Facebookの匿名アプリは、荒らしやスパマーを撲滅できるか

モグラたたき。匿名コミュニティーにおける、荒らし、いじめ、スパマーとの戦いは、往々にしてそうなる。削除してもすぐに新しいアカウントを作る。その人が誰であるかをFacebookが知っているという事実が ,来たるべき匿名アプリの鍵である理由はそこにある。

他のユーザーに対しては匿名でいられるが、背後にあるFacebookアカウントがならず者を追跡し排除できる。Facebookは、その反対命題の力を得て、匿名性のもつ潜在力を活用することで、人々が心を開き弱さを見せられる場を作ろうとしている。

そもそもFacebookの価値は、あなたが誰であるかを知っていることにあった。MySpaceの長年にわたる疑似匿名性は、オープン性を育くむと共に、誰が何を言っているのかわからないという決定的な不信感を生み出した。実名の使用を要求し、大学のメールアドレスによってそれを認証したFacebookのやり方は、真正アイデンティティー時代の先がけとなった。

これによって、礼儀にかなった議論ができるようになった。人々はそのコメントや振舞いに責任を持つことができる。人は自分の評判がかかっていると、いじめ、荒らし、スパム、性差別、人種差別、同性愛嫌悪、脅迫、等々の破壊的行動に出ることは少ない。その結果、たとえ二極化するような話題でさえ理性的議論可能になる。

やがてFacebookは、埋め込み可能かコメントウィジェットを作り、他のブログやウェブサイトにも、個人認証付きコメント欄を導入した。これは効果を発揮した。TechCrunchでも、Facebookのコメントシステムに切り替えたところ、明らかにゴミが減った。

しかし真正の認証は、礼儀にかなっていても議論を呼ぶような、不人気で自分の名前とはひも付けさたくない意見を抑制する。あるいは、医療、性的、人間関係、宗教などの繊細あるいはごく個人的な話題にも参加しにくい。残念なことに、それこそが、荒らしやヘイトスピーチに影響されやすいタイプの議論なのだ。

つまり匿名性は、脆弱な発言を可能にすると共に議論の崩壊を呼び、一方本物の認証は、セーフガードになると共に心を開いた議論を妨げる。、

Facebookの匿名アプリは、両者のいいとこ取りができる可能性を持っている。New York TimesのMike Isaacは先週、Facebookがハンドル名による議論が可能なアプリを近々公開するらしいと報じた。Facebookで開発チームを率いるプロダクトマネージャー、Josh Millerも、同社がその種のアプリを開発中であることを認め、しかもそれが単なる匿名アプリにはとどまらないと話した。

これは初の試みではないが、恐らく装備は最強だ。例えば、匿名アプリのSecretは、ユーザーを電話番号で認証する。このため、追放されたユーザーは単にアプリを削除、再インストールして新しいアカウントを作るということができない。これは、電話番号をもう一つ取らなければ、という意味であり,金銭的動機付けのあるベテランの荒らしやスパマーにとっては難しいことではない。

ここでFacebookの持つ可能性は膨大だ。なぜなら、誰かが本物であるかをチェックするための、極めて偽装が困難な方法を持っているからだ。それは友達の人数。

Facebookは、長年にわたり、偽プロフィールと偽友達リクエストの排除に努めてきた。その結果、偽アカウントが本物のユーザーである友達を一定人数集めることは、かなり難しくなった。しかも時間がかかる。この手間と時間は悪行を抑止する。

私が想像するFacebookの礼儀正しい匿名議論アプリはこんな感じだ。

ユーザーは既存のFacebookアカウントと、おそらく電話番号を使ってサインアップする。Facebookはそのプロフィールが、一定の正当性、例えば友達15人以上、Facebook登録後数ヵ月以上等の条件を満たしているかどうかをチェックする。アプリの中では、ユーザーは他人に対して完全に匿名あるいはハンドル名で扱われる。Facebookだけが、背後に誰がいるかの秘密を知っている。

もしユーザーが、他のユーザーから迷惑であると通報されると、Facebookはアカウントを停止することができる。そして、再度サインアップするためには別の正当なアカウントが必要になり、それは一夜にして作れるものではない。よって悪党共は締め出される。

もうモグラたたきは起きない。

これは、紙の上ではすばらしいが、一つ大きな問題がある。ユーザーがFacebookを信頼しなければならないことだ。プライバシー設定の度重なる変更、Beacon、危険なデフォルト設定、さらにはFacebookの、ユーザーの保護よりも「世界をもっとオープンでつながったものにする」という認識に対する疑念。

そのすべてがここへ来てFacebookにはね返ってくる。自分の匿名の議論をFacebookアカウントにひも付けすることに、人々は懸念を感じるかもしれない。たとえ誰にも素性はわからないと約束されていても。

この不信感は、Facebookがその匿名アプリで何をする場合にでも、成長の大きな妨げになる。f8カンファレンスで発表した、Secret同様電話番号のみを使用する新匿名ログイン機能を使うかどうかは不明だが、議論を呼ぶ話題や秘密の内容を、Facebook支配下のサービスで話すことに、ユーザーはやはりまだ抵抗を感じるだろう。

Facebookの挑戦は、人々が懐疑心を捨てサインアップする気になるだけの価値を持つアプリを作ることにある。もしできれば、共感を生み理解を共有できる親密な議論の場が作られる。もしできなければ、ことプライバシーに関して、因果は必ず巡ってくることの決定的証拠が得られるだろう。

[Image via PSU]

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

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