Googleが機械知性スタートアップの育成と支援のためにAI Studioを開始

新しい週の幕が開いて、Googleによる、AIのスタートアップをターゲットにした新しいプログラムが発表された。今月の初めには、私たちはGoogleの決算資料上に、そのAI投資ファンドであるGradient Venturesの名を目にしたばかりだ。またその2日後には、Google Cloudマシンラーニングコンテストのファイナリストたちが、トップAI投資家たちに向けてプレゼンを行う様子を見た。そして今日(米国時間7月26日)、GoogleのLaunchpadが、意欲的なAIのスタートアップたちに、事業を離陸させスケールアップするために必要リソースを提供する、新しい実践プログラムStudioを発表した。

狙いはシンプルなものだ。すべてのスタートアップが同じように作られるわけではない。AIのスタートアップたちはデータを必要とし、それを十分に得るために奮闘している。彼らはしばしば、新しいデータが入手できる度に、段階的に市場投入しなければならない。そして通常、高度な技術チームを抱えながらも、製品化の才覚には欠けていることが特徴だ。もうお分かりだろう。

LaunchpadのStudioプログラムは、特化したデータセット、シミュレーションツール、およびプロトタイプ作成支援などの提供を通して、これらのニーズに真正面から取り組もうとしている。Launchpad Studioの別のセールスポイントは、プログラムに採用されたスタートアップたちは、Google社内の、エンジニア、IP専門家、プロダクトスペシャリストなどのリソースにアクセスできるということだ。

「これまでにLaunchpadは世界40カ国で運営されています」と、説明するのはGoogleのアクセラレーター事業のグローバルリーダーであるRoy Geva Glasbergだ。「私たちは世界で、1万を超えるスタートアップと協力し、2000人以上のメンターを訓練しました」。

このメンターベースのコアメンバーは、Studioを支援するためのメンターを募集するためのプールとして機能する。Launchpadの取締役であるBarak Hachamovは、今回のプログラムのための新しいメンターを決定するために、Glasbergと共に世界を巡ってきた。

スタートアップ向けスタジオのアイデア自体は新しいものではない。ここ数年のうちに、何回か試みられてきたものの、最終的にはAndy RubinのPlayground Globalに人材を奪われたようである。Playgroundは、スタートアップに手厚いサービスを提供し、製品のために最高のタレントへのアクセスを可能にし、最大のハイテク企業たちと競争している。

AI Studioに先立ち、Yoshua BengioのElement AIが、同様のプログラムを立ち上げるために、シリーズAで1億200万ドルを調達している。最も有名なAI研究者の1人であるBengioは、GoogleのDeepMindやFacebookのFAIRのようなトップAIグループと対等に付き合うことができるので、最高の機械学習タレントを引き付けることが可能だ。Launchpad StudioにはBengioは参加していないが、Peter Norvig、Dan Ariely、Yossi Matias、そしてChris DiBonaが担当者として参加する。

しかし、ベンチャーキャピタルと組んだ3億ドルの資金を持つPlaygroundや、自己資金を持つElement AIとは異なり、Launchpad Studioには実際に提供する資金はない。あとは資金があれば完璧だとはいうものの、一方では、良いAIスタートアップが、資金を調達できないと嘆くのを私は聞いたことがない。

Launchpad Studioは、Google Developer Launchpadネットワーク上に置かれる。同グループはこれまで、世界規模でアクセラレーターを運営してきた。現在は4回目のスタートアップたちのクラスで、チームは立ち上げの不安を和らげるために、ビジョンを具体化し、Google内の専門家との関係を構築する時間持つことができている。

「LaunchpadはGoogleによるスタートアップのためのグローバルプログラムとして位置づけられています」とGlasberg氏は語る。「これは、Googleが世界各地でスタートアップに手を差し伸べ、能力を与え、訓練を提供し、サポートを行うために持っている、最も拡張性の高いツールです」。

世界中のすべてのリソースを利用する、StudioにおけるGoogleの最大の課題は、ビジョンや実行そのものではない。全てがスムースに進むことを保証するものではないということだ。GVCapital GGradient Ventures、GCP、そしてStudioと、起業家たちは沢山の接点をGoogleとの間に持つことになる。

理論上は、Launchpad StudioはGoogleプログラムの中のスイスである。すなわち収益やGoogle Cloudのポジショニング強化を目指すものではない。しかし、創業者たちの視点からすれば、多少の混乱があることには留意しなければならない。もし理想的な世界なら、私たちはLaunchpadのGlasberg、GradientのAnna Patterson、そしてGCPのSam O’Keefeの志が合わされたものを見ることになるだろう。

Launchpad Studioはサンフランシスコを拠点とし、テルアビブとニューヨークでも事業を展開する。最終的には、トロント、ロンドン、バンガロール、シンガポールでA創業者たちのためのローカルイベントが開催されるだろう。

既にスタジオへの申請は開始されている。もし興味があればここから申し込むことが可能だ。プログラム自体はスタートアップの段階には関係しないので、企業サイズに制限はない。理想的には初期段階と後期段階のスタートアップたちが、機械学習モデルを大規模なユーザーに拡大する際に互いに学ぶことができるだろう。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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