私たちはピッツバーグでの大規模なイベントを終えたばかりだ。来週にはインタビューや発表されたプロフィール、その他の楽しい情報をすべて見直した上で感想をお届けしたい。一方、山のような投資ニュースに押されているせいで、後回しになっている部分もあることをお伝えしておく。そしてPittsburgh Robotics Network(PRN、ピッツバーグ・ロボティクス・ネットワーク)が、私たちのイベントと同じ日に、独自の大規模イベントを開催したことにも注目したいが、実際今週は国の政治家の訪問も含めて、市内では多くの活動が行われていたのだ。
PRNのプレスリリースは以下の通りだ。
本アライアンスには、カーネギーメロン大学、Argo AI(アルゴAI)、Aurora(オーロラ)、ピッツバーグ大学、Kaarta(カールタ)、RE2 Robotics(RE2ロボティクス)、Neya Systems(ネヤ・システムズ)、Carnegie Robotics(カーネギー・ロボティクス)、HEBI Robotics(HEBIロボティクス)、Near Earth Autonomy(ニア・アース・オートノミー)、BirdBrain Technologies(バードブレイン・テクノロジーズ)、Omnicell(オムニセル)、Advanced Construction Robotics(アドバンスト・コンストラクション・ロボティクス)など、ピッツバーグ地域のトップクラスのロボット企業、研究機関、大学のリーダーたちが参加している。Richard King Mellon (リチャード・キング・メロン)財団は、今回の会員数の増加を記念して、PRNの継続的な発展を支援するために12万5000ドル(約1395万円)の助成を行った。
先週私は、資金調達の発表が活発になるだろうと示唆したが、今週は確かにそれが実現した。かつては、夏枯れと呼ばれるような現象が起きていたものだ。それがおそらくはパンデミックのせいなのか、かつてのようなのんびりしたシーズンはいまは起きそうもない。VCたちはロボットに非常に積極的で、カテゴリーを問わず資金を投入し続けている。
しかし、その話を始める前に、Pepper(ペッパー)に対して少々悲しいお別れを告げておこう──少なくとも今は。SoftBank Robotics(ソフトバンク・ロボティクス)の担当者がTechCrunchに語ったところによれば、SoftBank Roboticsは、この愛嬌のある挨拶ロボットの生産を一時停止するとのことだ。ロイターが最初に、フランス国内で330人分の雇用枠を削減することをはじめとする、ソフトバンクのロボット部門の「縮小」を最初に報じた。ソフトバンクはプレスリリースの中で「ソフトバンクの子会社であるSoftBank Robotics Groupは、2012年以降ヒューマノイド(人型)ロボットに投資を続けてきました。PepperならびにNAO(ナオ)ロボット事業はこの先も継続していく意向です」と述べている。
画像クレジット:Aldebaran Robotics(CC-BY-3.0ライセンス)
おさらいしておくと、投資大手のソフトバンクが2021年にフランスのロボット企業Aldebaran Robotics(アルデバラン・ロボティクス)を買収したことで、SoftBank RoboticsとPepperが誕生した。後者は、その分野ではかなり広く普及していた研究用ロボット「Nao(ナオ)」を発展させたものだ。今でも、あちこちの大学や研究機関でこのロボットを目にすることができる。
Pepperは、その基礎となる技術の一部を、より多くの人々に提供しようとしたものだ。このロボットは人間に近い大きさで作られ、タブレットを持って挨拶をするようにデザインされていた。だが正直にいって、それは「それっぽいもの」というだけだった。テクノロジーを適用できる問題を探して、Applebee(アップルビー、米国のファミリーレストラン)での挨拶や、空港での情報提供などを行うことができる洗練されたロボットとして売り込まれた。
なぜPepperがうまくいかなかったのか、そのことに2020年の問題がどれほど影響しているのかについての詳細は後回しにするとして、そもそも私はこのロボットが本当に役に立つのかどうかをいつも疑問に思っていた。これには高度なロボット技術が必要とされるという説得力のある議論を見つけることは、なかなか難しい。もちろん、研究用ロボットの製作に特化しても、せいぜい客寄せのための目玉商品にしかならない、という、はるかに説得力のある議論もある。
画像クレジット:CMR Surgical
