月間アクティブユーザー12億人を越えるFacebook。そこでの開かれたコミュニケーションと逆行する形で、10代の若者を中心に、クローズド、匿名といった特徴を持ったサービスが登場し、注目を集めている。
送信したメッセージや画像が数秒で消えるメッセンジャーアプリの「Snapchat」、匿名で画像とつぶやきを投稿できる「Whisper」、FoursquareやInstagramのチェックイン情報をもとに、知り合いと出会わないようアラートを出す「Cloak」など、そのアプローチもさまざまだ。
日本でも同様の傾向があるのか、Whisperライクなサービス「Pictory(ピクトリー)」が賑わいを見せはじめているという。PictoryはAndroidアプリとPCで利用できるサービスで、カクテルが1月に公開した。ユーザーが持つ画像を加工してアップロードし、テキストを入れた作品として匿名で投稿、共有できる。投稿した作品にはお気に入りに入れたり、匿名でコメントをつけたりできる。ノンプロモーションながら月間の投稿数は1万4000件、月間200万ページビュー(PV)まで成長しているという。
特徴的なのはアクティブユーザー1人あたりの投稿数だ。アクティブユーザーの実数は答えてもらえなかったが、3月のアクティブユーザ1人あたりの平均作品投稿数は1日0.45件と、2人に1人が1日1回投稿をしているという状況だという。メインユーザーは10代の学生。そのため、下校時間となる夕方から深夜にかけてトラフィックが集中する傾向があるという。
「自撮り」でも炎上しない仕組み作り
僕が投稿された画像を見て気づいたのは、「Selfie」、いわゆる「自撮り」画像の多さだ。多くのユーザーが自分の写真や友人、カップルでの写真にテキストをつけてアップしているのだ。そしてそこには独り言やポエムから、自分のメイクが可愛いか、ファッションがおしゃれかといった質問など、さまざまなメッセージが添えられている。
自撮りが多いと気になるのは、それらに対する罵詈雑言のコメントだ。Pictoryでは——悪質なユーザーに対策がなされる可能性もあるとして詳細な方法は聞けなかったが——クラウドソーシングを使った人力での監視やテクノロジーを組み合わせることで、「自撮り画像をアップしても『危険』と言われない、居心地のいい場所を作っており、変な方向に荒れたりしないようにしている」(カクテル取締役CTOの天野仁史氏)とのことだ。公序良俗に反する画像、コメントも削除しているそうだ。
インキュベイトファンドのほか、メルカリ山田氏やモイ赤松氏が出資
カクテルは2012年の設立。インキュベイトファンドのほか、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏やモイ代表取締役の赤松洋介氏が出資をしている。
同社ではこれまでTwitterやFacebookとは異なるソーシャルグラフの構築を目指してサービスを開発してきたという。それは実名制でもなく、決まったタイムラインがあるわけでもない、かといって「出会い系」にもならないもの——現在代表取締役を務める水波桂氏はこう語る。
今後はダイレクトメッセージ機能をはじめとしたコミュニケーション機能を強化する。「『匿名かつ居心地のいいところ』ができないかを考えている。友達やつながりを持てて、でもその関係をリセットできたりというもの」(天野氏)
そのほか、画像の検索機能やiPhoneアプリの提供などを予定する。ただしiPhoneアプリに関しては、「開発サイクルの早いAndroidアプリで機能が一通りそろった時点で提供していきたい」(天野氏)