まれました」。
正式展開にともない、Collabでのフェイスブックの目標はショート動画分野においてTikTokのクローン以上のものを提供するニッチな存在になることだ。しかしそれがうまくいったとして、Collabがフェイスブックの大きなプロダクトの1つに統合されるのではなく、どの程度独立してサービスを展開できるのかは今後明らかになる。
Collabは米国のApp Storeでダウンロードできる。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Collab、Facebook、アプリ
画像クレジット:Facebook
[原文へ]
(翻訳:Mizoguchi)