とはいえ、ロボット投資にはまだまだ期待が持たれている。そしてSoftBank Roboticsも規模は縮小しているかもしれないが、同社の投資部門は、メッセージボードを手に持っているだけではないロボットに対して、非常に強い関心を持っているようだ。たとえばVision Fund 2(ビジョンファンド2)は、CMR Surgical(CMRサージカル)の6億ドル(約669億6000万円)に及ぶ大規模なシリーズDを主導している。英国を拠点とするこの外科用ロボット企業は、いまやキーホール手術の技術で30億ドル(約3348億円)の評価を受け、ユニコーン3個分の価値となっている。
私がこのカテゴリーで最も魅力的だと思う理由は、高度に専門化した施術の分野を実質的に平準化できるという期待からだ。この技術へのアクセスは、高額な医療を受けることが困難な発展途上国やその他の市場にとって、非常に大きな意味を持つ。
画像クレジット:Soft Robotics
一方Soft Robotics(ソフト・ロボティクス、SoftBank Roboticsに似ているが「bank」が外れている)は、その23億ドル(約2553億円)のシリーズBを1000万ドル(約11億円)拡大する中で、パンデミックによる需要について言及している。すべてがアプトン・シンクレア(米国精肉業界の実態を告発した小説家)の書く世界のようではないものの、食肉加工業界はパンデミックの最中、まったくの地獄のような様相だった(私自身は肉を食べないので、この問題に関する私の個人的な考察は省くことにする)。Soft Roboticsは、損傷しやすい食品を移動させることができる空気圧式のグリッパーを提供しており、ロボットピッキングの分野では以前から注目されていたスタートアップだ。
関連記事:食品加工を柔らかなタッチの「手」でこなすSoft Roboticsがパンデミック関連の需要を見込み新たに約11億円調達
画像クレジット:Traptic
損傷しやすい食品の移動といえば、和たちたちは米国時間7月1日の午前中に、2019年のStartup BattlefieldのファイナリストであるTraptic(トラプティック)が、イチゴ摘みロボットの商業展開を開始したことを独占的に報じた。これは、先に行われた未発表である500万ドル(約5億6000万円)のシリーズAに続くもので、これによってこれまでの資金調達額は840万ドル(約9億4000万円)に達した。他の多くの業界と同様に、パンデミックのためにフィールドワークは大規模な人員不足に陥った。
関連記事:イチゴを傷つけずに収穫するロボットのTrapticが商業展開を開始
画像クレジット:Toggle
飲み物をミックスするロボットキオスクのBotristaは、今週シリーズAを発表した。同社は、最大8種類の材料を約20秒で混ぜることができるこのシステムをさらに改良するために、1000万ドル(約11億1000万円)を調達した。一方、ニューヨークを拠点とする建設用ロボット企業ToggleはシリーズAで800万ドル(約8億9000万円)を調達した。
画像クレジット:TechCrunch
退屈さを感じている暇はなかった。水曜日(米国時間6月30日)の大きなまとめを、木曜日に向けて書くおもしろさを味わえたからだ。だが時には、朝に大きなニュースがやってくることもある(ロボット関連のスタートアップ企業のみなさん、勝手なお願いだが、木曜日に大きなニュースを発表するのは控えていただけると個人的には大変助かる。ご協力に対してあらかじめお礼を述べておこう)。たとえばZebra(ゼブラ)がFetch(フェッチ)を2億9千万ドル(約323億1000万円)で買収する意向を示したといったニュースだ。この件については、もう少し考えをまとめて、別記事で紹介するが、とりあえず、FetchのCEOであるMelonee Wise(メロニー・ワイズ)氏の言葉を紹介しておきたい。
Fetchチームは、Zebraに参加してAMR(自律走行搬送ロボット)と当社のクラウドベースのロボティクスプラットフォームを通じて、柔軟な自動化の導入を加速させることに、期待を膨らませています。私たちは、適切なチームと適切な技術を合わせて、お客様の真の問題を解決できるエンド・ツー・エンドのソリューションを提供します。お客様がフルフィルメント、流通、製造のオペレーションを動的に最適化し、総合的に協調させることを支援することを通して、需要の増加に先んじて、配送時間を短縮し、労働力の減少に対応することを可能とします。
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画像クレジット:TechCrunch
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(文:Brian Heater、翻訳:sako)