新規上場初日のSnapの株価は売り出し予定価格を40%以上上回って取引が開始された。 ニューヨーク証券取引所(NYSE)の初値は1株当たり24ドルだった。
ここしばらく投資家の期待と焦燥を一身に集めたSnapだったが、今朝の値動きは投資家がいかにSnapの将来に期待しているかを明らかにしただけでなく、ウォールストリートにとっても新規上場の理想的な前例となった。今年はテクノロジー企業の上場の動きが加速しそうだ。Snapにとっては、新規上場で株価が急騰したことはそれ自体で良いことであるだけなく、投資家全員を満足させる結果となった。
昨日、Snapの売り出し価格は17ドル、時価総額240億ドルが予想されていた。17ドルという株価自体、2月にSnap(とウォールストリートの証券会社)が設定した売出し予定価格の上限を上回っていた。Snapは上場によって34億ドルの資金を調達することに成功した。Snapの急成長は同時にコストのアップをもたらしているいるが、この収入は十分にそれをまかなえるだろう。
24ドルをつけた後、株価は一時25ドル以上に上げたが、その後はほぼ安定している。現在の株価による時価総額は300億ドル以上となっている。ちなみにTwitterの時価総額は110億ドルだ。
ここまでのSnapの上場が成功だったことは疑いないが、今後に向かっては複雑な問題を抱えている。複数のレポートはSnapの上場に予定価格を上回る大量の市場資金が流れこんでいることを指摘している。Snapは今後もさらに株式発行によって資金を調達できるだろうが、そのつど今朝のような取引価格のアップを必要とする。上場が成功しているイメージを維持すると同時に投資家にも利益を確保できなければならない。
もちろん24ドルという初値はSnapがかなりの金額を取り逃がしたということでもある。2億株の売り出し価格と取引価格の差は10億ドル以上にもなる。そうであってもSnapの上場は大成功という印象を与えたことは確かだ。
しかしSnapの上場はいろいろな面でかなり異例だ。投資家が購入した株式には議決権が付属していない。つまり投資家はSnapが今後さらに巨大な企業に成長するだろうという期待を買ったことになる。CEOのEvan SpiegelとSnapのチームが長期的にもSnapの運営に成功するだろうという期待だ。共同ファウンダーのSpiegelとBobby Murphyはほぼ完全にSnapの議決権を握っている。つまり2人はSnapの経営にあたってウォールストリートの顔色をうかがう必要はない。しかし株価が好調であれば社員の士気にも新たな人材の獲得にも有利に働くことは言うまでもない。
新規上場による資金調達は資金繰りの健全化と同時に企業買収その他の大型の経営イベントに対する手当でもある。Snapは運営に数億ドルを必要としている。今後5年間で総額でAmazonには10億ドル、Googleに20億ドルを支払う必要がある。Snapは企業買収にも非常に積極的だ。こうしたことからも資金需要はきわめて高い。
将来に向けて残る疑問は、SnapはFacebookがこれまで実現してきたような健全な成長を続けられるだろうかというものだ。Twitterの株価は頭打ちで先行きは不透明だ。Snapのユーザー数の成長は失速し始めている。逆に広告ビジネスは急成長中だ。Facebookのライバルの地位をウォールストリートに認めさせるためには今後いくつかのハードルを越える必要があるだろう。
Snapは上場企業となった。つまりこれまでよりはるかに透明性の高い環境でライバルと広告ビジネスの競争をしなければならいということでもある。Snapは有望なスタートアップとして企業の広告予算のうち「先物買い」の部分を集めることに成功した。しかし今後は広告予算のメインの部分を安定して占めるようになる必要がある。それにはFacebookが提供できないような機能がこれであるとはっきりさせねばならない。ともあれウォールストリートはユーザー数の頭打ちや経営権の偏りといった懸念には目をつぶり将来性に賭けたようだ。
〔日本版〕Snapの値動きはこちらでリアルタイムで表示されている。高値は26ドル、日本時間で午前6時は25ドルちょうど。The Wall Street Journalの記事によればエヴァン・スピーゲルの婚約者でスーパーモデルのミランダ・カーがNYSEでセルフィーを撮影している。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)